第10話 バーディ達が動き出しました
(どうしてこうなってるんだ・・・)
別室に待機を命じられたバーディ達はソファーに酷い姿勢のまま寝入っていた。
その様子を立ったまま見詰めるミシッド。
一流冒険者のCランクよりも高いランクのBランクであるバーディからパーティに誘われた時は舞い上がって居た。
今までどこかのパーティに専属で加入する事無く臨時で仲間に加わるだけだったミシッド、彼の持つタンクと言う戦闘スタイルが中々受け入れられなかったのが原因でもあった。
攻撃よりも防御に特化したスタイルで敵の攻撃を受け止め、その間に仲間が敵を攻撃する。
これが理想となるスタイルでは在るが世の中そう上手くはいかない、空を飛ぶ魔物や体の大きな魔物相手では役に立たない場合も多くブレス等では受け止めるよりも避ける事が必要となる。
タンクはまさに対魔物よりも対人間に向いた戦闘職なのである。
そんな彼の戦闘スタイルをバーディ達は高く評価した。
魔法剣士のバーディにシーフのミスト、魔道士のクリムに荷物持ちのハルク。
このメンバーでは前衛の2人が攻めている間に後衛の2人を守る方法が必要となる、そう言って仲間に誘われたのだ。
しかもそれがBランクのパーティからの誘いなのだ。
自分が貫いてきた戦闘スタイルが認められた!
そう考えたミシッドは二つ返事で加入を決めた。
だが突然のハルクの追放、だがそれはBランクパーティだからこそ何か考えがあるのだろうと違和感を覚えながらもそれを飲み込んだ。
そして、余りに酷い戦闘スタイルとCランクどころかDランク並みかそれ以下の戦い・・・
更には口裏合わせの保険金詐欺と余りにも酷い有様にうんざりし始めていた。
町に命からがら戻った時は魔物に追われながらの真夜中の進行に疲労が溜まりまともな思考が出来なかったが落ち着いて考えばおかしな所だらけであった。
(だいたい魔力が直ぐに回復するとか意味分からん!)
タンクも敵のヘイトを集めるスキルを使うのに魔力を使用するので魔力を回復させる常識はある。
だからこそ強力な魔法を無駄にぶっ放して直ぐに回復するとか意味の分からない事を言っていた仲間に呆れていた。
(これが本当に・・・あの地下遺跡を攻略したパーティなのか?)
3ヶ月ほど前に彼等がBランクに昇格した功績となった地下遺跡の攻略。
途中で休む事も出来ず延々と続く罠だらけの道、絶えず襲ってくる死霊系の魔者達・・・
数々の挑戦者達を屍に変えた地下遺跡を僅か4人のパーティが攻略したと当時は話題になった程であった。
「入るぞ!」
その時突然ドアが開けられ急いだ感じのギルド職員が入ってきた。
怒声に驚いたのかクリムは目を覚ましたがバーディとミストは眠ったままであった。
「起きろお前等!」
「っ・・・んだようるせーな・・・」
更に続いた怒声にバーディも目を覚ましギルド職員を睨み返す。
睨み返された職員は気にした様子も無く口を開いた。
「ギルドマスターからお前達の保険金詐欺に関する回答が来た。保険金の返金と罰金10%だ!」
「ちっ・・・ほらよ!」
バーディは先程受付嬢から渡された保険金と手持ちの金貨を支払う・・・
そこには金貨32枚しかなかった。
「金貨が1枚足りないようだが?」
「今手持ちがねーんだよ、後から払うっての!」
イライラした感じに手持ちの金貨を全て渡したバーディは偉そうに返す。
そして、何かを思い出したかのように口にする。
「そういや俺達が取ってきた月の雫草返せよ!」
「ん?あぁこれか、ほら」
そう言って受付嬢から預かったバーディ達の採取してきた並品質の月の雫草が布に包まれた状態で返された。
「それと今緊急クエストが出ている、罰則の変わりにお前達も強制参加するようにとの事だ」
「はいはい、分かりましたよ」
ウザっと言った感じでギルド職員にはもう用は無いと目すら合わせないバーディは立ち上がり部屋を出て行こうとする。
慌ててそれに続くミストとクリムとミシッド。
その姿を見詰めるギルド職員の視線はBランク冒険者を見る目ではなく底辺冒険者へ向けるモノであることをミシッド以外は気付かなかった。
「おぅ、なんか緊急クエストが出てるんだって?」
「あっバーディか!お前達も参加するんだろ?ほらよ」
話を聞いているのかいつも受付をやっている男性職員が依頼書を見せる事無くバーディに金貨1枚と手を差し出す。
バーディはその手にギルドカードを手渡し金貨1枚を受け取る。
「詳細は知ってると思うがベアマウンテンの群れを率いる親玉の討伐だ」
「へっベアマウンテンの群れかよ、こりゃ俺達の本領発揮だな!」
「ベアマウンテンの報酬も臨時でアップしているからしっかり稼いでくれ」
それだけ会話を交わしバーディ達はギルドを出て行く。
緊急クエストで前金が発生するのは知られており受け取った段階でギルドに借金を返済する事も考えたがそれよりも・・・
「んじゃあとりあえず飯行くぞ!」
手にした前金の金貨で昨夜から何も食べていない腹を満たそうと彼等は近くの食堂へ足を運ぶ。
金貨1枚を使ってしまっても自分達にはまだ月の雫草が在る、これを内緒でアーバンの道具屋に売れば金貨2枚は硬い。
そう考えて手にした最後の金貨を使って贅沢な朝食を取る一行。
ミシッドも脱退を考えてはいたがとりあえず今は飯を食って緊急クエストの報酬を受け取ってからパーティを抜けようと何も言わず食事を共にする。
彼等は知らない、今この時にアーバンの道具屋に冒険者ギルドから大量の月の雫草が届けられその価値が大暴落しようとしている事など・・・
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