第8話 ちょいシリアス入るんだけどどうしよう
「おかえり、お兄ちゃん。」
「うん、ただいま、
結局、あの『また明日ね、夏川さん。』の後、急に恥ずかしくなって学校を飛び出してしまったので、
しかし、家に入る前に玄関前で大きく深呼吸を行ったため、家族とは落ち着いて会話ができるはずだ。
…とは言っても、今の僕にとって、家族という存在にあたる人物は、
雪乃は、現在中学二年生の僕の妹であり、同時に、たった一人の僕の家族である。
母は雪乃を産んですぐに病気で亡くなったらしい。というのも、母が亡くなった当時僕は三つか四つの歳だったので、彼女の名前が『
そして、父『
僕と妹を産んでくれた両親にはもちろん感謝はしているのだが、同時に、少し
父が死に、僕ら
いや、それが
僕らは二人で生きる。そう、決めた。
しかし、法律上それはどうしても問題があるというので、仕方なく、父の
とはいっても、掃除、洗濯、料理、そういった家事は兄妹二人でも難なく
「あ、お兄ちゃん、お昼ありがと。」
「えっ、あー、どういたしまして。」
しばらく考え事をしていたため、唐突に妹が口を開いたことに少々驚いてしまった。
妹は今日、僕と違って普通に始業式が行われたため、給食を食べずに帰ってきた。僕はそれを知っていたので、自分の弁当を作るついでに妹の
自分より妹のために親を
「ねえ、お兄ちゃん?」
「どうした?」
「…何かあった?」
「え、な、なんもないぞ。」
僕のシスコンも
中学二年生にもなる思春期
そんな彼女にとっては、僕の感情の変化を読み取ることなど
彼女が気付いた僕の感情の変化というものの原因は、間違いなく夏川さんだ。今日の疲れが顔にでも出ていたのだろうか。
こうなったらきっと問い詰められまくって、結局白状する
「えーっとね。」
「うん?」
「告白された。」
「…え?」
「つか、プロポーズされた。」
「…は?」
大切な妹が完全にフリーズした。無理もない。僕もそんな感じの反応したもん。
アイス片手に
「…アイス溶けるぞ?」
「…あぅ、おっと。」
「えっと…。食べ終わってから話すか?」
「…ん。そうする。」
そうだ、僕もアイスを食べよう。そして頭を冷やそう。物理的に。
妹と一緒にソファに座り、冷凍庫から取り出したばかりのチョコレートアイスに口をつけた。
———
「で? どういうこと? お兄ちゃん。」
アイスを食べ終わった後、なぜか僕はソファの下に正座をさせられた。妹が威圧感たっぷりに足と腕を組んで座っているその正面に。
「えっとな、今日転校生が来たんだよ。」
「うん。」
「女の子のな?」
「うん。」
「んで、その子が僕に抱きついてきて、」
「う、うん?」
「プロポーズされた。」
「…は?」
この反応、さっきも見たな。
とにかくこんな感じで、妹に、今日一日の出来事をかくかくしかじかと説明した。
「…って、感じだ。」
「はぁ…。分かった、とりあえずそのクソビッチは雪乃が必ず殺す。」
「おいちょっと待て。」
兄として、シスコンとして。妹に好いてもらえるのは
「お兄ちゃんは雪乃のもの…。そして雪乃はお兄ちゃんのもの…。」
この独り言は、聞かなかったことにしようと思う。
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