第24話 ダンジョンマスター

猫神さまの世界 第24話




「落ち着きました?」

「……すまない、地球の神様と知って取り乱してしまった」


さっきまで、僕に縋りついて泣いていた安西さんがようやく落ち着いてくれた。

話をするにも聞くにも、あのままではできなかったからね。


この空間にいる女性たち二人も、安西さんを心配しているようだ。

おそらく、彼女たちも初めて見たんだろう。

こんなに泣いている安西さんを見るのは……。


「それで、ダンジョンマスターになった経緯って分かりますか?」

「確かあれは………」



今から二年ほど前、安西さんは自宅で引きこもり生活を送っているといきなり白い空間に飛ばされ、黒い人型の何かにダンジョンマスターをしろと命令を受けて今いるこの空間に飛ばされたのだとか。


最初はこの空間とダンジョンマスターの説明書のみから始めたそうだ。


ダンジョンを造り、罠を仕掛けて地上にいる魔物をおびき寄せ、罠に嵌めてダンジョンの糧にする。

最初は魔物を呼ぶことすらできずに、ものすごく苦労したと泣きながら話してくれる。


それから、おびき寄せ倒した魔物をダンジョンの魔物にし、ダンジョンを拡張させ階層も深くなっていった。

しかしある時、冒険者がこのダンジョンを発見。


それからは、冒険者たちがたくさんダンジョン攻略のために押し寄せてくる。


安西さんは、さらにダンジョンを拡張しながら魔物を増やし罠をはっていった。

ダンジョンの運命なんて、その手の小説を読んでいた安西さんはよくわかっていた。


「だから俺は一心不乱にダンジョンを拡張していった……」

「あの女性たちはいつ安西さんとともに?」

「彼女たちは、一月前にダンジョン内で捨てられた奴隷だったんだ。

今は奴隷から解放して、俺の側についていてくれるんだよ」


「……頼られているってことですか?」

「というよりも、行く当てがないみたいだ。

地上には戻りたくないって、俺と一緒にいたいって言ってくれたし……」


そして、今に至るというわけですか……。

そのダンジョンマスターにした黒い人型って、神様の中にいたかな?

あとで創造神様に連絡を取ってみるか……。



「それで、安西さんはダンジョンマスターを辞めて日本に帰りたいんですね?」

「そうです、日々冒険者にいつ襲われるか考えると眠れなくて……。

ダンジョンマスターを討伐すると、莫大な報酬が出るとかで、こっちはたまったもんではないですよ」


また泣きそうな顔になっている、相当ストレスが溜まっているんだな……。


「でも、安西さんがダンジョンマスターを辞めて彼女たちはどうするんです?

奥にいる女性は、妊娠しているようですけど……」


安西さんはいきなり僕の肩に掴みかかると…。

「ほんとに、妊娠しているんですか?!」


僕はその迫力にタジタジになってしまった。


「え、ええ、あちらの女性は確かに妊娠していますよ。

鑑定して確かめましたから、間違いありません」


確認した安西さんは、すぐに妊娠している女性にダッシュで駆け寄るといきなり抱きしめた。


「て、てっちゃん? どうしたの急に……」

「テツヤ? いきなりニーナを抱きしめて、お前は何がしたいんだ?」


妊娠している女性は、ニーナさんというのか。

僕の鑑定は、名前は表示されずに種族とか状態とかが最初表示されるから使いにくいんだよね……。

今度創造神様に、相談してみよう。


いきなり抱きしめて、泣き出した安西さん。

抱きしめられて困惑していたけど、安西さんが泣きだすとあやし始めた。

もう1人の女性は、呆れているようだが笑顔だな……。


「リブ、ニーナが妊娠しているそうだ……」

「何っ! そうなのかニーナ、妊娠していたのか?」

「え、どうしてそれを……内緒にしてたのに……」



三人の世界が構築されたようだ……。

あそこだけ、この世界と色が違うな………。

しばらく、放置しておきましょう。


今のうちに、創造神様に連絡を……。


僕は片膝をついて、創造神様に祈りをささげる。


「創造神様、創造神様………」




▽    ▽




『もう目を開けてもいいよコテツ君、私を呼んだかい?』


そこは僕が最初に尋ねた白い空間。

ここで、異世界へ降りて調査をお願いされたんだよね……。


「お久しぶりです創造神様、実はご相談したいことができたんですが」

『ああ、分かってるよ。

あのダンジョンマスターの地球人のことなんだよね?』


「はい、彼は無理やりダンジョンマスターにされて地球に帰りたがっているみたいなんですが……」

『状況が変わって帰りたがるか分からなくなっているね~』


「でも、黒い人型の神がダンジョンマスターにしたとあるんですが、そんな神様がいるんですか?」

『いるよ。それはダンジョン神で間違いないだろうけど無理やりっていうのが引っ掛かるな……』


「普通は無理やりにダンジョンマスターにはしないと?」

『何でもそうだよ、神は無理強いはまずしない。

したとすればよっぽどの何か理由があったんだろうね……。

まあ、後でダンジョン神に確認しておくよ』


「よろしくお願いします」


『それで、コテツ君は彼らをどうするつもりだい?』

「僕としては、安西さんがどう変わるかによりますね。

それによっては、創造神様にまた相談に来ますよ」


創造神様は、ため息を吐くと…。


『これは、待つしかないか……』








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