11-3


 真田(さなだ)ソラことアルタイル――彼女の目的は『リズムゲームVSでコンテンツ流通に革命を起こす』事にあった。

様々な説がネット上で拡散する事になったのだが、それはアルタイルとしての行動が独り歩きした物に過ぎないだろう。

だからこそ――真田は一連の決着を付ける為にも、自身がアルタイルである事を公式に発表をしたのである。

『私としては――コンテンツ市場の現状には懐疑的だった。そして、特定芸能事務所ばかりが儲かるような仕組みは――不必要なのではないか、とも考えている』

『そこで、私はアルタイルと名乗り――ネット上の反応や様々な情勢を見極めることで、コンテンツ市場を変えようと――そう思った』

 その反応は、ある意味でも予想通りの物だった。その一部をつぶやきサイトから抽出すると――。

【まさかの展開だな】

【まさかと言えるのか? アルタイルと名乗る悪目立ち勢力やアルタイル教のような存在は別として】

【そこまでになっていたのか――ある意味で超有名アイドルのやっている事と変わりないだろうな】

【自分が今までやってきた事を棚に上げて――】

【正にブーメラン発言とは、この事か――】

【これで大炎上しなかったのは不思議だが】

【さすがにSNSテロや大規模な無差別テロに発展したら――それはそれで危険な存在になる】

 今までの彼女の行動を考えれば――ブーメランなのは当然かもしれない。

しかし、必ずしもネガティブな反応ばかりが彼女の元に跳ね返ってくる訳でもなかったのである。



 SNSテロを計画していた勢力が次々と検挙されていくニュースは、草加市内以外の埼玉県内で報道されるようになった。

何故に草加市以外なのかと言うと、草加市では様々な条例の関係上でSNSテロの計画だけでも捕まると言う理由があったらしい。

これが都市伝説なのかどうかは定かではないが――最低でも、真田にとっては良いニュースと言える可能性は高いだろう。

 SNSテロ等を起こさせないようにするには、学校の段階でSNSに関する正しい知識を覚えさせるしかない。

しかし、学校以外ではどのようにして覚えさせるべきなのか?

WEB小説サイトに掲載されている小説では、SNS専門の学校やARゲームのライセンス発行前に講習会を受ける義務――といったケースが書かれていた。

さすがにそのままネタを拝借して、訴えられても本末転倒だろう。

 SNSテロを防ぐ方法に関しては――そう言った事例が少なく、対策と言えるような物は遅れているのが現実だ。

その為か、様々なフィクション作品を参考にしてSNSテロを防ごうと言う動きが出始めている。

それを率先して活動しているのは――何を隠そう草加市だった。聖地巡礼ばかりがピックアップされていた草加市だが、ここにきて衝撃の展開と言えるかもしれない。

「これだけの事を起こしても、まだ彼らは自分のやっている事を自覚しないのであれば――」

 まとめサイトの記事を見て、まだ連中が懲りていないと判断している真田は――奥の手を使おうとも考えていた。

しかし、実力行使ではネット炎上は避けられない。警察と協力するにしても、向こうが応じるかどうかは不透明だ。

そこで真田が白羽の矢を立てたのは――。

「ユニコーン、君に重大な任務を任せたいと思う」

『やけに唐突だな。自分をリズムゲームVSを盛り上げるのに呼んだと思ったら、今度はネット炎上勢力の根絶――』

「そちらとしても迷惑ファンやマナーを無視する炎上勢力に、手を焼いているのは把握しているつもりだ」

『痛い所を突いてくるな――』

 真田はプライベートルームでアルタイルの姿で通話をしているが、ユニコーンはサウンドオンリーの表記で何処にいるかは分からない。

ただし、稀に聞こえてくるFPS系ゲームのBGMを踏まえると、彼女はゲーセンにいるのだろうか。

 ユニコーンを本来呼んだ目的はリズムゲームVSを盛り上げる為――いわゆるサクラの依頼でもあった。

その必要性はないだろう――とユニコーンにも指摘されたので、彼女は真田の指示とは別でリズムゲームVSをプレイするとは宣言している。

「どのコンテンツでも炎上は避けられない。コンテンツ流通にとっての光と闇は把握しているつもりだ」

『炎上勢力根絶は――こちらも反対はしないだろう。議論すら許されない環境には反対だが』

「過去に芸能事務所のコンテンツに対して批判を行った人物が謎の失踪――そんなWEB小説があった位だ。陰謀説とか国家レベルで圧力がかけられるコンテンツなんて聞いた事はない」

『国家レベル!? それはさすがに――』

 ユニコーンは唐突に声を高くしてしまった事に対し、周囲を見て問題ないか確認するが――周囲も爆音状態なので、聞こえていなかったようだ。

「こちらとしても、作品の感想をお世辞だけで本音を言えずに語れない――そういう環境にはしたくないのは同じだ」

『こっちとしても――信者だらけで否定的な意見をすれば、リアルで消されかねないような環境は――フィクションだけで充分だと思っている』

「それを聞いて安心した。こっちとしては、いわゆるヲタク勢力よりも純粋なキッズ目線で――リズムゲームVSを見てほしいとも考えていた」

『そう言う事か――真田ソラの真意は、今の炎上マーケティング社会がSNSテロと同義――』

 ユニコーンが何かを続けようとしたのを、真田は止める。どうやら、その先は言って欲しくないようでもあった。

『分かった。それと同じ事は、おそらく――別の人物も』

「別の人物?」

『彼女もリズムゲームを通して、SNSテロ等が無駄であり悲劇しか生み出さないと――考えている』

 ユニコーンの話を聞いても真田は別の人物を割り出せないでいる。プロゲーマーのビスマルクか、それとも別のバーチャルゲーマーなのか?

そして、少し話をした後に通話を切った。話としては合計で10分位だろうか?

「そう言う事か。歴戦リズムゲーマーとは――」

 真田は、ユニコーンと話をしていく内にその人物が誰なのか予想できた。

そして、彼女が行おうとしている事も――。 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る