第10話 僕、使えませんでした
猫神さまの世界 第10話
この一月、僕はロベリアさんたちの伝手を使っていろいろな仕事を体験してみました。
まずはこの世界の仕事について、図書館で調べてみたんだけど地球にある仕事とあまり変わらないことが分かった。
勿論、科学と魔法の違いはあるものの基本は変わらないようだ。
まあ、人が想像する仕事はそう変わらないのだろう。
基本、人の生活を便利に豊かにすることになるのだから……。
まずは、ロベリアさんが務める冒険者ギルドで働いてみることにしました。
冒険者として依頼を受けて、とやりたいところだが、今の僕は戦う術を知りません。
魔物や野生の動物とも戦うことができない状態。
「コテツ君、魔法を覚えてできることを増やしてみない?」
日本でいうところの、資格を取ってできることを増やせということだ。
だけど、とんでもないことが発覚した。
「……僕、魔法が使えないんですか?」
「えっと、使えないってわけじゃないのよ?
獣人は魔法器官がないってだけで、魔道具とかは使えるわけだし……」
魔法器官とは、体内で操った魔力を体外へ送り出す器官で獣人はこの器官を生まれつき持っていないらしい。
地球では魔法の神だったのに、この世界ではその魔法が使えないとは……。
落ち込む僕を励ましてくれるロベリアさん。
「で、でも、コテツ君は生まれつき空間魔法だけは使えるんだし、その魔法を活かす仕事につけばいいんじゃないの?」
「そ、そうですね……」
でもロベリアさん、不思議に思っているみたい。
空間魔法が使えるのに、なぜ、他の魔法が使えないのかと。
……それは、この世界の神さまに使えるようにしてもらったからなんですけどね。
とりあえず、僕に冒険者は向いていないようだ。
次にロベリアさんの伝手で働いてみたのは、運搬ギルドだ。
この運搬ギルドでは、アイテムボックス持ちや空間収納が使える人を優先的に雇っている。
また、三人一組で仕事をするため戦闘技術が無くても大丈夫とのこと。
さっそくギルドに登録をして、僕と組んでくれる人を紹介してもらった。
「私はシャロン、でこっちが妹のシェーラよ」
「シェーラです、これからよろしく」
「僕はコテツといいます、これからよろしくお願いします」
シャロンさんとシェーラさんが、僕をじっと見つめる。
「……あの、何か?」
特にシャロンさんは、僕の全身をジロジロと見つめている。
「あ、あの?」
「コテツ君」
「はい、なんですか?シャロンさん」
「コテツ君は、空間魔法が使えるって紹介されたんだけどホントに?」
「はい、僕は生まれつき空間魔法が使えるんです」
「ゴメンねコテツ君。 お姉ちゃん、獣人は魔法が使えないってのはよく知られたことだけど、でも正確じゃないのはわかっているでしょ?」
「うう、そうだよね。ごめんねコテツ君、疑ったりして……」
シェーラさんに注意されて、シャロンさんが頭を下げて謝ってくれた。
「いえ、魔法が使えないのは確かですし、気にしてませんから」
「ありがとう」
「ただ、その正確じゃないってのはどういう意味ですか?」
シェーラさんが言った言葉が気になって、僕は聞いてみた。
「ああ、それはね?
基本、獣人が魔法を使うことは魔道具を使わないと出来ないの。
そんな魔法が使えない獣人も、生まれつき持っていた魔法スキルは使えるって話よ。
ただ、生まれつき魔法が使える獣人も後になって他の魔法が使えたという話は聞かないから、獣人が使える魔法って『奇跡』の1つなのかもね」
「……獣人って、魔法に嫌われてるんですかね?」
「フフ、コテツ君は生まれつき使える魔法があるんだから嫌われてないよ」
そう言って僕の頭を撫でてくれるシェーラさん。
それを横で見ていたシャロンさんが、羨ましそうに見つめていました。
さて、僕たち三人で組んで最初の依頼は、町の木工屋さんの依頼でした。
このルビリストの町から1日離れた場所にある村に、木工に使う木を受け取って運んできてほしいとのこと。
運ぶ数は、長さ10メートル直径30センチの丸太20本。
期間は5日。
依頼を受けた僕たちは、さっそく町を出て村へ行きま…………。
「ちょっと待った、コテツ君」
…せんでした。
何か忘れていたようで、シャロンさんに止められました。
「……もしかしてコテツ君は、町の外に出る仕事は初めて?」
「はい、何かしくじりましたか?」
シャロンさんとシェーラさんは、僕を見て苦笑いです。
「いいかな?コテツ君。
こういう町の外に出る依頼の時は、それ相応の準備が必要なんだよ?」
「まずは野営のための準備。
これは私たちがテントをはじめとした野営の道具を持っているから、一緒に使えばいいわね。
でも、次からは別の人と組むこともあるから自分の分くらいは用意すること」
「わかりました」
そうか、夜営の準備を忘れていたな……。
僕は空間魔法の『箱庭』が使えるから、夜営ってしたことなかったよ。
「次は食料の準備だよ?
今回の依頼は、1日かかる村まで行くから往復の2日分の食料は用意しておきましょう。
特に、空間魔法やアイテムボックスが使える人は、倍の量を要求する人もいるから気をつけてね?」
「は、はい」
依頼品以外に、仲間の道具や食料も収納しないといけないのか。
でも、シャロンさんたちはテントとか野営の道具を持っているようには見えないな。
もしかして、空間魔法かアイテムボックス持ちなのかな?
そんな疑問を僕は顔に出していたのか、シャロンさんが答えてくれた。
「もしかしてコテツ君、私たちの荷物が少なくて不思議に思ってる?」
「は、はい。 野営の道具とかどこにあるのかなって……」
シャロンさんとシェーラさんはお互いを見合って、笑い出した。
「フフフ、私たちは空間魔法もアイテムボックスも持ってないわよ」
「うんうん、私たちはね、このカバンに荷物を入れているの」
そういうと、今まで背負っていたリュックを僕に見せてくれる。
「……もしかして、その鞄は」
「そうよ、これが魔道具の1つ『無限収納鞄』というより『無限収納リュック』ね」
へぇ~、図書館の本にそのような鞄が作られていると書いてあったけどこれが実際のものか……。
「これ結構高かったのよ?」
「金貨20枚よ、20枚。 ホント、魔道具って便利なものが多いけど高いよね~」
このリュックに、シャロンさんたちの必要な荷物は全部収納しているのか。
「さて、それじゃあコテツ君。
食料を仕入れて、依頼目的の村へ出発しましょう」
「はい!」
こうしていろいろと教えてもらいながら、仕事を覚えていくんだな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます