無能の騎士

天寝子

プロローグ

 カーテンが閉まりきって外からの光が差し込まない部屋で一日中狂ったようにゲームに浸る。

 部屋の外から出ることはトイレと風呂以外ではありえない。

 こんな自分を変えようと考え、筋トレや運動なんかをした時期もあったけれどどれも長続きしなかった。

 結局俺に出来ることなんて一つもない。何をやろうにも才能がなかった。

 人には必ず才能が宿っている。なんて父さんは言ってたけれど俺は到底そうは思えない。

 強いて俺の才能を挙げるとするなら現実から目を逸らすことだ。これだけは誰にも負けない自信がある。

 学校にいても居場所なんかない。友達もいない。親からは期待なんてされてない。

 父さんが死んでから母さんは俺よりも兄貴を可愛がった。

 兄貴は何をするにも優秀で、努力家だった。

 俺も兄貴みたいだったら。なんて妄想は数え切れないほど抱いた。

 その度に理想と現実から乖離した自分の姿が映り、嫌気がさした。

 所詮俺は才能もなければ努力する気もないなんの取り柄もないクズ人間だ。


「鏡みたいな兄弟」


 小学校の時のクラスメイトに言われたことだ。

 全くその通りだと思う。

 当時の俺は何も言い返せなくて俯くだけだった。多分今でもそうだ。


「はぁ…………」


 投げ捨てたゲームのコントローラーが床へ転がる。

 ベッドに寝そべって読みかけのライトノベルをパラパラと読む。

 読むのに飽きて天井を仰ぐ。


「……寝るか」


 俺の意識はそこで終わった――――――

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