第15話 ドワーフとの雑談
猫神さまの世界 第15話
次の日、僕たちは夜が明けるとすぐに町へ向けて出発した。
昨日の話で、ココル村のグリフィン商会の施設を狙った強盗ではという結論に至ったものの、今一つ確証がない。
そのため、ドラゴン出現のことも考慮に入れて報告と対処をすることにしたようだ。
ココル村の村長がそう決めたのなら、僕たちはそれで納得するしかない。
町に帰ってくると、すぐにココル村の村長とは別れることに。
「皆様、ここまでの道中、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそ。
それよりも、村長さんたちココル村のこれからに幸ある事をお祈りしています」
「ココル村長、これから大変だけど頑張ってね」
シェーラさんは、ココル村長に何も言えず頭を下げるだけだった。
「では、失礼します」
そういうと、ココル村長は急いで町の中へ走って行く。
その姿を見送ると、僕たちは依頼者のもとへ歩いて行った。
▽ ▽
僕たちは運搬ギルドに依頼を出した、木工屋の店に来た。
ここは、通りから少し離れたところにあり店というより作業場といった方がしっくりくる。
どうやら、ここは家具などの注文を受けて作り、注文を受けた家具屋などのお店に納品しているようだ。
「こんにちは、運搬ギルドに出された依頼品を運んできました!」
作業場の入り口で声をかけると、中からドワーフの男が出てきた。
「おう、待っていたぞ! こっちに来てくれ」
そう言って案内されたのは、作業場の裏手にある材木置き場だ。
ここには大きな丸太が何本か積まれていたが、二か所ある置き場の片方には丸太がなかった。
「こっちの何も置いていない方に積み上げてくれ」
「わかりました」
まず、シャロンさんとシェーラさんが慣れた手つきで丸太を収納リュックから取り出し、どんどん積み上げていく。
「シャロンとシェーラには、いつもこの依頼を受けてもらうが坊主は初めてだな」
「あ、はい、僕はコテツといいます」
「俺はグスタっていうドワーフの木工師だ。
この依頼は、定期的に出しているから気が向いたら受けてくれ」
「はい、ありがとうございます」
「コテツ君、私たちは終わったわよ」
「はい、今行きます」
僕はシャロンさんと交代して、丸太置き場に行き空間収納に納めてある丸太10本をシェーラさんの指示のもと積み上げていく。
「それにしてもシャロン、良い子が運搬ギルドに入ったじゃねぇか?」
「でしょ? コテツ君は素直だし可愛いし、それに空間魔法持ちだから運搬ギルドは天職ね」
「ほう、空間魔法とはすごいな! 他の魔法も使えるのか?」
シャロンは少し困った顔になる。
「それが、空間魔法以外はダメらしいわね」
「そうか……。 獣人は魔法が苦手というが本当なんだな」
「そういえばコテツ君、魔法が使えないことを気にしてたわね……」
「そういう時は気遣ってやれよ?
コテツは大丈夫だと思うが、男は細かいこと気にする奴が多いからな」
「あら、グスタもそうなの?」
「俺は酒があれば、細かいことはどうでもいい。
ただ、仕事で手を抜くことはしねぇがな!」
「ドワーフは酒好きが多いわねぇ~」
シャロンは、酒の話となると止まらないグスタを見て呆れている。
「おお、そうだシャロン、ランガン村で何かあったのか?」
「え? 何かって?」
シャロンさんは、グスタさんの突然の質問に少し驚いた。
「いや、シャロン達が依頼を引き受けてくれたにしては、いつもより早かったなと思ってな?」
「そういえば、いつもならランガン村でゆっくりしてから帰ってきてたわね」
「おいおい……」
「ああ、それはココル村に繋がる街道脇の森でドラゴンが目撃されたそうで……」
ランガン村のことを話していた会話に、僕は加わってみた。
「ドラゴンって、それってココル村付近の話じゃねぇか。
俺はランガン村から帰ってくるのがな……」
「違うわよグスタ、そのココル村の避難先がランガン村なの。
私たち、ちょうどココル村の人たちをランガン村に避難させるところに出くわしたのよ」
「……なるほど、それで手伝いってわけか?」
「はい、ココル村に行くときもランガン村に帰ってくるときも、ドラゴンには会わなかったんですがココル村の村長をこの町に送って行くことにもなりまして……」
「なるほどなるほど、それでいつもより早かったと……」
僕は困った顔をしながら、何かまずかったかなと聞いてみる。
「あの、早かったらいけませんか?」
「そんなこたぁねぇよ、今回の依頼のような材料の運搬は早いほど良かったりするからな」
そう言いながら、グスタさんは僕の頭を撫でてくれた。
……ドワーフの手って大きいんだな。
「それでシャロン、ココル村の村長はこの町で何すんだ?」
「まずは領主への報告、それから冒険者ギルドへ緊急の報告でしょうね」
「う~む、それを受けて冒険者ギルドが調べ始めるってわけか……。
ならその間のココル村の人たちは、ランガン村に世話になるしかねぇか」
「避難したココル村の人たちのことは領主が何とかするわよ。
問題は、ドラゴンの方ね」
そこへシェーラさんが、丸太をしっかりと固定して戻ってきた。
「お待たせ、いつも通りしっかりと固定しておいたわよ」
「おお、ご苦労さん。
報酬はいつものように、ギルドで受け取ってくれ。
それで、今後はどうなると思うんだ?」
シェーラさんが首を傾げているので、僕が話した。
「シェーラさん、ココル村のドラゴンのことですよ」
「ああ、どうにもならないでしょ?
ドラゴンがいるにしろ、どこかに行ってしまうにしろ、安全宣言が出ない限りココル村には帰れないんだから……」
「そうだな……」
シェーラさんの意見で、みんなの気持ちが下がってしまった。
「これから、ココル村の人たちは大変だろうな……」
グスタさんがとくに落ち込んでしまったようだ。
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