第14話 ココル村の秘密

猫神さまの世界 第14話




ココル村からの避難は何ごともなくランガン村に到着出来た。

ランガン村では、残しておいた兵士の1人が村の人たちに説明しており、避難してきたココル村の人たちを温かく迎え入れてくれる。


「どうやらドラゴンには発見されずに、避難できたようですね」


ココル村の村長は無事に避難できたことに安堵する。


「ですが村長、ココル村はこれからどうなるんでしょうか?」


ココル村の村民の1人が、村長に不安を言うと他の村民も口々に不安を周りの人たちと話し出した。


「ドラゴンが村の近くに出るなんてな……」

「そういえば、森がざわついていた感じがしたわね……」

「これから畑に種をまく予定だったんだが……」

「これからどうなるの……」


ココル村の人たちが話し出し、辺りがうるさくなった時ココル村の村長が言う。


「皆さん、とりあえず今日はランガン村の人たちが泊まれる場所を用意してくれていますから、そこで休みましょう。

ドラゴンのことは私が町へ行って、領主様に報告してきます」


「……そうだな、町の領主様に報告すれば対策を検討してくれるし、その間に冒険者ギルドと相談すれば偵察ぐらいしてくれるはずだ」


ランガン村の村長が、ココル村の村長の意見に賛同した。


ココル村の人たちはそれならと、少しだけ安心するとランガン村の人たちが用意してくれた泊まれる場所に案内されて行った。



そしてこの場に残ったのは、僕とシャロンさんとシェーラさん、ココル村長、ランガン村長、行商人の商人さんと御者の人の7人だ。


「それでココル村長、これから町へ行くのか?」


「ええ、馬をお借りできればいいんですが……」


そう言って、頼むようにランガン村長を見るが…。


「すまねえな、この村の馬は今は貸せねぇんだ。

もうじき種まきをするから、畑を耕すために使っているからな……」


「いえ、それなら歩いて行きますから大丈夫です」



「それなら、私たちと一緒に行かない? 私たちも町に帰るところだし」


そこに、シャロンさんが提案してくる。


「えっと、あなたたちは?」


「私たちは運搬ギルドの者よ。

このランガン村に依頼で来たんだけど、ココル村が困っているっていうので手伝いに行ったんだけど、時間が無くて何もできなかったわね……」


シャロンさんが頭を下げると、ココル村長は少し慌てた。


「いえいえとんでもない、助けに来てくれてありがとうございます。

町へ帰られるなら、ご一緒して構いませんか?」


「ええ、護衛くらいになるわよ」


ココル村長とシャロンさんが、握手する。



「連れができたなら安心だ。

そうだ、ついでに行商人のあんたたちもいっしょに町に行ってはどうだ?」


行商人はランガン村長の提案に、少し考えると…。


「そうですね、クルトはどうします?

私は、馬車の商品が心配ですからここに残りたいですけど……」


クルトって言うんだな、あの御者の人。


「私も旦那様と一緒で、ここに残った方がいいと思います」


「というわけだから、私たちはこの村に残らせてもらいたいです」


ランガン村長は、その答えに頷き、ではこちらへと村の中へ案内していった。

それを見送る、ココル村長を加えた僕たち四人。



「では、行きましょうか」

ココル村長に促されて、僕たちはランガン村を出て町へ向かった。





▽    ▽    ▽





町に向かう道中で日が暮れたため、夜営をして明日に備えていたのだが、火を囲んで雑談をしている時ふとシェーラさんが疑問をなげかけた。


「そういえば、ドラゴンって本当に黒いドラゴンだったのかな?」


「どうしたのシェーラ、御者の人が言ってたじゃない黒いドラゴンを見たって」


「でもさ、ドラゴンって見間違える色もあるよね?」


「そうですね、『紅』と『赤』は見間違えることがあると聞いたことありますね」


「ああ、後『蒼』と『青』もそうね。

呼び方も同じように呼んで、間違えるときがあるとか」


「でも、黒は流石に見間違いはないでしょう」


「そうねぇ、私も見間違えないと思うわよ」


「それなら、見た人に間違いないか聞いてみたらどうです?」


「ああ、それはいいですね。ランガン村に帰ったら御者の人に聞いてみましょう」



一時の沈黙の後、シャロンさんがココル村長に質問する。


「ちょっと待って、黒いドラゴンを目撃したのは御者の人だけなの?」


「はい、行商人さんは御者の人に聞いて急いでココル村に知らせに来てくれましたから見ていないと思います」


「その後も避難するまで、確認はしていない……?」


「……そういえば、焦っていてしていませんでした」


たき火を囲み、四人で話し合っていると雲行きがおかしくなってきた。



「ねぇ、ココル村に何かすごいお宝ってあるの?」


「シェーラ、ココル村はちょっと見ただけだけど普通の村に見えたわよ?」


「……あの、このことは内密にしていただきたいのですが…」


ココル村長さんが、真剣にぼくたちにお願いしてくる。


「私たちは他人の秘密をべらべらとしゃべらないわよ?

特に運搬ギルドんものなら、なおさらよ」


「そういえば、運搬ギルドでは秘密の運搬依頼があるとか?」


「まあね、依頼人には貴族様とかもいるからね……」


「……これは本当に内密にしてもらいたいのですが、ココル村には後ろ盾になってくれる商人様がいます。

王都で有名な『グリフィン商会』というところです」



シャロンさんとシェーラさんが固まってしまった。

僕は商会とか王都とか詳しくないから分からなかったが、シャロンさんとシェーラさんの態度を見てとんでもない商会なんだなと認識した。


「グ、グリフィン商会とは、すごい大物が出てきたわね……」


「グリフィン商会の商会長の息子さんのところに、ココル村出身の女性が嫁に行っている縁で良くしてもらっているんですよ」


「……それで、グリフィン商会がどうしたの?」


「で、グリフィン商会の宝石を扱う部門の仕事場がココル村にあるんです……」


「………」


「………」


「……決まりね、狙いはココル村にあるグリフィン商会の宝石部門の仕事場。

おそらく、仕事場に置かれている宝石類が狙いの虚偽避難で間違いないでしょう……」


「でも、一応冒険者ギルドや領主にはドラゴンが出たと報告はしておきます。

それと、グリフィン商会にも報告をしておきます……」


「そうね、グリフィン商会も動くでしょうしココル村の今後がどうなるか……」


「それは心配ないと思います。ココル村の村民は、グリフィン商会のことは知りませんから……」


「だとすると、どこからココル村の秘密が漏れたのでしょうか?」


僕たちは、眠れない夜を過ごすことになった……。







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