第29話 家を贈られる
猫神さまの世界 第29話
二日後、盗賊討伐を終えて冒険者たちが帰ってきたそうだ。
奴隷商の馬車を襲った場所から少し離れたところで、盗賊団の見張りを発見。
その見張りを捕らえてアジトの場所を吐かせると、アジトまで連れて行った。
見張りを連れて一日歩いたところにあった盗賊のアジトを強襲。
油断していた盗賊団を見事全員捕らえたそうだ。
勿論全員殺さずに、とはいかなかったようで盗賊の何人かは死んでしまった。
冒険者たちの中には重傷者や死者はいないものの、無傷とはいかなかった。
その辺りは町に帰って来た時、冒険者ギルドのマスターからこっぴどく怒られていたようだ。
盗賊たちが奴隷たちや護衛などに同行していた女たちをさらわなかったように、アジトからは盗賊以外の人は見つからなかった。
その代わり、宝石やお金などの財宝はかなりの量がため込まれてあった。
盗賊たちの取り調べで明らかになったが、どうやら盗賊たちにはその手の伝手や知り合いがいなかっただけだった。
もし、伝手があれば女や奴隷を攫い売り飛ばすと息巻いていたそうだ。
盗賊を捕まえてから五日ほど厳しい取り調べの後、盗賊たちは全員縛り首にされ処刑された。
本来なら、公開処刑といきたかったのだが人さらいをした形跡がない事から公開処刑は中止とされた。
盗賊二十六人全員が処刑された日、冒険者たちはギリギリの判定で昇格したそうだ。
あと、襲われた奴隷商はこの町に到着すると、自分の商会の店を早速開いていた。
さらわれなかった奴隷たちも、治療が終わったものから奴隷商に渡され、今は店の専用部屋で休んでいるのだろう。
この町に買い手はいるのだろうか?
そんな報告をロベリアさんから聞いた翌日、僕に家が送られた。
▽ ▽
「ロベリアさん、これ………ですか?」
僕は目の前に立つ豪邸に驚いていた。
ダンジョンマスターの件で、橋渡しをしただけなのにこんな豪邸をもらってもいいのだろうか?
今日ロベリアさんが僕の泊まる宿に来て、お礼の家が用意できたと言って僕を連れだし町の一番はしの外壁近くに連れてこられた。
そして、目の前の豪邸を見せられて…。
『これが、冒険者ギルドのギルドマスターが用意したお礼の家よ』
と、言われたんだよね……。
町の一番端に建っているため、立地条件の問題から空き家となっていた豪邸を安く手に入れたギルドマスターが僕のお礼に使ったというわけだ。
「この豪邸をコテツ君の家にどうぞって、ギルドマスターから伝言をあずかってるわ」
「でも、この豪邸に僕一人って……」
「あれ、聞いてないの? この屋敷に住むのはコテツ君だけじゃないわよ」
「え、僕の他にも住む人がいるんですか?」
「そりゃあ、こんなに大きな豪邸にコテツ君一人じゃあかわいそうでしょ?
だから、私とシャロンとシェーラが一緒に住むことになっているわ」
僕は、ロベリアさんの顔を見るとしてやったりな顔をしている。
どうやら、ロベリアさんたちと暮らすことは決まっていたようだ……。
「コテツ君、私の荷物はすでに運び入れているからこの屋敷を管理できる人を探しましょうか?」
ロベリアさん、いつの間に自分の荷物を運び入れていたんですか?
「管理って、それよりもシャロンさんとシェーラさんには知らせてあるんですか?」
「シャロンとシェーラにはちゃんと知らせて、許可もとってあるわよ。
2人とも明日までに、引っ越ししてくる予定よ」
……これって、同棲っていうのかな?
なんか違う気がする……。
「それでどうする? メイドとか執事を雇うか、奴隷を購入するかだけど」
「執事さんやメイドさんを雇うといっても、支払う給料はどうするんです?」
「そうね、ギルドマスターも毎回の給料までは支払ってくれないでしょうね……。
それなら、奴隷を買いに行きましょう」
僕はロベリアさんと一緒に豪邸を出ると、町の奴隷商が集まる場所へ案内される。
奴隷商に行くの初めてだったんで、緊張しました。
「そういえば、奴隷を買うお金はどうするんですか?」
「それは、ギルドマスターが出してくれることになっているわよ。
勿論上限はあるけどね」
何から何まで、ギルドマスターさんありがとうございます。
このご恩は何かの形で返さないとね……。
ロベリアさんとロベリアさんおススメの奴隷商に向かっている時、ある奴隷商が気になりその店先で足を止める。
「ん? どうしたの、コテツ君」
「……なんか、この奴隷商が気になっちゃって」
「この奴隷商………ああ、このお店は例の盗賊に襲われた奴隷商よ。
もう店を開けているってことは、奴隷たちや商人たちの傷はたいしたことなかったみたいね」
……何だろう、何か気になることがあるような……。
こういう時は、直感に従った方がうまくいくんだよね。
「ロベリアさん、ここに入りましょう」
「ええ、この先なのよ? 私のおススメの奴隷商は……」
「でも、どうしてもこの奴隷商が気になるんです」
ロベリアさんが僕の目を見ている。
何だろう、わがままと思われたかな?
「……わかったわよ、あの家の主はコテツ君だものね。
コテツ君の家におく奴隷だから、コテツ君が選んだ奴隷にしましょうか」
「ありがとう、ロベリアさん」
こうして僕たちは、この運命の奴隷商に入っていった。
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