4-1 ひたむきな想い②
翌日の朝食もまた、庶民ではまず並ばない数の皿が用意されていた。焼きたての香ばしい香りがするパン、新鮮で彩りのある野菜を使ったサラダ、濃厚で冷たいポテトのスープに厚切りのハム。そして様々なフルーツが添えられている。全て多すぎず、各々の適量が机に並んでいた。
それをお腹いっぱい食べてから、フラットに街を観光したいと伝える。それを聞いて明るい笑顔を見せた彼女は、喜んで案内を引き受けてくれた。
「ーーああ、でも一つだけ用事を済ませたいの。西地区にある雑貨屋さんが、今日棚卸しをするらしくて。手伝うって約束したのよ」
「そういう事なら俺たちも手伝うよ!」
「うまい飯に気持ちいいベッドも用意してもらったしな」
朝食後の予定が決まった三人は、支度を済ませて午前中に屋敷を出た。西地区へは裏から回る方が早いそうだが、昨日の連中の事もあったので一度広場へ出てから大通りを行く。
フラットに昨夜フレアから話を聞いた事を伝えると、苦笑いで「本当に困ってるのよね」と言った。リュネット家はここ数年の間に外から移り住んできた成り上がりの富豪で、金儲けの事しか頭にないらしい。その御曹司も全く好みではないのだと冗談めかして言った。
まだ店が開いてそう経っていない時間だというのに、すでに広場は賑わいを見せていた。買い物をする者、走り回って遊んでいる子供、商売をする元気な声が広場に溢れている。
フラットを見かけて声をかけてくる者は何人もいた。「昨日はありがとうね」「また今度遊んでよ!」「今日は生きの良い魚が入ってるんだ」。
話しかけてくる者達の年代は様々だ。それらへ丁寧に返事を返しながら進んでいると、三人が目的の店へ着いた頃には昼前になっていた。
「ここの主人の腕はとても繊細で素敵なの。私のお気に入りはいつもこのお店の雑貨だわ」
「そんな風に言ってもらえるなんて嬉しいねえ」
雑貨屋の店主とフラットの会話は自然なもので、本当によく来ているのだろうということが分かった。……それだけではない。街の人々が彼女へ話しかける言葉には確かに親しみがこもっていた。自身の足でこの街をいつも見て回っているのだろうと、それだけで伝わってくる。
慣れた様子で店を手伝うフラットの様子が、この街への愛情を物語っていた。
「フラットはイオリアが大好きなんだね」
こうやの言葉に嬉しそうに笑う彼女の笑顔が、この街に来て一番印象的だった。
店の手伝いを終えた三人は、イオリアで一番美味しいと評判のクレープを食べさせてくれる店へ向かっていた。フラットの提案にすぐさま反応したのは甘い物好きのりんじゅで、急かす彼に倣って三人の足取りは軽い。
その店は落ち着いた郊外の森近くにあるそうで、少し中心から外れてはいるがいつも人で賑わっているのだと言った。
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