第1話 異世界転生?
「――――――ぁ?」
久しぶりに感じる明るさで目が覚めた。
カーテンを開けたことなんてここ数年無いはずだが、誰か部屋にでも入ってきたのか?
……そんなはずはないだろう。
兄貴も母も俺のことなどいないものとして扱う。
唯一俺を可愛がってくれたのは婆ちゃんだけだ。
その婆ちゃんも今となってはもういない。
じゃあ、この明るさはなんだ?
「あ、目が覚めたか?」
強制的に脳が覚めるような感覚。聞いたことがないほど透き通る声音だ。
若い、男の声だ。声から性格や考えを掴むことが出来ないのは何故だ。
「ん、どうした?目が開かないか?」
「い、いや、開いてはいるんですが……ここは?」
一面真っ白な世界。果てしなく続いているようにも、すぐ先で終わっているようにも思える。
壁と床の境界線がなく、その場に浮いているかのようにも思えるような場所。
なぜこんな現実離れした空間にいるんだ?
「何故……か。そうだな、説明をしていなかったか」
説明?と聞き返すと男の声は俺の周りを歩き回るようにして聞こえてくるようになった。
「端的に言おう。君は死んだ」
「死……?」
こんな現実離れした光景を見せられているのだ、俺が死んだというか事実は受け入れられた。
受け入れることはできたが、理解はできなかった。
一体なぜ、俺は死んだんだ?
「死因は火事に見せかけた他殺。見捨てられ、兄と母に君は殺されたんだ」
不思議と怒りは湧いてこなかった。落胆もしなかった。
あぁ、そうか。と思っただけだった。
きっといつかは捨てられる。それがどんな形であれ。そんなことは父さんが死んでから既に分かりきっていたことだ。
それが今だっただけだ。
「君は才能がない自分が嫌い。だからと言って努力をして何かを成し遂げようという気持ちもない。そうだね?」
「は、はい」
声にはなんの皮肉も嘲笑も含まれていなかった。
ただ事実を淡々と読み上げるだけの精密機械のような声だ。感情なんて感じ取れない。
それが何となく心地よかった。
「そこで君にチャンスを与えようと思ってね」
声は俺の正面で止まり、同じ目線の高さから聞こえてくる。
「これから君は新しく生まれ変わる。君である記憶を維持したままに」
「転生……?」
理解が早くて助かる。そう言った声は本当にそう思っているのかさえ掴めない。
「まぁ、物は試しだ。やれるとこまでやってみてくれ」
その声を最後に真っ白だった世界は一瞬にして真っ暗に暗転した。
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