第33話 あぁ、すっかり忘れてたよ……

 ――――――三年後。既にエルドル学園を卒業したのが昨日の事である。


 この間を言えって? 馬鹿言うなよ。あれから女子の間では何か色々と噂が広がってしまったし、男子からは師匠呼ばわりされるわで、大変だったんだぞ。

 しかもステラたちとの仲が公認みたいになって学園内でも(主にステラが)いちゃついて来るようになったし。精神はかなり成長したのが不幸中の幸い……と言えるのか?


 まぁ、収穫と言えばレドという友人が出来た事だろう。無論、男子である。彼も最初は打算ありだったんだが、それを叶えて上げたところ凄く親しくなったのだ。その内容は俺に近づくので予想はついていたけど…………意中の相手と仲良くなると言うもの。

 レドもそのお相手も共にBクラスで現在はステラたちとも仲は良い。ちなみに二人の仲自体も凄く良い。そのお陰か、王都限定で困った時に手を貸してくれると言ってくれた。……まぁ、俺はアルトネアに帰った後まずはこの国を見て回って他の国も旅をするつもりなので手を借りる状況になる事は殆ど無いと思うんだけどね。寧ろ、手を貸す事になりそう……。

 あと、シュリィとも仲良くなった。まぁ、メインはステラたちなんだけど。何かね、その影響か知らないが愛人疑惑とか可笑しな噂が出回った時は肝が冷えたよ。しかも、本人が満更でも無いんだ。本当にあれは困った……


 で、今はクロエの屋敷で四人で寛いでいる。さっきまで皆で合格おめでとう~とかそんな感じの集まりをやっていて終わった所である。

 三人とも俺の近くで横になるなり、もたれ掛かって来るなりと自由だ。……あと、部屋の扉の近くに一人メイドがいるんだけど、いつもの様に温かい目で見守ってらっしゃる。二年ほど前までは止めて欲しかったんだが、もうどうでも良くなった―――匙を投げたとも言う。だってね、いくら言っても治してくれないんだよ。


 あ、そうそう。この三年間、色々と頑張ったお陰で結構成長したんだよね。……まぁ、ステラたちと比べられたら天と地ほどの差があるんだけどもさ…………


――――――――――――――――――――――――――――

『ユート(四ヶ谷祐人) 男 十三歳 能力‐46

 9 愚者

【体力】‐841/841

【力】‐464

【耐久】‐771(+30)

【敏捷】‐879

【魔力】‐2434

【精神】‐2009(+50)

【スキル】‐超精密操作、俯瞰全視、高速多考、超感覚、槍術、交渉、家事、自己回復オートリジェネ、魔力掌握、魔力高速回復、隠蔽、影、受流し、杖術

【魔法】‐水属性、光属性、風魔法、氷属性』

――――――――――――――――――――――――――――


 ふふふ……頑張っただろ? まずは能力値が全部大幅に増えている事だよな。二倍くらいになってるんだぜ。……まぁ、その原因がボコボコになる事だったんだけどな。

 次にやっと水属性の上位、氷属性が使えるようになったんだ。これで攻撃の幅がようやく広がる。俺が持ってて使えるのって大体が支援系なんだよな……しかも殆どクロエの方が強いの。単独行動以外で殆ど出番無くてさ……。

 最後に何と言ってもスキル。四つも増えたんだぜ。その殆どが生徒から逃げたり上手く躱したりする上で得たのは…………非常に皮肉である。幾つかマスターしたのは僥倖だけど。でもなぁ、一つは新しく得たスキルなんだよなぁ……




