第6話 ロリサキュバスがせめてきたぞっ
夜。村娘コリーの皮を着た俺はコリーの両親に連れられてオヤカタの家を訪ねた。
早くから始めていたのか既に宴もたけなわといった様子だった。
見ればコリーの記憶の中のいじめっこ少年たちもいる。コリーを見てニヤリと笑ったようだが俺の方から動いてどうこうする事もないだろう。
俺はいじめっこ少年たちを避けて宴会の席についた。
「オヤカタさん、お招きありがとうございます」
コリーの父親が挨拶する。
「おお、ジョージーさん! まあ楽しんでいってくれや!」
ガッハッハと大声で笑いながらオヤカタはさっそくコリーの父親に酒を注いだ。
「湖の向こうの角狼を仕留めたとか? さすが魔弾の射手の腕は衰えていませんね」
「いやいやいや、今日の獲物は村の近くで見つけたのさ」
「ええっ、また魔王の領域が広がったんですかねぇ」
「それがよ、たまたま村の近くで森に入ったすぐの所に蔦で木に繋がれてたのよ、やっこさん」
「なんと。誰かの仕留め損ねですかねぇ」
「だからこうやって盛大に宴会でもしてみんなにお裾分けしようってことになったのよ。この辺りにゃ、この村のモンしかいねえからな。村の誰かの獲物だったら横取りするなって飛び込んでくるだろ」
「しかし角狼にとどめをさせるなんてオヤカタしかいないでしょう。その村人もオヤカタに見つけて欲しくて繋いでいたんじゃないですかねぇ」
「だとしたらそいつにも肉鍋をわけてやりてぇなあ」
なんて話が盛り上がっていた。
なので俺は遠慮なく目の前の土鍋の汁物の中の肉団子をたっぷりといただくことにした。
その日に振る舞われる料理は角狼だけではないようで、俺はいくつものテーブルをめぐり腹いっぱいに郷土料理を楽しませてもらった。
料理も少なくなり静かな酒飲みムードになった所で、宴会場の外が騒がしいことに気付く。
ガラスの割れる音や悲鳴さえも聞こえてきた。
「な、なンだぁ?」
オヤカタも異変に気付き、猟銃のような魔法の杖を持って立ち上がる。
そこへ、村の若い男が飛び込んできた。
「大変だ! サキュバスがせめてきたぞっ! ……ウッ!」
村の男は背中を反らせて卒倒する。
男の背後から、青い肌にコウモリの羽根を生やした妖艶な女たちが宙を舞うように宴会場になだれ込んできた。
「キャアーーーッ!」
突然の魔物の襲来に女たちが悲鳴を上げる。
「オオーーーッ!」
酒がまわって良い気分の男たちは魅惑的なサキュバスの姿に歓声を上げた。
「オラッ、おめえらしっかりしやがれ!」
ドンッ! ドンッ!
オヤカタはサキュバスたちに構わず発砲する。
自分たちの魅了が効かないことに驚き逃げるサキュバスたち。
「ケッ、この俺を魅了したけりゃガタイの良いインキュバスでも連れてくるんだな!」
なんと。このオヤカタには女の魅了が通じないらしい。
オヤカタは猟銃を持って屋外に飛び出した。
「この村に攻め込むたぁいい度胸じゃねえか!」
ドンッ! ドンッ!
オヤカタの銃声が村に響く。
すると、紫色の蝶のような魔力の粒子がオヤカタの目の前の上空に集まり、中からひときわ体格が小さいが過激な衣装をまとった幼女のサキュバスが現れた。
「ほほーう、私の魅了が通じぬとは中々強い精神力じゃな。手練れの冒険者か? それとも趣向の違いかのう」
「両方だぜっ!」
ドンッ!
オヤカタの射撃をするりと宙を舞うように避ける幼女のサキュバス。彼女が村を襲ったサキュバスの群れの頭領だろうか。
「まあそう慌てるでない。"転生者"を差し出せば村の者たちに危害は加えん。少々イイ夢を見せてやる程度で済ませてやる」
「テンセイシャだぁ?」
「調べはついておる。この村の中に潜んでいるはずじゃ」
「よそ者が来たなんて話は聞いてないぜ」
「ほう。それでは村の者を根絶やしにすればよいな。匿っていようと隠れていようとカタは付く。恨むなら"転生者"を恨めよ。クックック」
なんと。幼女のサキュバスは転生者、つまり俺を探してこの村を襲ったようだ。
どうする? 素直に名乗り出た方が良いか?
そう戸惑っている前でオヤカタはさらに幼女サキュバスに魔法の弾を打ち込んでいく。
「バッキャロー! そんな言いぶんでこの村の男たちに手出しさせるかよォ! オカミさんたち、やっちまいな!」
オヤカタの呼びかけで、猟銃のような魔法の杖を持って女たちが飛び出してくる。
「サキュバスの魅了なンて女にゃ効かないンだよ!」
「あたいらの大事な亭主になンてことしてくれるンだい!」
ドンッ! ドンッ!
