ライバルは身近にいるものだ

(『ラプンツェルのような』後)


今日も休日なのに、朝から練習。

サボろうとしたけどそれを読んだ親友が家まで迎えにきたせいで強制参加となった。

まあ、俺一応キャプテンだしなー……


「おっし、1時間休憩して午後練な。」

「おー! あー腹減ったー!」


わいわいと騒ぎながら、外の水道に向かうチームメイト達。

と、何故か皆入口でたむろっている。

不思議に思って近づくと、男どもの中に、頭二つ分くらい小さな頭が見えた。


「って、委員長?」

「あ、お疲れ様です」


初めて休日に出会った委員長の私服は思った以上に可愛くて、俺は駆け寄ると、群がる男どもを追い払った。


「もしかして練習見に来たの? 俺目的?」

「……なんでそうなるんですか。私はちょっと頼まれて……あ、ヤス!」


委員長は軽く手を上げると、俺の後ろに声をかけた。

っていうかヤスって誰だ? ばっと振り返ると、そこには俺を練習に連れてきた張本人。


「おー! あ、もしかして弁当か?」

「うん、忘れてったでしょ、はい」


委員長から手渡しで弁当を受け取る親友。俺は完全に蚊帳の外。

って、二人は名前で呼び合う仲なのか?


「サンキュ!悪ぃーな、わざわざ」

「ん。いいよ、暇だったし」

「ちょ、ちょっと待った! その、二人はどういう関係?」


話を遮ってそう聞くと、親友と委員長は顔を見合わせた。


「どうって……」

「幼馴染ってやつか?」

「幼馴染……」


話によると、二人は家がすぐ近所で、家ぐるみの付き合いらしい。

今日は忘れてった弁当を、奴の母さんに頼まれた委員長が持ってきたという。

ついでに他のチームメイトとも話してくる、と歩き去った彼女。

このたった数分で今まで見たことない表情をいくつも見れたことに、俺は喜びよりも、いらつきと嫉妬を感じていた。


「お前さ、まさか委員長と付き合って……」

「ないよ。見りゃ分かんだろ」

「……ふーん」


俺の前ではあんなに楽しそうにしゃべらないのに。

というか、他の奴らとも顔見知りなのか?

あんな態度は、もしかして俺に対してだけ……?

自然と眉が寄っていたんだろう、俺の顔を見ると、親友はため息をついた。


「お前さ、あいつに惚れてるんだろ」

「さぁ、どーかな」


なんて。どうしようもないくらい彼女にハマってるってのは、さっきこいつと委員長が話してるのを見て痛感した。


「言っとくけど、あいつは結構手強いぜ」

「は? もしかしてお前も彼女のこと……」

「お前もってことは、やっぱ狙ってんじゃねーか。俺は違ぇーよ。あいつは妹みたいなもんだ」


ほんとかよ。そう言いながら彼女を見る目、高校入って3年の付き合いなのに、そんな顔見たことないぞ。


「……狙うなら本気でいけよ。泣かせるようなことしたら許さねぇぞ」

「……泣かせたりなんかしねーよ」


俺が見たいのは委員長の笑顔だ。

こいつがいつ気が変わるか分かんないし、これは本腰入れていかないとな。


「あ、ちなみにあいつ、たまーにこんな風に練習見に来るから、他のやつらは全員あいつのこと知ってるぞ。てか多分、何人か狙ってる」

「は? 嘘? 俺教室以外で会ったことねーよ?」

「……お前がしょっちゅう練習サボるからだろうが」

「マジかよ……」



『こんなの不条理だ』


二度と練習をサボらないと心に誓った

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