第7話 生野が壊れ始めてるんだけどどうしよう
「あれ、あのクソビッ…。じゃなかった、夏川さんは?」
ノックアウトしていた生野が正気を取り戻し、周りをキョロキョロと
「夏川さんなら、さっき職員室に呼び出されてもう行ったぞ。」
「ふっざまあ。」
これはあれだな。生野も夏川さんを
しかし理由が分からん。さっきの『ちょっと黙っててくんね?』が
うん、考えるのはやめよう。嫌な予感しかしない。
目の前に置かれた自分の弁当をなんとなく食べる気になれなかったので、弁当の
「ん、食わねえの?」
「うん、なんか未来のことを考えると
「ははっ、まあしゃーないわな。でもほら、今日は四時間授業だからもう帰れるぜ?」
「あ、そっか。」
そうだった。今日は四時間授業だ。昼休み終了直前に教室に入り、HRが終わり次第、音速で教室を出ればいいだけ。夏川さんはガン無視。もちろん
「今日はどうするよ、カラオケでも行っとく?」
「やめとくわ。」
「ですよねえ。」
そんな雑談を交わしながら、隣の残念イケメンが弁当を食べ終わるのをしばらく待った。
「ごちそうさまでした。」
近頃の若者の中には、親の前ですら『いただきます』『ごちそうさま』の一言が言えない者が多くいるという。そんな中で、彼は
「んじゃ、そろそろ戻るか。」
「そうだな、行こうぜ。」
時刻は一時三十五分。あと五分で昼休みが終了する。
僕の
実に兄想いな妹、そして妹想いの兄である。うちの
———
キ ー ン コ ー ン カ ー ン コ ー ン
先程の
「えー。…あれ、なんて言おうとしたっけ。んー。もういいや、めんどくせえし。帰っていいぞお前ら、じゃ、解散。」
「「「「「「「おいこら」」」」」」」
今回ばかりはさすがに僕もツッコミに参加させてもらった。校長は何故こいつを担任にしやがったんだ。
「うるせえよ。まあ思い出したら話すわ。だりい、早く帰れ。」
こんなやつが成人して働いて立派にお金をもらえてるのだから恐ろしい。案外、僕の未来よりも日本の未来の方が先は短いのかもしれない。割とマジで。
まあいいや帰ろう、もうどうだっていいや。
「きりーつ、れーい。」
「「「「「「「ありがとうございましたー」」」」」」」
委員長の
『まって。』
さすがにこの状況では無視することなどできない。
ので、できるだけ
「なに?」
我ながらこれは少し冷たすぎたかもしれない。
「え、いや、その…」
ほら、
「なんだよ。」
だめだ、僕だったらこんなの泣いてる。
「その…。また、明日ね。」
『明日(ね)』なのか、『明日(な)』なのか、それすらよく聞き取れないほどか細くなった彼女の声に、やはりさっきのは冷たすぎたと内心後悔した。
それでも、
正直、彼女の言葉への返答はすごく迷った。時間にしてみればたった三秒ほどだが、その短い間に
それなのに、口をついて出たのは。いや、出てしまったのは。
『うん、また明日ね、夏川さん。』
あまりにも
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