村の女たちは勇ましくサキュバスの群れに射撃していく。
「おい人間ども。あまり魔族をナメるなよ?」
幼女サキュバスはうろたえることもなく、紫色の蝶のような魔力の粒子を一気にばら撒く。
魔力の蝶たちは村の女たちの頬に止まると、そのまま刺青のように肌に溶け込んでしまった。
淫猥な光を放つ紋章が村の女たちに浮かび上がる。
こどももおとなも、おばーさんも。
「なっ、テメェ、何を!?」
「私の魔力で一時的に支配してやったわ。さあ女ども。精を吸い尽くせ!」
村の女たちは茫然と立ち尽くし手に持った猟銃を落とした。そして手近な村の男たちに襲い掛かった。
あたりで巻き起こる嬌声と粘液の音。
村の男女が誰彼かまわずまぐわる、おぞましい光景が目の前に広がった。
暗がりからはあのいじめっこ少年たちの声も響く。
「や、やめてくれカーチャン! そんなところ舐めないで!」
ちくしょう、実の母親に実の息子のどんなところを舐めさせてやがる! 人混みで全然見えない!
俺があたりの光景に戸惑っていると、一匹の蝶が俺の目の前にもフワリと舞い飛んできた。
「あ、これはヤバい」
と言うが早いか、蝶は俺の頬にも張り付いてしまった。
「コリーッ!」
「チクショウ、サキュバスめ!」
「俺たちがいつもいじめているけれど実はみんな大好きなコリーに何てことを!」
いじめっ子の少年たちがコリーの周りに駆け付けた。
だが若干前かがみで。
俺の方は特に操られたりという事はないのだが、着ている皮の方のコリーは魔力への抵抗力など持っておらず、簡単に支配されてしまっていた。
意識ははっきりしているのにコリーの体がいう事を聞かない。
少年たちに近づき、その体を撫で回していく。
「コ、コリー?」
「うそだろ……」
「あのパンにしか興味のない鳥頭のコリーが俺たちの体をじっとりとなぶるように撫で回しているっ!」
少年たちは戸惑いながらもコリーに撫で回されるままになっている。
そしてついにコリーは少年たちのズボンにまで手をかける。
「(……えっえっ、イツキさん!? ウソでしょ!? 何やっているんですか!)」
様子を見守っていたであろう女神のミクさんが慌てて止めに入る。
だがこのコリーの動きは俺のせいじゃない、信じてくれよ。
言い訳をしようにもコリーの口が動かせない。
いじめっこの少年たちはコリーの手によって次々と脱がされていく。
コリーはついに自分の服まで脱ぎ始めた。少女のなめらかな背中が露わになる。
こいつは言い訳できねえ。このまま俺はコリーの体のまま、この少年たちと……!?
いかんいかんそれはいかん。双方にトラウマを残しかねない。
そうこうしている間にコリーの体にはパンツ1枚しか残されていなかった。
「(……イツキさん! 脱いで!)」
ミクさんの必死な叫び声。
えっ、いいの?
まさかミクさんまで俺のメス堕ちを後押ししてくるとは。
「(……ち、違います! スーツを! コリーちゃんを脱いでください!)」
俺はそれを聞いてすぐに察する。
確かに淫紋で操られているのはコリーの体なのだから脱いでしまえば支配から逃れられる。
そうと分かれば、いくぜっ!
ソイヤッ!
すっぽーん!
俺はコリーの背中から勢いよく飛び出した。
「フゥーッ! 助かったぜ!」
元の体に戻り、ようやく声も出せるようになった。
俺の周りには顔を赤らめた少年たち。
が、すぐに真っ青に変わる。
「ワーッ! コリーが!」
「脱皮した!?」
「背中が割れたコリーの中から全裸の男が勢いよく飛び出してきたァーッ!」
コリーをうっとりと見ていた半裸の少年たちの目の前に唐突に現れた全裸の俺。
その衝撃は察するに余りある。
少年たちの股間も一気に縮み上がっていた。
俺は慌ててコリーのスーツ化を解き、ラバーを回収して元の全身黒ラバースーツ&ガスマスクの姿に戻った。
「残念だったな。だが安心しろ少年たち。コリーは無事だ」
少年たちをなだめるように優しく語り掛ける俺。
だが、少年たちどころか周りの大人たちまで絶叫した。
「ワァァァァ! 全身真っ黒いバケモノだぁぁぁ!!」
サキュバスに操られていた女たちも、サキュバスとイイコトしていた男たちも一瞬で覚めて慌てふためき逃げ惑った。
阿鼻叫喚。
その中心に俺はぽつねんと立ちすくんでいた。
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