第11話 村の入り口

猫神さまの世界 第11話




ランガン村に依頼の木を受け取りに、今僕たちは村への道を歩いています。


こういう時、村へ馬車で行かないのか?といわれそうだが、実際は行かない。

馬車を使うのは町から町への場合のみで、町から村へ行くとき馬車を使うのは行商人くらいだ。


なぜなら、馬車を使う場合は護衛を雇わなくてはいけないからだ。

何でも、王国法でそう決まっているらしく護衛を雇っていない馬車は、町から出るときに門の検査で引き返されるとか。



それにこの異世界での村は閉鎖的で、何でも村だけで済ませてしまおうとするそうだ。

足りないものや村では手に入らないのもだけ、行商人を通じて手に入れるそうで、基本、村人たちは村を出て行かない。


だから、今回の依頼が運搬ギルドに出されたのだそうだ。


と、シャロンさんとシェーラさんと一緒に歩きながら聞いてみた。

そう言えば、盗賊も町から町への街道によく出るらしいが、町から村への街道にはめったに出ないんだとか。


ホント、二人とも物知りだ。




▽    ▽




「コテツ君、今日はこの辺りで野営しましょうか」


村への街道を歩いて昼が少し過ぎたころ、シャロンさんから声をかけられた。


「まだお昼を過ぎてから少ししかたっていませんが、もう野営の準備を?」


「そうよ、日が沈む夕方になって野営の準備をしていたら、すぐに夜になってしまうわよ」


鞄から組み立てるテントの一式を取り出しながら、シェーラさんに注意される。


「さあコテツ君、テントを組み立てるから手伝って?」

「は、はい」


「それじゃあ私は、竈を作っておくわね」


シャロンさんはそういうと、鞄から白い箱のようなものを取り出した。

僕がテントの設営そっちのけで、興味津々で見ていると…。


「コテツ君、これが気になるの?」


「はい、その白い箱は何ですか?」


「これはね、竈を作るための魔道具よ。

こうやって……この白い枠に土を入れるの……。

そして、枠についている『魔石』に魔力を注ぐと………はい、簡易煉瓦の完成」


白い枠から、煉瓦のブロックが1つ出てきた。

どうやら、この白い枠にそって土を入れて、枠につけてある魔石に魔力を注ぐと、ただの土が煉瓦のように固まってしまう魔道具だ。


できた土の煉瓦は、耐久性、硬さ、ともに竈に使って問題ないもののようだ。

で、この煉瓦、シャロンさんの話だと二日ほどで元の土に帰るらしい。


……なるほど、魔力で煉瓦のように火に強く硬いものにしてあるのか。

そして、魔力は二日ほどで抜けて、元にの土に戻る。


僕は初めて見る魔道具に、目を輝かせて見入っていたらしい。

……この後、テントの設営をしていたシェーラさんに怒られてしまった。



「も~、コテツ君。

引き受けたことはちゃんと最後まで責任もって引き受けること、いい?」

「ゴメンなさい……」


失敗してしまいました。

でも、この設営したテント、電話ボックス程度の大きさしかありませんよ?


「あの、このテント、小さくありませんか?」


そう僕が質問すると、シェーラさんとシャロンさんは笑顔で答えてくれました。


「それは、中に入ってみればわかるわよ」


僕は不思議に思いながら、設営されたテントの中へ。

すると、テントの中は10畳はあろうかという広さで、ベッドが3つ設置されてました。

テントの中で、周りを見ながら驚いている僕に二人が声をかけてくれました。


「どう? このテントは空間魔法の魔道具が設置されていてね?

外見と中身の広さが違っているのよ」


「小さい方が持ち運びにかさばらないし、軽いからね」



どうやら、この異世界も地球と同じように便利になっているようです。


「それじゃあ、夕食の準備に取り掛かりましょう」

「はい」





▽    ▽




次の日、夜営を終えた僕たちは再び村へと歩き出しました。


道中、魔物が街道に出てくることなく盗賊も現れることなく安全に村に到着することができました。

……テンプレって、実際は早々起きるものではないんだね。



「ようこそ、ランガン村へ」


村の入り口には、兵士の詰所のような小屋があり二人の兵士がいた。


「シャロンさん、この人たちは兵士さんなのですか?」


「おお、君は村に来るのは初めてか?」


シャロンさんが答える前に、青年の兵士が僕に興味を持ったようです。


「は、はい。町から出たことないので……」


「それなら知らないのかもな。

俺たちは兵士というより、村の自警団員ってところだな」


「自警団員、ですか?」


ニカッと笑う、自警団の青年。

金属の鎧は胸の部分と盾を持つ左腕だけで、あとは革でできているようだ。

盾は金属と木でできていて、背中に装備していた。


剣というには少し小さい剣を腰に装着し、自分の身長と同じくらいの槍をもって村の入り口に立っている。


……なんか、かっこいいな。



「コテツ君、ほとんどの村にはこの自警団があってそれぞれで村を守っているんだよ。

特に、魔物からね」


「へぇ~」


シャロンさんの話に感心していると、青年が僕の頭に手を置いてガシガシと荒っぽくいじる。

……たぶん、青年なりに撫でてくれたのだろう。


「坊主、早く大人になってお姉ちゃんたちを守れるようになれよ!?」


僕は、青年がいじった自分の髪を直しながら…。


「あの、僕これでも15歳なんですけど……」


すると、僕の年齢を聞いた青年や青年の後ろで僕たちのやり取りを眺めていたもう1人の兵士、さらにシャロンさんやシェーラさんまでもが驚いて声を上げている。



「何っ!」

「嘘?!」


「コテツ君、15歳だったの?!」

「私と2つしか違わないじゃない!」


……これは、僕の身長が原因かもしれないな。

猫獣人のこの体の身長は150センチメートルほど……。


今まで失礼に当たるかもと思って、あえて言わなかったが、これまであってきた人のほとんどを僕は見上げていたのだ。


もしかして、猫獣人って種族の中で身長が低いのかな………?




とにかく、村の入り口でおしゃべりしてないで村の中に入ろう!


「あの、村に入ってもいいですか?」


「ああ、そうだったな。 そういえば、驚いてすっかり忘れていたよ」


青年の言葉に、僕以外の人全員が苦笑いをしている。


「村に入る前に、この村に来た理由を聞いてもいいか?」


「ええ、この村には町の木工師の依頼で木を受け取りに来たのよ」


シャロンさんが質問に答える。

すると、青年の後ろにいたもう1人の自警団員の青年が声を出した。


「ああ、ブローさんが切り出した木を受け取りに来たのか。

ということは、三人とも運搬ギルドの人ってことか」


「ええ、そうよ」



僕の前にいる青年が顎に手をやり…。

「そういえば、ブローさんが今日あたり運搬ギルドの者が来るじゃろうからって言ってたな…」


「その運搬ギルドの者が、私たちよ」


「……う~ん、あんたらとても力があるようには見えねぇが……」


シャロンさんは呆れながら、答える。

「運搬ギルドのものは、アイテムボックスみたいなスキルを持っているのよ?」


「あ、そうか!

何も持って運ばなくてもいいわけか……」


後ろの青年が申し訳なさそうに謝ってくる。

「すまないな、村で暮らしているとアイテムボックスみたいなスキル持ちはいないんでな……」


「別に、かまわないわよ」


「まあ、何しに来たかは分かったし。

改めて、ようこそ! ランガン村へ!」


青年はたぶん今日一番いい笑顔で、挨拶してくれた。







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