 という訳で俺は三年間、頑張ったんだよ。だけどね、ステラたちの成長がヤバいのなんの。試しに見てみ。


――――――――――――――――――――――――――――

『ステラ・フォーハイム 女 十三歳 能力-98

 「魔術師」 7 「処女」

【体力】-9078/9078

【力】-7548

【耐久】-9381

【敏捷】-9220

【魔力】-14021

【精神】-8644

【スキル】-合成魔法、剣、魔力操作、自己回復オートリジェネ、家事、捕捉、高速機動、魔力制御、魔力回復

【魔法】-火属性、水属性、風属性、土属性、青火属性、雷属性、金剛属性』

――――――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――――――

『ミレナ・アルトネア 女 十三歳 能力‐68

 33 6 「処女」

【体力】‐3994/3994

【力】‐2156

【耐久】‐2090

【敏捷】‐5380

【魔力】‐9610

【精神】‐7962

【スキル】‐適性、空間機動、礼儀作法、感情爆散、近接格闘、感知、視界、捕捉、万能、短剣術、魔力高速回復

【魔法】‐空間属性、精霊属性』

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――――――――――――――――――――――――――――

『クロロリーフェ・フォン・リベルターレ 女 十二歳 能力‐62

22 3 木星

【体力】‐905/905

【力】‐636

【耐久】‐422

【敏捷】‐806

【魔力】‐7212

【精神】‐7728

【スキル】‐適性、魔力超高速回復、礼儀作法、捕捉、魔力掌握

【魔法】‐光属性、闇属性、自然属性』

――――――――――――――――――――――――――――


 ……………………お判りいただけただろか? 控えめに言って数値の上でなら殆ど負けているようなものである。勝ってるものと言えばスキルの数くらいだろう。まぁ、実際に戦っても良くて引き分けなんだけども。男の立場としては非常に情けない。


 まぁ、ステラは全スペックが高いし、ミレナは基本的に俺の上位互換、クロエは完全に遠距離とそれぞれの役割に応じて能力値が高いので正直、俺って要らないと思う。ミレナが変わりをしてくれるしね。あと、最初からそうだったんだが、何で皆俺が隠蔽して《隠れて》るのに見つけられるのか。その理由が捕捉というスキルだ。元々は気配感知だったようでいつの間にかそれに上がっていたそう。

 ……このスキルのお陰で俺を見つけれたらしい。それにしても即見つけられるのは俺の精神的に大ダメージなのだが。


 改めて自分とステラたちの成長の違いに軽い絶望味わって自虐気味に笑っているとがばっ! と結構な勢いでミレナが立ち上がった。どうしたんだろう?


「ユートくんっ!」

「何でしょう?」

「卒業したしそろそろ良いと思うの!」

「何をで?」

「告白よ、こ・く・は・く!」

「……………………あぁ」


 そう言えば歓迎式の後にあった決闘の原因がミレナだったので卒業するまで延期するって言ってたっけ。正直に言って学園内で公認になる前から忘れてたよ。そもそも注意する為に言ったようなものでミレナから言ってくれればやっても良かったんだけど……

 その事を言ってみたら早く言ってよ! と怒られてしまった。だが、ミレナを注意する事が主な目的なので俺から言う事は無い。


 俺が罪悪感を持っていない事を察したのか、ミレナは怒る事を止め今度はお願いして来た。……もう人前でキスも済ませてる事だししなくても良いかなとは思うんだけどさ。

 ステラが月の下で求婚なんて何ともロマンチックな事をしてるんだから私もお願い! 憧れてるの! とはミレナの弁だ。俺はクロエがミレナの話に頷いていたのが見えて冷や汗が流れていた。

 クロエもなんてそんな事は……これ以上言ったらフラグになりそうなので止めておこう。


「……はいはい。分かりましたよ。で、何時するんだ?」

「明日! 夜でお願い!」


 俺の質問にミレナは即答する。そんなにステラと同じ場合が良いのだろうか。まぁ、言われた以上は頑張ってみるけどね。

 ……ところで普通は告白とかって言われる人は知らないよね? 大体察しても当日だよね? それがさ、一緒に考えてるってのも可笑しな気がしたんだが……もう今更だ。気にしてもしょうがない。あと、クロエもして欲しそな顔をしていたのが、無視した。……流石に勘弁して。俺の精神力は殆ど無いよ。


