第34話 相談事

猫神さまの世界 第34話




朝食を終えると、すぐに家を出たのがロベリアさんとシャロンさんにシェーラさんの三人。

ロベリアさんは、冒険者ギルドの忙しさを軽減するために特に忙しい朝方と夕方を中心に出勤時間を決めているそうで、慌てて出て行った。


シャロンさんとシェーラさんは、運搬ギルドの常駐メンバーだそうで人手が足りない緊急依頼などを主にこなしているのだとか。

そのため、朝早くからギルドに詰めておくそうだ。


そして僕は、運搬ギルド員だけどまだ新人扱いなのでそんなに制約があるわけではないので、ゆっくりしている。



「僕ももう何年かすると、忙しくなるのかな?」


そんな小さな不安を胸に、食堂で寛いでいると食器洗いを終えた僕と同じ猫獣人のキュロが話しかけてきた。


「あのご主人様、ご相談したいことがあるのですが……」

「ん、何かなキュロ。 何か困っているの?」

「えっと、はい、困っています」


めずらしいな、いつもは黙々とアシュリーや皆の世話を焼いてメイドの鏡みたいな働き者のキュロが相談なんて……。


「わかった、僕で良ければ相談にのるよ?」

「あ、ありがとうございます……」


……何か話しにくそうに、もじもじしているな……。

あと周りを気にしているのか、キョロキョロもしている……。


「えっと、聞かれたらまずい話なの?」

「えっと、その、はい……」


どんな相談事か分からないけど、人の目を気にするなら僕の部屋がいいかな。


「それじゃあ、僕の部屋に行こうか?」

「気を使わせて、申し訳ございません」


そう言って謝ってきたけど、僕は気にしてないしキュロの力になりたいからね。

僕とキュロは、食堂を後にして僕の部屋へ行くことにした。



僕の部屋へ行く間、ずっと下を向いたままのキュロ。

かなり大切な相談事になりそうな予感がした。





僕の部屋につくと、部屋にある椅子にキュロを座らせる。そして、僕はテーブルをはさんでキュロの向かい側の椅子に座るとさっそく聞いてみた。


「それで、相談事というのは何かな?」

「……実は、朝食のおりロベリア様が話されていた話なのですが……」

「それって、王都から来た冒険者達が見目麗しい奴隷を探しているっていう?」


「はい」

「キュロは、その話が気になったの?」

「はい、その冒険者たちが探している奴隷に心当たりが……」


「……もしかして、アシュリーって思っていない?

確かにアシュリーは見目麗しい……かは人それぞれだけど、元貴族だからもしかしてと思うかもしれないけど、アシュリーが貴族だったのはだいぶ前のこと。

それに、アシュリーの家は借金で没落したらしいから今回の話とは関係ないと思うよ?」


「アシュリーさんが元貴族だったのは知っています。奴隷商で聞いたことありますから……。それに、爵位も男爵だったはずですから今回の件とは関係ないと分かっています。

私が相談したいのは別の方でして……」


アシュリーって元男爵だったんだ。そこから借金で没落って、いったいどれだけアシュリーの親は借金したんだろうか?

それにしても、キュロは本当に冒険者の探している人を知っているみたいだね。


「それで、キュロはその人をどうしたいの?」


「助けたいです! 私の恩人でもありますし今回の騒動が収まるまで身を隠せる場所があるなら匿ってさし上げたいです」


「……その口ぶりだと、冒険者たちが探している人の居場所を知っているんだね?」

「……はい、知っています」


キョロは俯いて、自分のメイド服のスカートを握りしめている。

何とか力になってあげたいけど、今の自分にはってところか……。


それにしても、匿う場所は問題ないけどその人を匿っているだけでは根本の問題は解決しないと思うんだよね。

ん~、王都に行ってみた方がいいのかな……。



「キュロ、匿う場所に関しては心当たりがあるけど?」

「ご主人様、助けていただけるんですか?!」


僕の言葉に勢いよく顔を上げて反応するキュロ。思いつめていたようで、少し涙を見せた。


「それは勿論、一緒に住むキュロのためにね?」

「あ、ありがとう、ございます……」


……何か言い方がおかしかったかな? キュロの顔が真っ赤になって俯いてしまった。

このままだと、話が進まないからこちらから聞いておくことにする。


「それで、今、その人はどこにいるの?」


僕の問いにキュロは少し考えて、顔を上げ僕をまっすぐに見る。


「今からついて来てもらえますか? ご案内します」

「この町にいるの?」

「はい、だからこそ冒険者たちがこの町で探しているのだと思います」


ということは、この町で目撃情報でもあったのかな?

……でも、奴隷ってことは首輪をしていたところを目撃されたのか?


「ならば、案内してくれキュロ。冒険者達より早くその人と会わないとね」

「ご主人様、よろしくお願いします……」



こうして、僕とキュロは屋敷を出て町へ向かった。

まだ見ぬ、保護してほしい見目麗しい奴隷のもとへ……。








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