第9話 担任がアホすぎるんだけどどうしよう
「おはよっ、
「お、おう、おはよう。」
教室に入った僕に一番最初に
ちなみに昨日は、妹・雪乃の要望、
それにしても…。
「夏川さん、何かあった?」
いや、この質問の仕方はおかしいな。昨日あんだけいろいろあった人間にこの質問は少し配慮が足りなかった気がする。
まあいろいろあったのは夏川さんが悪いんだけどね。
「え、べ、別になんもねーよ!」
心なしか、夏川さんの笑顔が少し
「つーかそんなことよりさあ、呼び方!」
「呼び方?」
「ほら、『夏川さん』ってなんか、
「ええ、別にいいでしょ。」
何かを隠したのか、
「ちょっとさ、『
「え、嫌だ。」
「はー? 冷たくない?」
「別に?」
昨日あれだけのことをしてきたやつを急に名前呼びなんてできるかよ。
帰る時こそちょっと優しくしてしまったけど、それはそれ。別に夏川さんとこれ以上の仲になるつもりは全くない。
…全く、ってわけじゃないけど。
「お願い! 一回だけでいいから呼んでよー。」
上目遣いで甘えの体制に入りやがった。なんてあざとい奴だ。
…しかしその表情があまりに
「…唯菜。」
僕ってこんなに押しに弱かったっけ。そんなことを思いながら、
すると夏川さんは一瞬驚いたような顔をして、すぐにまた笑顔になった。何に驚いたのだろうか、やはり先ほどから様子がおかしい気がする。
今だってほら、顔を赤くして…。ってこれは名前を呼ばれたからか。
「えへへ、いいねそれ。これからもそう呼んでくれていーよ?」
「遠慮しとく。」
「なんでだよお。」
だんだんとこいつの扱い方がわかってきた気がする。僕が昨日されたようなああいうのを除けば、こいつは単なる可愛…。じゃなくて、いじりやすいギャルだ。
『ちょいちょい黒崎、周り周り!』
不意に、こそこそと声が聞こえた。
この聞き慣れた声、生野だ。
僕は聞こえた通り、周りを見渡した。
うん、どこを向いても、刺すような視線がこちらに向けられているのが分かる。忘れていた、昨日僕が教室に居たくなかった理由の一つはこれだった。
夏休み前までは僕の名前すら知らない人がゴロゴロいたのに、夏川さんがきたことによりすっかり名前を覚えられてしまったようで。
ちらほらと僕の名前に
僕が怯えていると、突然、教室のドアが開いた。
ガラガラガラ…
「
ナイス山下先生…!
すぐに全員が着席した。
———「あ、昨日の帰りのHRで言いかけてたあれ、思い出したわ。」
ああ、なんか言いかけてたな。まあ忘れるくらいのことだし大したことではないんだろうけど。
あれ、僕、今フラグ立てた…?
「今日、またこのクラスに転校生が入る。ああめんどくせえ。」
…は?
数秒が経過したが、恐らく皆も同じタイミングで先生の言葉を理解し終えたのだろう。
なんで同時に二人も。しかもそれが何故同じクラスに。つか何故昨日来なかった。
そういった様々な疑問を、皆、一言にまとめてぶちまけた。
「「「「「「「ええええええ!?!?」」」」」」」
昨日から皆さんハモりすぎじゃないですかね。生野も成田も榊原もその他の皆も、全員馬鹿みたいな顔をして驚いている。僕も含め。
つか、夏川さんも驚いてるし。聞かされてなかったのかよ。
いや、先生も先生でなんで言ってないんだよ。どんだけアホなんだよ。
そもそも、そんな重要なことを忘れるなんてやっぱりうちの担任はアホだ。うん間違いない。
そのアホが、またけだるそうに口を開いた。
「ああ、ちなみに男な。フランス人のイケメンさんだ。」
それを聞くやいなや、夏川さんを除く
これはチャンスなのではないだろうか。
現在この教室は、夏川さんへの
しかし、謎の転校生の登場により、間違いなく話題は一気にそちらに
控えめに言って完璧だ。会う前からもうその転校生大好きだわ。ありがとう。
「んじゃ、入って自己紹介でもしな。」
『はーい。』
いや、外にいたのかよ。
入ってきて最初に目についたのは、かなり高い位置に見えた綺麗な赤髪だった。
『こんにちは、
…彼はだいたいこんなことを言ったが、あまり覚えてはいない。
と、いうのも、驚きでよく耳に入って来なかったからだ。
何も、フランス人なのに日本語がペラペラであることに驚いたわけではない。
百八十センチメートルはあるであろう高い背丈に驚いたわけでもない。
もちろん、名前が
単純に、彼がイケメンすぎたのだ。
なんで芸能界にいないんだってレベルで。
女子という女子がため息をつきながら目をハートにしているのが見える。無理もない、だって男である僕ですら、一瞬
『ええっと…?』
困ったような表情と仕草で全体を見渡すシャルル君。いや、シャルルさん。
いちいち絵になるなこの男は。
「あ、席はあそこ使え。机出しといたから。」
先生が
僕と夏川さんは目を見合わせて言った。
「「マジか。」」
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