ベタな展開(学校編)

ああ……ついにこの日が来てしまった。


「窓側の席の人から、くじを引きにきてくださーい」


黒板の前で委員長が言う。

教卓に置かれた、くじの入った箱。

そう、今日は学期に1度の席替え。


あああ……移動したくない……卒業までこの席で居たかった……


「ぃ……おーい!」

「えっ? ななな、何?」


どんよりと一人落ち込んでいたら、隣の席の彼から声をかけられていたようだ。

びっくりしてどもってしまう私に彼は一瞬驚いた顔をすると、ふっと笑って前を指さす。

その先には、私の方を見ている委員長。


「いや、順番、次お前らしいぞ」

「あ……ありがとう……」


小さくお礼を言った私の顔は真っ赤になっているだろう。


あーばれちゃったかなぁ……


私は、隣の席の(今では、“だった”)彼に恋している。

それも高一の時からずっとだ。

高三でクラスが一緒になって、しかも席が隣になった時は、仲良くなれるチャンスだと思ったのに、臆病な私はその一歩が踏み出せないまま、ついにこの日を迎えてしまった。


「はい、どうぞっ」


遅くなった私にも笑顔で箱を差し出す委員長。

いい子だなぁなんて思いながら、私はくじを引いた。



「……え、ええっ?」

「お?」


がたがたと机を動かしてきた先には、1学期間、ずっと隣で見てきた彼の姿。


「え……もしかして……」

「なんだ、また隣だな」


よろしくな、満面の笑みでそう言う彼に、今日部活の練習見に行ってもいい? そう私が聞くのはこの数分後。


さあ、第一歩だ。



『席替えで二度連続隣の席になった』

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