第25話 大変な提案
猫神さまの世界 第25話
創造神様と話をして戻ると、ダンジョンマスターの安西さんが起き上がった僕に頭を下げていた。
「あの、どうしたんですか?」
「神様すまない、俺はダンジョンマスターを続けようと思うんだ……」
「……いいんですか?」
僕の言葉に勢い良く頭を上げた安西さんが答える。
「ああ、俺は決めた、ダンジョンマスターとして生きていくと。
だから、神様に一つだけお願いがある」
「お願いですか?」
「冒険者ギルドの人との話し合いを行いたいから、その橋渡しをお願いできないか?」
ということは、安西さんは命を狙われる立場からダンジョン管理人になるつもりなのかな?
……そうだよね、子供がもうすぐ生まれるならそうするよね。
「わかりました、どこまでできるか分かりませんがお力になりましょう」
「ありがとう、神様!」
▽ ▽
安西さんと少し今後のダンジョンについて話し合ってから、僕は地上へ送ってもらった。
そして、ダンジョンから出るとそこにはシャロンさんとシェーラさん、さらにロベリアさんがいた。
「コテツ君!!」
最初に僕を見つけたのはシャロンさんだった。
シャロンさんが僕の名前を叫ぶと、シェーラさんとロベリアさんが僕を見つける。
そして、三人は一斉に僕に抱き着いた。
その勢いはすごくて、僕は三人に抱き着かれたまま後ろに倒れてしまった。
僕の無事を喜んで、安心して、今泣いてくれている三人の女性。
よく周りを見れば、たくさんの人が僕たちを見守ってくれていた。
この人たちは、僕の捜索隊か何かなんだろう。
シャロンさんたちが、これほどの人を動かしてくれたんだ……。
ありがたいな……。
「あー、そろそろいいか?」
中年の体格のいい男の人が、僕たちに声をかけてきた。
そのことに気づくと、シャロンさんたちは顔を赤くして僕から離れてくれた。
偉い人なのかな?
「すまんな、俺はブリードという冒険者ギルドでギルドマスターをしているものだ。
君がロベリアが騒いでいたコテツ君でいいのかな?」
「あ、はい。初めまして、コテツと言います」
「うむ、なかなか礼儀正しいな。
それで、コテツ君。今までどうしていたのか話してくれるか?」
そこで僕は、ダンジョンマスターに会ったことを話そうと安西さんと作っておいた話をすることにした。
「実は僕、さっきまでこのダンジョンのダンジョンマスターにお会いしていたんです」
「何、ダンジョンマスターだと?」
「コテツ君、それ本当なの?」
「はい、本当です」
僕以外の周りにいる人たちが全員驚いている。
ロベリアさんまで驚いているみたいだから、そうとうなんだろう。
「実は、今回僕たちが引っ掛かった罠である『階層落ち』は間違って作動したものらしいんです」
「……間違った?」
「はい、ダンジョンマスターが言うには、本来浅い階層で『階層落ち』などという凶悪な罠は仕掛けないとのことでした。
私の手違いであの場所に仕掛けてしまい、申し訳ないと謝っていましたから」
「ダ、ダンジョンマスターが謝っただと?!」
謝ったところに驚くのか……。
ダンジョンマスターって、本来どんな存在に位置付けているんだろう。
「それで階層落ちの罠で、僕が一番傷を負っていたとのことでダンジョンマスターのいる最下層に呼ばれて手当てを受けていました。
けっこういい人でしたよ、ダンジョンマスターさん」
「そ、そうか……それは貴重な体験だったな……」
何かギルドマスターや皆の顔が引きつっているような……。
「だけど、コテツ君が無事で本当に良かった……」
そういって再びシャロンさんが抱き着いてくる。
さらに負けじと、シェーラさんも抱き着いてきた。
「あ、そうだ。
ギルドマスター、ダンジョンマスターさんから伝言を頼まれたんですが……」
「伝言? 何かな?」
「『今回の事は申し訳ない、謝罪代わりに冒険者ギルド専用のダンジョンを用意したいんだがどうだろうか?
返事は、ダンジョンの一階に窓口を作っておいたからそこから頼む』
だ、そうです」
……辺りの音が消えたように静まり返った。
ギルドマスターも、驚きを通り越してあ然としているな……。
皆の思考が戻るまで、五分ほどかかった。
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