第15話 海で溺れたんだけどどうしよう
「うおおすげええ!!!」
「素晴らしい景色だね…!」
「…海、きれい。」
「これは…すごいな…。」
生野、シャルル、雪乃、僕の順で、窓の外の景色への感想をあげた。現在僕たちは、夏川家の
座席は電車のような
昨日は、僕の参加が決まったあと、四人のライングループを作ってから三人を帰した。夏川さんが来てから明らかに
最後に海に行ったのは、
とりあえず今日だけは、友人と海に行く、というイベントを純粋に楽しみたいと思う。
…家の前にリムジンが停まっているのは非常に目立つのでもう勘弁だが。
「黒崎様。到着
先程までこの車を運転してくださっていた
なんにせよ、人の車でだらしなく寝てしまったのは素直に反省である。
「す、すみません! すぐ降りますね。」
「いえいえ、いってらっしゃいませ。」
車を降りてすぐに見えたのは、絶景。昨日まで台風がすぐそこに来ていたなんて信じられないくらいの青空。穏やかで美しい波。ゴミひとつない真白の砂浜。合法とはいえ学校を休んでこういう場所に来るというのは、なんかこうゾクゾクする。これが
少しずつ
「おお、マサト! おはよう!」
「ん、起きたのか。おはよ。」
更衣室には、高身長イケメンが二人。既に着替え終わっているようで、二人とも海パン姿である。生野もシャルルも、結構
「あ、そうだ。これ見ろよ。」
そう言ってスマホを取り出す生野。
「ん? なんだよ。」
「はい、これ。」
生野が僕に向けたスマホ画面に映っていたのは、僕だ。
…それも、車内で眠りこけ、夏川さんの肩に頭を置いている、僕だ。
目を
「ええええええええええええええええ」
「気持ちよさそうに寝てたからつい撮っちゃった。」
「消せえええ!!」
「大丈夫、拡散はしないから。」
「そういうことじゃねえよ!」
スマホを取り上げようとするが、身長が身長なので手が届かず、失敗。
「…夏川さん、なんて言ってた?」
僕が問うと、生野は数秒ほど間を空け、満面の笑みで答えた。
「さあ?」
「お前なあ…。」
ぶん殴りたいという気持ちをどうにか抑えつつ、それ以上の追求はしないことにした。追求しないのは、もし夏川さんが不快な思いをしてそれを口に出していたのなら、それを生野が言えるはずがないからである。
何にせよ、とにかく恥ずかしいし夏川さんに申し訳ないので、
「ほら二人とも、馬鹿なことやってないで早く行くよ。マサト、早く服を脱いで!」
シャルルが僕らを急かすが、なんか台詞の最後だけ妙に元気だった気がする。
若干の恐怖を感じた気がするが、二人を待たせているのは事実。ひとまず着ていたティーシャツを脱いだ。
「マサト…。キミもなかなかいい身体をしているじゃないか…!」
鳥肌が十センチメートルほど立ったような気がした。僕の目の前にいるのはもはや高身長フランス人イケメンなんかではない。不適切な表現にあたるかもしれないが、
危険を察知した僕の
「ほら二人とも、馬鹿なことやってないで早く行くぞ。」
「すまない…。ユウマ…。」
「お、おう。」
生野に助けられ、僕は急いで着替えを済ませた。もちろん、シャルルには先に更衣室を出てもらった。
着替えを済ませて三人で海に向かっていると、後ろから声が聞こえた。
「おーい!」
「お、おーい。」
夏川さんと雪乃の声だ。
だんだんと声が近づいているので、走ってきているのだと推測。
そうだ、夏川さんの水着はどんなものなのだろうか。見たいような見てはいけないような、なんともいえない感覚に一瞬迷ったのだが、僕は二人に声をかけ返そうと後ろを振り向いた。
「きゃあっ!」
一瞬迷ったのが
「「うわああああああああ!!!」」
僕にぶつかり、そのまま倒れ込んだ。
ズザー、という音と共に砂浜に倒れ込んだ僕は、
…夏川さんのおっぱいの下敷きとなり、それに
「「うわああああああああ!!!」」
その時の記憶はほとんど無いが、おそらく生野は爆笑していたと思う。
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