第7話 メール

帰宅後も私はふさぎ込んでいました。いくら考えてもわかりませんでした。

須藤のことを親切で、何かと気にかけてくれる優しい人だと信頼していたのに。

なぜ彼はあのように豹変してしまったのか。あれほど恥ずかしく、耐え難い時間を強いられなければならなかったのか。


あの時間は、おぞましい暴力でした。殺されるのかもしれないと思ったし、いっそ殺してくれたら、とあの時は思いました。あの人は、私にしたような事を今まで他の何人にもしているかもしれず、そんな人がのうのうと生きているのも許しがたいことでした。


どの時点で、彼があんな風になってしまったのか、わかりませんでした。私の彼への接し方が間違っていたのか。二人きりで食事したことも、誰もいない会社へ戻ってしまったことも。自分の浅はかさや愚かさが責められて仕方ありませんでした。


翌日も会社を休みました。行けば須藤に会わなければなりません。隣の部署なので席も近いのです。またあのオフィスで彼と顔を合わせることを思うと身震いがしました。


なんとか彼を殺すことはできないものかと本気で考えました。あの人が死ねばいい。なぜ自分が彼のために、外出するのも恐れたり、男性を怖いと思ったり、せっかく雇ってくれた職場へ行けなくなるような目に遭わなければならないのか、怒りでいっぱいでした。


私が会社へ行けないなんて間違っている。あの人が来なくなるべきだと思いました。翌日こそは堂々と出社しようと心に決めましたが、朝になるとその気持ちはくじけていました。結局その日も休みたいとの電話をかけてしまいました。これではいけないと思いつつ、会社へ行くことができませんでした。


悔しくてたまりませんでした。このままで良いわけはありません。既に3日、体調不良の名目で休んでいました。悔しい。こんな状況に追い込まれて良いはずがない。なぜ私がこんな思いをさせられなければならないのか、理不尽な思いでいっぱいでした。


そして私はある行動にでました。須藤の携帯にメールを送りました。時おり会社帰りに飲みに行く仲間の連絡先は、互いに交換していました。私が彼に連絡するなんて馬鹿げている。それどころか狂っている。でも私はそれをしなければなりませんでした。


起きたことは起きたことと受け止めて、彼がどのような態度を取るのか。私にあんな仕打ちをしたことも、私の取ったどんな行動が良くなかったのか。怖くてたまらないものの、学べることがあるならば、きちんと学んで向き合わなくてはならないと思ったのです。


あの日の出来事について、どのように感じているのか彼に問いかけました。なぜあんな事が起きてしまったかわからない。私のどのような行動があの結果を招くことになったのか、教えて欲しいと伝えました。


彼にメールを送るのはとても怖いことでした。あの人は私の愚かさを、間抜けさをあざ笑い、騙される方が悪いのだと馬鹿にしているかもしれない。私をさらに傷つけてくるかもしれない。それでも私は須藤に、悪魔のようなあの男に教えを請わねばならないと決意していました。

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