第1話

真夏日。

古い日本家屋独特のすきま風が涼しく吹き付ける。

外の日差しに当たれば暑くてめまいがするのだろうが、家の中は日陰で、風もあるお陰か不思議と爽やかなものだ。

縁側から見える庭には、強い日差しで青々と元気そうな草達が、さっきやった水で輝いている。

ついさっき昼を食べたばかりだし、風が気持ちよく眠ってしまいそうで。

妻は台所で洗い物をしている。

水の音が気持ちいい。

「食べてすぐ横になったら牛になるよ」

重い瞼をうっすら開けると、一番上の娘の顔が見える。

ーこれとの間にも色々あったな。

他の子供たちには言えないような、ましてや妻にさえ言ったことのない話を、この娘にはつい話してしまう。

長女独特ののんびりとした雰囲気のせいだろうか、いや、それだけではあるまい。

他の子達とは違う関係がその子との間にはあった。

親子のようなものはそこには存在しない、もはや年の離れた友のような。

隠れて悪いことをして、ふたりで笑いあうような、そんな関係だった。

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