第14話 皆で短剣を探しに行く事になりました
「本当に拾いに行くの?」
「まぁ仕方ないよ・・・投げたのは確かなんだし」
相変わらずスズはハルクの腕に抱き付いたまま会話をしていた。
先程ミストとの会話で短剣は投げ捨てたと話したがとても貴重な品だったと聞いたハルク。
実はハルクを助ける為に預けたのだと言われれば人の良いハルクはその言葉を信じてしまったのだ。
「まぁアソコまで半日もあれば行けるだろうし明日の正午には間に合うと思うよ」
「ハルクがそう言うなら良いけどさ・・・」
ハルクはベアマウンテンに襲われたスズ達を助けるのに投げ捨てたが場所は分かるので拾いに行けると考え明日の正午に持ってくる約束をミストと交わしていた。
一応持ってこれなかった場合は弁償すると言う事でスズが代わりにバーディに金貨50枚を預けていた。
短剣が届けられるまでスズを人質にしようとしたバーディのイヤラシイ視線を感じたスズは自ら言い出したのだ。
「それにしてもあいつの視線・・・本当最悪だった」
「でも本当に金貨50枚をポンッと払われた時の顔は傑作だったね」
金貨50枚、日本円で500万円に相当するお金ををポンッと出されれば仕方ないだろう。
だがハルクのお陰で所持金はとんでもない事になった上に月の雫草の群生地から幾らでもお金が稼げる事からハルクもスズもそれに関しては全く気にしなかった。
その様子を見たバーディはスズはどこかの大金持ちの貴族令嬢だと内心ほくそ笑んでいた。
短剣が手に入れば今度はハルクを殺してスズを人質に身代金を親に要求する事を考えていたのだ。
それもあり2人が居なくなって直ぐにハルク捜索を手伝った者達にスズの預けた金貨はばら撒かれたなんて思いもしない2人はテラと待ち合わせをしている宿屋へ向かって行った。
特に何事も無く2人はテラの待つ宿屋へ戻り中へ入る。
あの短剣を拾いに行くには月の雫草の群生地にテラが設置したマジックアンカーを辿る必要があるのだ。
月の雫草の群生地にまで行ければあそこはベアマウンテンのテリトリーだった場所なので直ぐ近くなのだ。
「あら?お二人さんいつの間にそんなに進展したのかしら?」
「ほっほっほっ、若いってのは良いのぅ」
宿屋に入るとそこにはテラとマリアが居た。
リッカの件以降スズはハルクの腕に抱き付くのが心地よくなっており、そのままで居たのを思い出して慌てて腕を放して顔を真っ赤にする。
「あう・・・あうあうあう・・・」
そんなスズに優しい微笑みを向けるハルク、その表情を見てスズは腕ではなくハルクの服の裾をキュッと指先で摘んで恥ずかしいけど離れたくないアピールをする。
そこまで堂々とされればマリアも本気なのだと理解しそれ以上突込みを入れる事はしなくなっていた。
「それでリッカちゃんはどうじゃった?」
「うん、ハルクのお陰で二人一緒にお嫁さんにしてもらう事になった」
「ん?・・・すまんが耳が遠くなったようでな、もう一度お爺ちゃんに話してくれるか?」
「だから2人でハルクのお嫁さんになる事に・・・」
「ちょっちょっと・・・」
慌ててハルクがスズの口を塞ごうとするが何故かキスを迫られたのだと勘違いして目を瞑って口を突き出すスズ・・・
「ハルク君、少し男同士の語り合いをしようではないか?」
「誤解ですテラさん!?」
「あははははは」
温厚な表情しか見た事の無かったテラの深刻を表現したような表情を見てマリアは腹を抱えて爆笑する。
そんな和気藹々な雰囲気の中、スズが話を急に変える。
「それはそうとお爺ちゃん、ハルクが私達を助ける時に投げた短剣あったよね?あれ借り物だったらしくて探しに行かないとだめになったの」
「むっ?あぁそういえばそんな事もあったのぅ」
スズが口にした言葉でテラに話すべき事を思い出したハルクは続けて話す。
「そうなんです、それでテラさん一緒に拾いに行ってくれませんか?」
「ふむ、まぁ良かろう。ワシのマジックアンカーを辿れば直ぐじゃからな」
「あっそれなら私とアベルも月の雫草の追加しておきたいから一緒に行くわ」
「それはありがとうございます。お2人が居れば本当心強いです」
「良いのよ、ハルクも気楽に言ってくれればいいのよ私たちはもうパーティなんだから」
その言葉に本当の仲間と言うものの絆を感じたハルクは嬉し涙が出そうになる。
「アベルは今ちょっと出掛けてるから戻ってきたら話してアイテム揃えてから出発って事でいいよね?」
「あっ帰りは自分が帰還石購入して使用しますから」