 最後に一つ。ミレナは間違いなく美少女である。それも十人に問うたら十人とも肯定するレベルの。そして、地球の時の様な黒髪ではなく、白銀だ。ならば同じ夜だと……開けた場所が良い。となると……あそこかなぁ。


 夕食を終えてから段々ミレナの期待が高まっていくこと以外は普通に過ぎてあっと言う間に翌日。大体は寝る前に練ってあるので特に問題は無い。ミレナが満足してくれるかどうかはまた別問題なんだが。




 それと今日は冒険者の正式・・登録をしようと思ってる。エルドル学園にいた時はね、仮のは発行されてたんだ。申請すれば誰でも出来るそうで二年目に申請してた。理由は一つ、国王への借金返済である。白金貨三十枚という額は返せない事は無いのだが(利子も無いしね)如何せん時間が掛かる。かなりの額なので当然ではあるが。なので、少しの足しになれば、という事だ。

 ステラたちも当然の様に仮冒険者証を発行したのだが、理由が分かっていたので一応言っておいた。

 『採取、または討伐した獲物においてはそれを獲得した者が得る。それ以外は譲渡であっても禁止』、と。

 明らかに全員が動揺していたので口を酸っぱくして言った。あと、国王の方にも手回しをして俺が直接渡す以外では受け取らない様に伝えた。それによって借金返済は全て俺のお金である。……いや、なんかさ他人に一部でも肩代わりして貰うのって罪悪感あるじゃん? それが自分を慕ってくれてるのなら余計に。

 ……まぁ、言ってしまえば見栄だよな。絶対にステラたちには言わないが。






 という訳でやって来ました冒険者ギルド。ここではこの二年間で色々と知り合いが増え、今は普通に挨拶とかしてるくらいだ。……最初の時でもバルガーに健闘した事で下に見られる事は無かったんだけどな。それ以上にステラたちに好奇の視線が行ったりしている。

 まぁ、それは置いといて。二年間お世話になっているレナさんの所へと向かう。何か受付嬢の中でレナさんが相手をする事になったらしい。詳しくは聞かない。聞いたら厄介事に繋がる未来しか見えないからね。誰が好き好んで首を突っ込みたがるものか。


「おはようございますレナさん」

「おはようユートくんにその恋人たち」


 最初の頃は全員が頬を染めながらくねくねしてたんだが、最近からは寧ろくっ付いて来る。主に男子から嫉妬の視線が来るが既にこの程度なら慣れたので無視。

 それでも居心地が悪い事に違いは無いので手短に要件を言う。


「今日はどんな御用かな?」

「ええ。冒険者登録をして欲しいと思いまして」

「あぁ、なるほどね。そう言えば卒業したんだっけ」


 レナさんは納得した様に手を叩いて席を外し、奥の方へと向かって行った。暫くすると戻って来た。手元にはドックタグの様な物と銀色のカードがそれぞれ四枚あった。


「皆は知ってると思うけど規則だから説明しとくね。まずは冒険者証。これが冒険者である証。それに各国各街で身分証の代わりになる。こっちはランクカード。自分がどんなクラスなのか、ランクなのか分かるしギルドへどれだけ預金しているかも分かる」


 簡単に説明して貰う。ちなみに冒険者証はクラスによって色や材質も違う。初心者なら白で皮、堅実で茶色で銅と言った感じに。あとは個人を確定させる為に血をそれぞれに一滴掛けたら終了だ。

 その代金としてレナさんは銀貨一枚を求めて来た。……あれ? 確か冒険者証を発行するには銀貨二枚が必要じゃなかったっけ?


「実はね、仮の証を学園に提出すると銀貨三枚と交換して貰えるの」


 あぁ、なるほど。つまりは持ちつ持たれつ、という事らしい。まぁ、確かにメリットはあるよな。学園にとっては生徒がある程度は成長しやすくなるし、ギルドにとっては単純に利益だ。結果的に生徒が強くなり、街を守ってくれたら良い訳だし。


 ドッグタグを首から下げ、ランクカードを見てみる。そこにはクラス:初心 ランク:Gとなっていた。







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