女王様と女子会

 長い髪は黄金の絹。青い瞳は海の宝玉。肩も露わな純白のドレスがお似合いで、ロバ耳も呪われかわいいエリサ様。しかし今日は誰かと会うようで王冠を被っております。イスとテーブルは僕が用意しました。お茶もお菓子も完璧。

 という訳でいつもの謁見の間です。エリサ様がここから動きたがらないのは王冠被るのめんどくさいかららしいよ。


「余、今から女子会やるから」

「うちの女王がめんどくさい言葉を覚えてきた件について」


 女子会って何だよそれ。明らかどっかで知ったからやってみたくなっただけだろ。


「は?? 今お前余の事めんどくさいって言った??」

「まさかまさか。女子会という事はもしかして、つまり私に出ていけと?」

「そうだ。女子会に男がいたらおかしいだろ」

「嫌です。お断りします。いつもいつでもエリサ様をおそばで見守る事が私の使命ですから」

「はー!? お前がいたら女子会にならねえだろ、出てけよ! もうまなみちゃんとマリー呼んじゃってるし」

「よりによって最悪のメンツ。出ていける訳がない!」


 マリーなんて論外、まなみちゃんはロリ巨乳だしかわいいけど、言葉の刃物でエリサ様の心ズタズタにした過去があるし。

 しかしそんな事を言っているあいだにマリーとまなみちゃんが来てしまった。青髪団子がマリー、ロリ巨乳で髪長くてかわいいのがまなみちゃん。


「おや。女子会に呼ばれたはずなのにド変態グソクムシが混じってますね。殺虫剤はどこですか」

「ド変態グソクムシでゎない! 女子会なんて絶対やらせないぞ! どうせそうやって僕を仲間外れにして悪口言うんでしょ! やだやだ! やだもーん!」


 床で大の字になり不動の意を示す。エリサ様とマリーから虫を見るような目で見られてるけど負けるもんか。

 その点まなみちゃんは違うね。満面の笑顔だもの。いやそれもどうなんだって話なんだけどさ。


「ううんっ! まなみはエリッくんいてもいいと思うよ!」

「さすがまなみちゃん! そうだよね、僕はここにいていいんだ!」


 やっぱりまなみちゃんはいい子だ! さすがメイドの中では比較的マシ!

 しかしあくまでメイドの中で比較的マシなだけであって、その証拠にこんな言葉を続けてきた。


「だって、エリッくんは魔法少女だもん!」


 えっ。

 何ですかそのフリ無茶過ぎませんか。

 満面の笑顔でそう言われましても、えっ、これどうリアクションしたらいいの?


「……つまり、僕が魔法少女のコスプレをしたらここにいていい、みたいな?」


 しかもほら、まなみちゃんてばエリサ様とはまた別の天然じゃん?

 また訳分かんない事言うのよ。


「違うよ? エリッくんは魔法少女なんだよ」


 わーーーーっかんないだよねぇー。

 何言ってるんだろうねこの子は。僕って魔法少女だっけ? 違うよ魔法でも少女でもないよ。敏腕執事だよ。

 ま。分かってた。分からない子を分かろうとしても仕方ない。


「だそうです、エリサ様。私は魔法少女なので女子会参加オーケー頂きました」

「いや、それ余に言われてもなぁ……。何? お前魔法少女なの?」

「今は魔法少女です」

「んな訳ねぇだろうが!! 少なくとも少女じゃねえだろ!!」

「少女です! 魔法少女! 普段はどこにでもいる敏腕執事……だけどほんとは私、世界の平和を守る魔法少女エリリンなの! きゅるん☆彡」

「きゅるんやめろうぜえ!! あと何だどこにでもいる敏腕執事ってよ!」

「すみませんエリサ様きゅるんもう一回頂けますかできればきゅるん☆彡 でお願いします」

「ヤだよバーカ絶対言わねえ!! ……ねえまなみちゃん、こいつ魔法少女じゃないし女子会だしキモいし出ていってもらお?」

「キモくない! まなみちゃん、僕キモくないよね?」


 揃ってまなみちゃんを見たらマリーと二人で勝手にお茶会始めていた。

 フリーダムだな。フリーダム過ぎるわこの二人。


「女王もいかがですか。紅茶の味なんて分からないのでコーラです」

「余も分かんないしコーラの方が好き。じゃ、ちょっと変な虫いるけど女子会スタートー! いぇーい!」

「いぇーい!」


 王家秘蔵のティーセットにコーラ注いじゃってまー。

 いいや。なあなあで僕も参加していいみたいな空気になったし。

 うん。コーラうま。じゃがりもたくあん味とよく合う。

 なんてほのぼのしていたら、マリーが何か取り出した。


「女子会名物! サイコロトークいぇーい!」

「いぇーい!」


 ……って、うん? 女子会でサイコロトークとかある? なくない?

 いや女子会知らないし分かんないけど、ないよね? あるの?

 あとマリーもいぇーいとか言うんだ。ちょっとビックリした。


「まなみからやりたい! まなみからやりたい!」

「ではお嬢様から時計回りという事で。ゴミ虫は飛ばしましょう」

「ゴミ虫でゎない! 僕もやるからね! 仲間外れやだもんやだもん!」

「お前マリーの前だとそんなキャラなの?」

「愛されキャラでいこうと思いまして」

「死ねよゴミ」


 くぅ~~~~~~~~~っ!

 久々にエリサ様からガチな罵倒を頂きました!

 この時のために生きてるって感じがするな!


「ではお嬢様、どうぞ」

「いぇーい! 何が出るかな♪ 何が出るかな♪ たらららん♪」


 謎のフレーズを歌いながらまなみちゃんがサイコロを転がした。

 どういう理屈かまったく分からないが転がっていく度にサイコロはどんどん大きくなっていく。

 しかもサイコロが止まると謎の立体映像が宙に浮かび上がった。

 ジャジャーン! と派手な効果音とともに飛び出した言葉をマリーが大声で読み上げる。

 わっけわかんねえな。


「『一番好きな人は?』いぇーい!」

「いぇーい!」


 マリーのいぇーい気になるなぁ。すっごい気になる。申し訳ないけどまなみちゃんの好きな人より気になる。


「えーっとねー、まなみが一番好きなのはねー」


 ま。


 ここで次回に続くんですけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る