「分かったわ、それじゃお願いね」
本来であれば高価な帰還石も今の彼らにとっては普通のアイテムと変わりない値段でしか感じていなかった。
明日の正午までに戻れば良いので短剣を回収してからは月の雫草の採取を行い、それが終わってから帰還石で帰って宿に泊まると言う贅沢な方法も簡単に出来る。
森から帰って全く休憩していないにも関わらずハルクの能力の効果で全員疲れが全く無く殆ど寝て無いのを忘れているのであった。
一方その頃、バーディとミストはクリムと合流してアーバンの道具屋を訪れていた。
あの短剣を欲しがっている依頼人と会う為である。
店主のアーバンに話をして商談室と言う別室で待つこと約15分・・・
そこに現れたのは適当に服屋で私服を購入して着こなしているギルガメッシュであった。
何処からどう見ても一般人が着る様な服をムキムキの兄ちゃんが着てピチピチになっている姿であった。
「お待たせしました。自分はギルと言います」
「短剣をお探しの方ですよね?」
何処からどう見ても金貨6000枚を支払う感じには見えないギルガメッシュ、どこからどう見てもただの職人である。
「えぇ、実はとある事情からあの紋章の入った武器を探していまして・・・」
「金貨6000枚と言うのは本当ですか?」
「はい本当ですよ」
そう返してギルガメッシュはマジックバックから金貨の詰まった袋を卓上に置いていく・・・
1袋の中には500枚入っておりそれが12袋。
それをまるで気にした様子も無く次々と卓上に積み上げていくギルガメッシュの行動に驚きながらもミストは続ける。
「確かに・・・それでお探しの短剣なのですが、実は自分希少なアイテムを集めるのを趣味としてまして・・・実はちょっと遠くに保管しているんですよ。」
「ほぅほぅ・・・」
「それで持って来たいと思いますので明日の昼過ぎにまたココで待ち合わせなんてどうでしょうか?」
「明日の昼過ぎですか・・・分かりました。それで用意してもらえるのなら喜んで待たせていただきますよ」
そう言ってギルガメッシュは卓上の金貨の詰まった袋をマジックバックの中へ11袋仕舞う。
そして、卓上に残った1袋をミストの前に置いて。
「これは前金です。残りは交換の時と言うことで」
そう言ってギルガメッシュはその場を去る。
まるで空気に溶ける様に気配を消しつつその場からさったのだ。
その光景に3人はギルと名乗った人物は霊体じゃないかと想像したりするのであった。
「すみません、回復薬はもう品切れなのですよ」
「えぇっ?!そうですか・・・なら帰還石を1つお願いします」
「ありがとうございます」
商談室から出たギルガメッシュは受付で買い物をしているハルク達を見つけ声を掛ける。
アベルも揃って4人で店内の消耗品を必要分購入していた。
「よぉ、また会ったな」
「ギルガメッシュさん!?」
「ん?なにか依頼か?」
ハルクが細かいアイテムと帰還石を購入しているのを見たギルガメッシュは尋ねてきた。
「そうなんですよ、ちょっと森の中へ探し者で・・・明日の昼までに戻ってこないと駄目なんですよね」
「ほぅ、明日の昼までに戻ってくる依頼・・・」
その話を聞いて目を爛々と輝かせるギルガメッシュ。
先程のミストとの会話で明日の昼過ぎまで暇になったので良い暇つぶしになると考えて少し考えた後、頷いて告げる。
「俺も明日の昼過ぎまで暇なんでよかったら一緒に行っても良いか?報酬や取得物とか俺要らないから。」
「へっ?えっと・・・」
突然話しかけられたアベルは困惑しながらも視線をテラへ向ける。
アベルはなんだかんだリーダーをやってはいるが、立場的に誰もがテラをチームリーダーと考えていた。
「いいんじゃないかのぅ、ワシ等後衛は前衛が多いほうが助かるからのぅ」
「うん、いいんじゃないの」
「そうですね、スズは?」
「ハルクが良いんだったらいいよ」
4人とも頷きハルクも頷いていた。
「それじゃあ俺も着替えてくるから・・・そうだな、5分後に町の入り口に集合な」
そう言い残してギルガメッシュはまた消えるように何処かへ行ってしまった。
こうしてSランク冒険者と言う強力な味方と共に短剣を探しに行く事になったハルク達。
ギルガメッシュ本人も自分が欲しがっているそれが今から探しに行くアイテムだとは夢にも思わず単なる暇潰しとして同行する事が決まったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます