the.first action①
悠弥を始めとした十一人が部隊を結成してからの七日間、ティアラは勿論、他の者達にも一切の連絡は無かった。
そして八日目の早朝、悠弥は二人を配下を連れて城へと向かった。
王女が待つ部屋へ入ると、そこにはゲイル宰相にエリス秘書官、それにヴィゼル総司令官もいた。
悠弥が片膝を折り頭を下げると他の二人もそれに倣った。
「全く、八日間も顔を見せないなんて・・・・・・。どこかで野垂れ死んだかと思ったわよ」
毒気をたっぷりと含んだ言葉を悠弥に向けて吐く。
だが、悠弥はそんなものは全く気にしない。
「王女は勿論、他の方々に本日は報告があって参りました。先日、ゲイル宰相とヴィゼル総司令官に人選した者達十名と部隊を結成しました」
「部隊?」
王女が聞き返す。
「はい。ただ普通の部隊ではなく、我々は裏側での活動を主とする部隊であります」
「ユーヤ殿。それは非合法的に動く、と考えて宜しいのか?」
「宰相殿の言われる通りです。我々の目的はただ一つ。争いを収め、この国に王女を据える事。その為には表からではなく裏側からも仕掛ける必要があります」
宰相と秘書官、それに総司令官は静かに、しかし力強く頷いた。
悠弥が何の為に『裏側』という言葉を口にしたのか。その真意を汲んだからである。それは、もちろんティアラも理解出来た。
自分の為に汚れた仕事を全て引き受けると宣言してきた事を。
だが、ティアラも、はいそうですか、と簡単に言える性格ではなかった。
自分の為に誰かが犠牲になるのは、我慢出来ない性格である。
王女が何かを口にする前に悠弥が口を開いた。
「王女。貴方はこの国を治める事だけを考えなさい。人間にはそれぞれ生まれ持った役割がある。貴方は上に立ち、国の事だけを考えるのです。そして表向きの政は宰相を始めとするここのお三方がまとめ、貴方が判断する。そして裏の政は俺が仕切る。勿論、王女。貴方の考えに背くような真似は一切しない。我らは貴方の考えに賛同できない者や、反逆を考える者、それらを討つのが仕事だ」
アンタはアンタの仕事をやれ。
それ以外は俺らが引き受ける。
暗にそう言われている気がした。
王女は大きく息を吐くと、悠弥は勿論、他の三人の顔を見た。
「全く。私は良い家臣に恵まれたものね」
「おっしゃる通りですわ、姫様。我々は皆、姫様の事を第一に考えて動いております。どうかそこをお汲み下さいませ」
エリスがニコリと微笑みながら言った。
「分かったわよ。それでユーヤ。他にも何かあるんでしょう?」
「ご推察通り。先にも言いましたが、我らは裏側で行動いたします。その行動の中で、どうしても命を奪わないといけない事もあるでしょう。その時の為に王女、貴方には我らの行動の自由を与えて頂きたい」
「構わないわよ」
「有難う御座います」
王女の為ならば人殺しも構わない。そういう意味合いが含まれていた。
悠弥は左後ろに控えていた者を振り返った。
その者は静かに前に進み出て、宰相に封筒を手渡した。
「これは?」
「我ら十一人の血判付きの誓約書です」
王女に逆らわず、ただ命令通りに遂行する。
「預かるわ」
ティアラは封筒を膝の上に置いた。
「それと、これからの連絡方法ですが、フィリス、オルガ」
「はっ」
後方に控えていた二人がフードを脱ぎ顔を出した。
フィリスは元、宰相府の補佐官をしていた女性であり、オルガは魔装騎兵隊三番隊の次官だった男性である。
「この二人をこれから先の連絡報告係にいたします」
「フィリスです」
「オルガです。宜しくお願いします」
「えぇ。二人とも宜しくね」
「はっ!!」
王女の言葉に返事をすると、再びフードをかぶる。
「では、王女、お三方。我らはこれから行動を開始します。早くて半年でこの争いを終わらせてみせます」
言って悠弥は立ち上がると部屋をあとにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます