第13話 バーディ達と再会してしまいました

「居たか?」

「分からん!だけどこの町に居るのは確からしい、だから探せ!見つけて連れて行ったら金貨10枚だぞ!」

「と言ってもそのハルクとか言うやつの顔お前知ってるか?」

「いや・・・でもまぁそれっぽいやつ連れて行きゃいいんじゃね?」

「そうだな!よしアイツを拉致るぞ!」


街中に溢れるDランク以下の冒険者達はバーディー達の依頼で町の何処かに居るハルクを探し回っていた。

容姿に付いては簡単に口頭で説明されたのだが写真なんて物もないこの世界で人探しと言うのは難航していた。

中には全く違う人間を連れて行って怒られて追い返される冒険者達も居た。


「馬鹿かお前!そいつじゃない!もっと背が低くて弱そうなやつだ!」

「はぁ・・・」


次から次へと町の噴水の前で待つバーディ達の前に連れて来られる男達。

中には強制的に拉致されて連れて来られる者も居たりしてちょっとした騒ぎになりつつあった。


「くそっ!絶対にこの町に居る筈なんだ!次っ!!」


ミストが怒鳴りながら並んでいる男の横を通りながらハルクを探す。

中には拉致されて違うと言われ解放されたのに再び別の冒険者に連れて来られている者も居た。


「だぁー!違う違うちがーう!!!」

「いい加減にしろ!本当にそのハルクとか言うやつこの町に居るのか?!」

「そうだそうだ!大体お前本当に連れて来たら報酬払う気あるのか?!」


何度も町を駆け巡って聞いてた話に合致する人間を連れて来ていた冒険者達も徐々に機嫌が悪くなりつつあった。

それはそうだろう、容姿と言っても髪の長さや背の高さを簡単に説明されているだけで人を探せと言うのは無理在りすぎるのだ。

いくらDランク以下の低級冒険者と言っても集団で襲われればバーディ達ですら対応に苦しむのは間違いない。

しかもここは街中なので強力な魔法をぶっ放したり一方的に攻撃するわけにはいかないのだ。


「くそっハルクのやつ何処に居るんだ?!」


アーバンの道具屋の店主から依頼人との待ち合わせが昼だと告げられているのでそれまでにハルクを見つけないと金貨6000枚がパーなのだ。

焦りが見えつつあるバーディ達は知りもしない、丁度その頃ハルクは美女2人に室内で告白され2人に腕を組まれながら町の中を歩いている事など。

冒険者達に「女にモテなさそうな弱そうな男」と話していた為に見事にスルーされている等とは夢にも思わなかった。








「本当、夢みたい・・・外の空気はもう吸えないと思ってたのにこうして歩けるなんて」


病気が治り外を歩いてみたいと話すリッカを近くまで散歩と言う名目で外へ出掛けたハルクの腕にリッカは抱きつきつつ話す。

その心の底から嬉しそうな表情を見せられればハルクも何も言えない。

「病み上がりで転ぶと危険なので補助してもらっても良い?」と聞かれて頷いたので突き飛ばす訳にもいかないのだ。

そして、そんなリッカの積極的な様子にスズも負けずと反対側の腕に胸を押し付けるように抱きつく。

自らそんな事を男性に行った事など今まで無かったので顔を真っ赤にしているのを見ればハルクはスズにも何も言えない・・・

そんな両手に花の状態で歩いているハルク達の近くを何人もの冒険者達が走り回っていた。


「なんだか騒々しいわね?」

「うん、誰か探しているのかな?」


そんなハルクの姿を見ても冒険者は抱きついている女が2人も居るので「違うな・・・」と一言残して駆けていく・・・

違和感を感じつつも関係ないだろうとハルク達は気にせずに町中を歩きリッカの自宅へ戻っていた。

驚く事にハルクの能力でリッカの体調も既に完全に近いほど回復しており、病み上がりとは思えない健康状態に戻ってきたリッカの姿を見たリッカの母はそのまま両手にしがみ付かれたままのハルクに深く頭を下げる。


「本当にありがとうございますハルクさん、うちの娘をどうぞ宜しくお願いします」


完全に意表を衝かれて返答に困るハルクの様子に肯定したのだと判断したリッカの母は物凄い良い笑顔で・・・


「スズちゃん、二人共幸せにしてもらうんだよ」

「うん」「はいっ!」

「ぇ・・・ぇえぇ・・・」


流されるように交際が容認され確定してしまったハルク、リッカは自宅の中へ母親と共に入っていく。

入る直前にウィンクして小さく手を振っていた様子からも完全に否定するタイミングを失ったハルク。


「ねぇハルク、とりあえずお爺ちゃんに知らせに行こっ」

「えっ・・・あ、あぁ・・・」


残されたハルクとスズは治療が完了した事を報告しようとテラの元へ戻ろうと足を進める・・・

そんなハルク達の正面に見覚えのある人物がこっちへ向かって走ってきていた。


「あぁっ?!お前ハルク!やっと見つけたぞ!!!」


バーディとミストの2人が何故か10人以上の冒険者達から逃げるようにこちらへ向かって走ってきていたのだ。

そして、そのミストの怒鳴り声で後ろを走っていた冒険者たちは怒りを露にする・・・


「お前全然言ってた容姿と違うじゃねぇか?!」

「モテなさそうって言ったじゃねーか!なんで女連れなんだよ!?」

「大体髪の色も違うじゃねーか!?」


そう、ミストもバーディもずっと一緒に居たのにも関わらずハルクの髪の色すらも覚えておらず青色の髪と話していたのだがハルクは茶髪なのだ。

だが追いかけてきていた冒険者たちは怒りを納め始めた。

ハルクが見つかったので探していた者は報酬を貰う権利があると判断したからだ。

ただでさえ冒険者ギルドが騒がしくなっておりCランク以上の冒険者を集めて何かが始まっており一般の依頼は貼り出すのが止められており、今日の稼ぎがなくなるのは困る冒険者達だからこそ終わりよければ全てよし!

金さえ払ってもらえれば文句は無いのだ。

だが・・・


「見つけて連れてくるってのが条件だったけど見つけたんだから少しでも探すのに協力した者にも分け前はあるんだよな?」

「おっおうっちょっと待ってろ!昼過ぎには支払ってやるから!おいハルク!お前俺が貸したあの短剣返せ!」

「えっ?貸した?」


二度と会いたくないと考えていた元パーティのあの瞬間を思い出すハルク。

そして、ハルクは言い返す・・・


「い、いや待ってくれよミストさん。確か銀貨30枚で俺に売ったんじゃ?」

「おいおい、何勝手に人の物パクッてんのお前?俺が言った事をしっかり思い出せよ」


そう言われてハルクは思い出して顔を青ざめる・・・

ミストは確かに言ったのだ・・・


『まぁせめてもの情けだ。武器くらいは要るだろ?ほらっ』


そう、一言も売るとは言っていなかったのだ。

青くなったハルクの顔を見て思い出したのだと理解したミストは少しずつ呼吸を落ち着かせながらハルクに告げる。


「なっ?売るとは言ってなかっただろ?あれは特別せいでな、お前が生き残れたのもあれのお陰なのさ。だからさっさと返せよ」

「・・・ない」

「へっ?」

「彼女達を助ける為に・・・投げちゃった」

「「・・・はぁあああああああああああああああああ?!?!?!?!?」」


バーディとミストの叫び声が周囲に響き渡るのであった。

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