第49話 休日のメール

沙也の前で須藤からのメールを見たものか一瞬迷いましたが、そのままメールを開きました。おそらく長めの文章だと思いました。


ユリちゃん、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか?昨日、ユリちゃんと過ごせた時間はとても楽しかったです。ユリちゃんに運転を教えることや、食事に出かけたりすることはいつも特別な時間でした。ですが私はいつの間にか、欲張りになっていたような気がします。


その後の電話で、私は余計なことを言ってしまいました。ユリちゃんが私の家庭を気遣ってくれているのはとても嬉しかったのに、思わず自分の気持ちを伝えてしまいました。


昨日言ったことは私の正直な気持ちです。私はユリちゃんを愛しています。でもユリちゃんを困らせたくはありません。


見返りは期待せずにいるつもりです。ユリちゃんが私の気持ちに応えてくれなかったとしても、ユリちゃんを正社員として私の部署に迎えることにはなんの変更もありません。お互い同じ部署の仲間として、信頼関係を築きながら仕事ができたらと願っています。


ユリちゃんが、私の携帯に連絡することに気兼ねがある場合は、自宅のパソコンのメールアドレスに連絡を下さい。私以外に見る人はいませんし、セキュリティをかけておきます。何かありましたら、連絡お待ちしています。


いつもユリちゃんのことを想っています。良い日曜日をお過ごし下さい。


須藤 裕司



正確に再現することはできませんが、大体このような内容だったと思います。ごく丁寧な文章で、いじらしくも感じられました。最後に彼の自宅のメールアドレスが書かれていました。


読み終えた私は携帯を置きました。沙也の方を見ると、彼女は私を見つめていました。なぜか目を逸らしてしまいました。


「大丈夫?急ぎの用事とかじゃなかった?」

沙也はうかがうように言いました。


「うん。大丈夫。」

私は短く答えました。その後の言葉がすぐ出ませんでした。


「なんか、浮かない顔してるけど・・・誰なの?迷惑メールとか、つきまといとか、じゃなくて?」


怪訝そうな表情でした。沙也に無用な心配をかけたくはありませんでした。


「うーん。そんなこともないんだけど。」

そう返事をしながら、詳しい内容を知らせることもできず、私は曖昧に答えました。


「そう言えば、例の部長って人はどうなったの?その人ではないの?」

私は思わず驚いた顔をしてしまったと思います。沙也の鋭さに焦ったところを彼女は見逃しませんでした。


「やっぱり、その部長からメールが来たの?休日なのに?」

やや呆れた風に、でも少し面白がるように沙也は言いました。


「うん・・・でもまあ、当たりさわりない話だし。」

私は極力何事もなかった風に嘘をつきました。


「ちょっと、どんな事書いてるの?それ、見せて。」

沙也は強い口調で言うと、手を差し出しました。


「えっ、ダメだよ。それはちょっと・・・」

私は慌ててもごもごと呟き、携帯をバッグに戻しました。


「えっ、見せられないような内容なの?どういう事?お姉さんにちゃんと言って!」


沙也はいよいよ好奇心に満ちた眼差しを向けました。明らかに彼女は面白がっていました。

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