第22話 ダンジョンの罠
猫神さまの世界 第22話
『鳳凰騎士団』という冒険者パーティーに荷物持ちとして指名依頼を受けて、僕は最近発見されたダンジョンに来ていた。
運搬ギルドから荷物持ちとして一緒にいるのが、ジャック、ケイニーと僕の三人。
僕たちの前を軽快に歩いている冒険者たち七人は、何れも戦闘慣れしていた。
『鳳凰騎士団』は前衛に盾持ちの戦士を二人置き、遊撃の槍使い、斥候のシーフ、後方からの弓使いに、魔術師と魔法使いの二人が後方を担当している。
回復役はいないのかと思うが、魔術師と魔法使いが治癒も使えるので必要ないそうだ。
ダンジョンを進んでいる時、ジャックが魔法使いの人にいろいろ質問していた時に聞こえてきた。
ダンジョンに潜って三時間が経ったころ、ようやく休憩を取ってくれた。
そばで息も絶え絶えで休憩を取るケイニーが…。
「はぁ、はぁ、これはハズレ、パーティーかも……」
「ケイニーさん、大丈夫ですか? 水をしっかり飲んだ方が良いですよ」
「……ケイニー、ハズレってどういうことだ?」
ダンジョンの魔物が出ない部屋で、鳳凰騎士団から少し離れたところで休憩を取る僕たち。
そのため、ケイニーさんが不満を僕たちに話してくれた。
「ハズレってのは、貴族のパーティーってことですよ。
たまに、冒険者パーティーの中に貴族が仕切っているパーティーがあるんですよ」
「それが、ハズレなんですか?」
「そうなんだよコテツ君。
前貴族のパーティーの荷物持ちをした友達が、大変な目にあったって愚痴をこぼしてました。
何でも、貴族は他の人のことを考えないから休憩をなかなかとらない、戦えない荷物持ちに文句を言う、報酬をケチるなどなど、二度と貴族パーティーの荷物持ちはしたくないって」
「なるほど、冒険者になる貴族は大概三男以下の家の爵位継承とは関係ないものたちだからな……」
「貴族って、大変なんですね~」
「大変なのは、コテツ君ですよ?」
「え、僕ですか?」
「そうだな、貴族は獣人を嫌っているからな。
今回のパーティーが貴族のって言うなら、これから一番苦労することになるぞ?」
「そ、それは……」
「大丈夫だ、俺たちがなんとかフォローに回るからな」
「そうです、シャロンさんたちからも頼まれていますしね」
「よ、よろしくお願いします」
僕が二人に感謝とともにお願いしたところで、再び出発となった。
戦いは冒険者パーティーに任せっきりなのに、ダンジョン内を歩いて移動しているだけで疲れてくる。
倒した魔物の素材や隠し通路の先にあった宝物など、僕たちに持たされる荷物が多くなりいったん地上に戻ることになった。
「オーバンス様、何時奴に仕掛けますか?」
「……そういえば、あの獣人を奴隷にしてリーマ様にお届けするんでしたね」
「……もしかして、忘れていたんですか?」
「いや~、思いのほかダンジョンの戦闘が楽しくてね」
ダンジョンで日頃のストレスを解消して目的を忘れていたオーバンスに呆れる仲間たち。
だが、このおかげでコテツは何ごともなく荷物持ちをしていられたのだった。
「目的を忘れてどうするんですか、オーバンス様」
「いや、すまない。
だがこの荷物だ、いったん地上に戻って再びダンジョンに潜って仕掛けるか」
「……そうするしかないですね」
サクサクと進んだ十八階層から地上を目指すパーティー。
このダンジョンは発見されたばかりということもあり、地上への転送魔法陣もまだ魔術師ギルドによってつけられていないため、こうして来た道を戻るしかないのだ。
来た道を戻るということは、当然敵にも遭遇するということ。
再び荷物持ちの荷物が増えたことは、皮肉としか言えないだろう。
そして、斥候のシーフがある隠し部屋を見つけた。
「オーバンス様、ここに隠し部屋がありますよ?」
「隠し部屋か……」
オーバンスは発見された隠し部屋に戸惑っていた。
躊躇するオーバンスに不安がよぎる仲間たち。
「オーバンス様、どうかされたのですか?」
「……あれを見てみろ」
オーバンスが指さして先、そこには行きで見つけた隠し部屋の入り口が開けられたまま残っていた。
「あれは、来るときに見つけた隠し部屋でしたね」
「そうだ、そしてここが帰るときに見つけた隠し部屋への入り口……」
「……あれ?」
「おい、何が問題なのか俺にはさっぱりだぞ?」
「ったく戦士のお前は脳筋か?
いいか、来るときに見つけた入り口とさっき見つけた入り口の位置を考えろ」
戦士をはじめ、荷物持ちのコテツ達も隠し部屋の入り口を見つめる。
すると、その違和感に気づいた。
今いるこの場所は二手に道が分かれている場所、右へ行く道の左側の壁にあるのが来るときに見つけた隠し扉の入り口。
そして、帰り道で見つけた隠し扉の入り口は左へ行く道の右側の壁にある。
来るときに見つけた隠し扉の先は、少し長い真っすぐな通路で行き止まりに宝箱があった。
帰りに見つけた隠し扉の先もまた、まっすぐな通路になっている。
「……交差してない?」
「だな、物理的に交差するはずの隠し通路が交差してないってことは……」
「罠、なんだろうな……」
コテツ達荷物持ち組が気付いて、ようやく脳筋組も気づいた。
「何だこれ、気持ち悪いな……」
「どうします? この隠し通路を進んでみます?」
「……ここは俺に任せてください」
オーバンスが答える前に、斥候のシーフが罠を解除してみると前に出てきた。
「お前なら解除できると信じているぞ、やってみろ」
「はい、オーバンス様」
シーフは懐から罠解除のための道具を取り出し、隠し扉を一歩中へ入る。
すると、カチッという音とともに鳳凰騎士団と荷物持ちの足元の地面が消えた!
いきなりのことで、何の行動もとれずに全員が下層へ落された。
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