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 デンドロビウムの目の前には、2曲目を選曲――と言うよりも固定されていた。

コースに関しては該当楽曲をセレクトする方式もあるのだが、こちらに関しては1曲目を選曲後にコースにするか通常プレイにするかを任意で選ぶ。

どうやら、デンドロビウムは1曲目選曲時にコースを選択したらしい。

 そして、2曲目のタイトルを見て――周囲はあまり驚きを感じていないようでもあった。

何故かと言うと――この曲自体は、以前にも何度かコース対象になっていた事も理由の一つだろう。

「あのタイトル――?」

「まさか、あの曲か」

「既に何度か出ている関係もあって、レア度は低いな」

「ウィークリープレイランキングでもベスト3に入る程の選曲回数を誇るのも――」

「単純に人気で選んだ訳ではないだろう」

 この曲自体はウィークリープレイランキングでも上位に入り、既におなじみな楽曲でもある。

しかし、曲人気が高い割には――クリアレートが若干低いのもネックだった。

そのレートは80%を下回る。その為、譜面を含めて一筋縄ではいかないと言うのがこの曲の評価でもあった。

【天空剣と神の城】

 如何にも中二病を連想させるような曲タイトルであり、意図的にピアノを使ったイントロやファンタジーなMVと狙っている物が多い。

おそらくはWEB小説で異世界転生や異世界転移等の作品がブームになっているのを踏まえ、それに便乗した楽曲とも言われた時期もあった。

しかし、そう言ったテイスト以上に――この曲には何か別の物があったのも事実である。

それが何かと言われると――それぞれのプレイヤーにゆだねられるのかもしれないが。

「この曲は前回もあったような――」

 楽曲を聞いてイントロの段階で把握したビスマルクは、この曲が再び対象となった事に驚いている。

同じ曲が連続で採用されるのもゼロではないが、稀にある位だ。それを踏まえると、今回のランキングは何かを狙っている可能性も否定できない。

 楽曲は――ベタと言う程にファンタジーであり、メジャーな曲調も使われている。

いわゆる小説サイトのテンプレファンタジーを表現しているかのような曲調と皮肉られた事もあるのだが――そう言う事なのだろう。

ファンタジーを強調する様なピアノ、意図的に使われている金管楽器の音、場所が場所ならばコンサート会場クラスの箱物で聞きたいという意見もあるかもしれない。

流れているMVは、勇者と魔王の対決をベースにして、様々な光景がフラッシュバックする様なシーンの変化が見られた。

この辺りも、やはりテンプレファンタジーを皮肉っているのだろうか? 当時はネットが炎上した記憶もあるのだが――。

 デンドロビウムの視線は1曲目と同じく、譜面の方へ向けられている。

2曲目はレベル7と言う事でノーマル譜面でも油断できないパターンで構成されていた。

「変調の部分は――さすがに詰むか?」

「自分だって、あの部分はどうしてもゲージを減らしかねない」

「どう考えてもスキル必須じゃないのか?」

「スキルなしでランクインしているプレイヤーの数を踏まえれば、一目瞭然だ。スキルは使った方がいい」

 様々なギャラリーの声はするのだが、やはりデンドロビウムが耳を傾ける事はない。

スキル必須と言う意見があるのは――確かにそうとも言える。リズムゲームVSではスキルを使うのはチートを使うのとは理由が違う。

スキル自体はシステムの一つなので、公式と言う事もあって使用しない理由はない。あえて使わないプレイヤーはいるだろうが。

ウィキでも後半の難所はスキルで乗り切るとか『気合いで』と言う記述もあるので――。

「馬鹿な――っ!?」

「信じられない」

「スキルのゴリ押しが多いあの地帯を――スキルなしでクリアしたのか?」

 その後半をスキルのゴリ押しではなく、ある意味でも正攻法でクリアした事に――周囲は驚いた。

しかし、その方法は厳密に言うと正攻法と言えるのか若干の疑問が浮上する、いわゆる一つの隠しスキルとも言われるような手法だが。



(まさか――他のリズムゲームで使う様な捌き方で突破したのか)

 その様子を自宅兼スタジオで動画として視聴していたのは、村正(むらまさ)マサムネだった。

彼女は別の動画サイトでデンドロビウムが使用した捌き方をチェックしていたので、こう言う言い方をしたのだが――。

 デンドロビウムが使用したスキルと言うのは、1曲目の後半にあった乱打譜面、その対策に使用した方法と同じである。

彼女のタブレット端末に置いていた指は――左手の5本だけ。両手で捌ければ楽だろう――トは言いつつも、あの譜面配置では無理があるだろう。

それに、デンドロビウムはスキルなし。到底、あの物量+乱打を要求する譜面をクリアするには――非常に難しい。

 実際に降って来た譜面は物量でゴリ押しする様なノーツではなく、物量を認識させつつも、バラバラに配置されていた物である。

指をピアノみたいにスライドさせるような捌き方と言うか、高等技術は要求されないはずの譜面――なのは間違いない。

しかし、スキルが実装されているリズムゲームVSではスキル依存の傾向もあり、いつしかスキルでゴリ押しする攻略法が正攻法とも言われるようになっていた。

「リズムゲームでは、そこまで高等技術ではないような気配もするのに――」

 ムラマサは今回のデンドロビウムが見せたスキルは、リズムゲーマーであれば誰でも使えそうなものと考えている。

しかし、近年のリズムゲーマーはゲームのシステムや難易度の変化で、それこそ西暦2010年辺りまでの状態とは異なっていた。



 2曲目終了後――表示されたリザルトは、1曲目と似たような結果に終わっていた。

むしろ、2曲目もこの結果だった事に驚く――。

(96%――?)

(2曲目はレベルも違うはずなのに、同じ結果を出せるのか?)

(96%なだけで、スコアは違う――)

(しかし、パーセンテージで童着だとスコアで変わると聞いた事がある)

(3曲目のスコア次第か)

 2曲目となると、ギャラリーの反応は落ち着いてきているような気配だ。

この曲に限れば、90%以上は出せて当然な空気も流れている。それ位に周囲は常識と認識しているのだろう。

「3曲目で――全てが変わるだろうな」

 2曲目の結果を見て、ビスマルクが軽くつぶやく。

彼女も――実はと言うと天空剣と神の城は90%以上のパーセンテージでクリア可能だ。

それを踏まえると、彼女はデンドロビウムが3曲目でどれ位のスコアを出せるのか――若干の予想が出来ている。

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