第51話 自宅へのメール

夕方近くになり、沙也は帰ってゆきました。パスタを食べなかったので、夕食として食べていかないかと誘いましたが、主人が帰ってくるので、との事でした。


終電ぎりぎりの時間までであったとしても話は尽きなかったと思います。まだ早い時間に沙也が帰ってしまうのは残念でしたが、もちろん引き留めたりなどしませんでした。


口を割らされたような形ではありましたが、自分の近況も聞いてもらえてすっきりしました。感心してはいなかったのでしょうが、彼女から責められもしなかったことに安堵しました。少々の事ならば面白がったり茶化したり、一般的な人々とはややずれた視点で受け止めてもらえるのも気楽でした。


沙也が帰った後、急に須藤のことを思い出しました。先ほど携帯に来たメールを読み返しました。もしかすると彼は、パソコンのアドレスへ返事が来るのを待っているかも知れないと思い当たりました。


急に、申し訳ないような気持ちになり、彼の自宅のアドレスへ返事を打ちました。

当たり障りのないことを携帯に打ち込みました。ですが、彼からもらったメールが長文だったので、自分の返信が短いとなんだか悪いような気がしました。


少し考えてノートパソコンを立ち上げました。

もう少し、丁寧な返事を送ろうと思いました。携帯で文字を打つのがもどかしくて、私も自宅のパソコンから返事を打つことにしました。


週末どのように過ごしたとか、運転の練習についてのお礼や、レストランでの時間が素晴らしかったことについて、丁寧にお礼を伝えたく思いました。


アクセサリーのプレゼントをもらって嬉しく思ったことや、感謝を伝えましたが、彼の家族に申し訳ないので今後は散財しないで欲しいと書きました。


これまでのことについて、感謝の気持ちを素直に伝えたいと思っていました。


パソコンで彼にメールを打ったのはこの時が初めてでした。手紙を書いているようで照れ臭い気もしましたが、携帯よりもずっと楽でした。


私が須藤に返信した後、また彼からメールが届きました。

重いことはなく、私の返信に対する返事や彼が週末どのように過ごしたかなど、軽いおしゃべりのような内容でした。


私はまた返信をしました。パソコンで彼と話すのは他愛なく、心地よい気がしました。携帯でメールを打つのは苦手でしたが、パソコンでのメールは苦になりませんでした。


その日、私達は何度かやりとりをしました。

あれほど憎み、いとわしかった人が、この頃はもう平気になっていました。

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