11-7


 デンドロビウムの3曲目が終了し――合計リザルトは上位にいた類似ハンドルネームのデンドロビウムを抜き去った。

ある意味でもなり済ましプレイヤーを――撃破した瞬間でもある。

「3曲目は――そうなるな」

 3曲目を含めた合計リザルト、それは偽者のスコアを5%以上も抜き去る程であった。

現状のビスマルクでも、今回のウィークリー対象曲では平均90%すら難しいだろう。

(まだ、始まったばかりと言う様な時期だ。下手に全力を出し切ると、後半で持たないぞ)

 ビスマルクは3曲とも全力を出さないと1位は難しいと考える一方で、途中で力尽きるのは一番やってはいけないと察している。

「やっぱり、3曲目が壁なのか――」

「平均80%が出せれば、やっとというのが――ようやく理解出来た」

「明らかに狙っただろう?」

「同じレベル7でも、あの詐称譜面はないだろ」

「つまり――そう言う事かもしれない」

「偽のなりすましや不正プレイヤーを発見する為の――」

「それこそあり得ない」

 デンドロビウムのリザルトを見て、周囲のプレイヤーからは様々な声が上がる。

不安の声が多いようだが、それでもなりすましや不正プレイヤーがランキング独占をするよりはマシ――という考えのプレイヤーもいた。

【さすがに、あの曲は速攻で陥落する事は――】

【未だにカリスマとして降臨し、アナザー譜面はレベル12――】

【あの曲か――てっきり、ノーマルのレベルが5のアレかと思った。同じアナザー12だから】

【あちらは既に魔境だ。クリアレートが10%もない】

【そのクラスの曲をウィークリーに入れたら、それこそ上級者向け筺体になる】

 つぶやきサイトでも、デンドロビウムのスコアを見て――冷静に分析するプレイヤーもいた。

これで理論値でもでたら、ある意味で逆詐称と言う極端な意見もあったが――。



 5月14日、何時もの『オケアノス・ワン』とは違うゲーセン、そこで予想だにしない出来事が起こる。

2曲目まではさほど目立ったスコアではないので、注目しているギャラリーは少ないのだが――。

リズムゲームVSの筺体に立っていた人物、それはスク水にコートと言う外見の――バーチャルゲーマー、村正(むらまさ)マサムネである。

3曲目のタイトル――それを見た周囲が動揺していたのはデンドロビウムのスコアを知っていたからかもしれない。

「あのタイトルは――?」

「まさか、あの曲か!?」

「未だに楽曲別の首位が85%を超えていないと言う――」

 この曲に関して言えばスコアが低いことでも有名だが――そのレートは85%を下回る。

その為、レベル7なのに熟練プレイヤー向けとまで言われる始末の曲――。

【天ノ狼】

 この楽曲は、さりげなくクリアレートが低い事で知られる『とある楽曲』のカウンターと言う意味合いで作られた。

電子サウンドがメインなのも、それが影響している。惑星の名称をモチーフに使用したのも、それが影響している。

そして、譜面難易度は――それを大きく上回ってしまった。

(まさか――)

 その様子を谷塚駅に近いコンビニで動画視聴をしていたのは、デンドロビウムである。

これから『オケアノス・ワン』へ立ち寄ろうとした時に、コンビニ前で噂話を聞き――中継動画を視聴していた。

その結果、ムラマサのプレイしている中継映像を発見し――現在に至る。

(この譜面をクリアするには、スキル必須とも――?)

 デンドロビウムもスキルなしでクリアはしたが、この人物も画面を見て見ると――。

(スキルが、ない!?)

 このプレイヤーも、何とスキルなしでのプレイだった。その為か、動画閲覧者が増えているらしい。

しかも、このプレイヤーの正体が――予想外の人物だった事が動画閲覧者増加に拍車をかけていたのだろう。

「ムラマサ――まさか?」

 そのまさかだった。バーチャルゲーマーのムラマサが――このプレイ動画でプレイしているプレイヤーなのである。

スコアの方は中盤の難所までで50%と言うハイペース。この調子だと、下手すれば80%オーバーは間違いない。

おそらく、彼らは目撃者となりたいのだろう。理論値ではなくても、90%クリアを達成する瞬間を――。

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