11-2
『誰もがゲーマーになれる、誰もが――名前を知られるチャンスを与えられた――』
これはリズムゲームVSの当初の企画書に書かれていたフレーズである。後にキャッチコピーとしても使われるようになるが、2作品ほどで変更を余儀なくされた。
その理由は様々だが『誰でもプロゲーマーの様なゲーマーになれるわけがない』というクレームを受けたという説もネット上に存在している。
やはりというか――こうした炎上前提のモンスタークレーマーを一掃しなくてはいけないのか?
草加市では一連のモンスタークレーマーに関しては、ゲーム以外の分野でも存在する関係もあってか――法案を検討しているらしい。
一連の法案に関するニュースは拡散している訳ではないのだが、WEB小説で書かれているような内容をフェイクニュースのように拡散する勢力もいるだろう。
そうした勢力は、自分達のやった事がブーメランして勢力壊滅に加担する事を――全く知らなかった。
(もう、二度と繰り返すべきではないのだ。芸能事務所主導型のコンテンツは――)
あるモニターに映し出された動画をスマホで視聴しつつ、誰かを待っていたのは真田(さなだ)ソラである。
彼女はテストプレイヤーと言うポジションでもあるのだが、その正体は――。
「ネット炎上とSNSテロと芸能事務所――それが絡むコンテンツ市場――それは未来の形ではない。ただのポストアポカリプスだ」
特殊なデザインをしたトレンチコート、その下はメイド服――この姿はネット上ではあまりにも有名だ。
周囲の人物は、まさか――と考える。
「このゲームは本来のプレイユーザーとはかけ離れ過ぎている。だからこそ、それを元に戻そうと言うのだ――」
ネット上での彼女の名前はアルタイル――つまり、一連のリズムゲームVSに関係した事件に関与していたアルタイルでもある。
既に彼女は一部の炎上勢力に対し、警告を行い――炎上勢力の一斉排除を行うとも宣言していた。
最終的に――その行動がネット上にアップされたような形跡はなく、どのような手段で鎮圧したのかは語られずじまい。
しかし、一つだけ言えたのは――実力行使で止めた訳ではないことだ。
単純な武力鎮圧は、暴力の応酬を繰り返すだけに過ぎない。だからこそ――彼女は別の手段で鎮圧し、5月11日のウィークリーランキングをお膳立てしたのである。
「あとは純粋にゲームを楽しむプレイヤーのみでランキングを盛り上げ、余計な私欲を絡ませない事――」
自分も本来であれば参戦は保留すべきなのかもしれない。スタッフが参戦すれば、不正を疑われるような環境でもあるから。
しかし、逆の発想として自分が参加しなければ何か隠し事をしているとも疑われかねない――。
5月12日、遂に――ランキングが動きだす時が来たのである。
既に午前11時付けの集計では、3曲プレイ済みのプレイヤーのスコアが次々と登録されているようだが――プロゲーマー等の有名プレイヤーはいない。
ランキングに表示される店舗名も――『オケアノス・ワン』が独占ではなく、違うゲーセンも混ざっていた。
この辺りは午前9時30分オープンの店舗もあったりしたので、その影響だろうか?
海外にも展開している機種はあるが、リズムゲームVSは日本国内のみで海外には設置店舗がないのは確認済みだ。
(いないのか――?)
(この段階だと、さすがにプロゲーマーは様子見か?)
(午後になってからランキングに動きがあるのかもしれない)
(嫌な予感がする)
(これ自体がフラグかもしれないな)
(まさか、リズムゲームVSが過疎化しているのか?)
センターモニターのランキングを見ていたプレイヤーは、見覚えのないプレイヤーネームばかりで困惑している。
一体、何が起きているのか? 驚いているのがプレイヤーだけでなく――店員やスタッフも驚いているので、その度合いは想像以上と言えるのだろう。
(プレイ人口が増えているのは事実だろう。しかし、これは――)
受付からではなく、センターモニターより若干遠い位置で様子を見ていたタチバナも――この状況には驚く。
大きく驚いている訳ではなく、その具合も若干の想定内という具合か?
(リズムゲームはリズムゲームVSだけではない。こちらとしては、他のゲームにもプレイヤーが流れてくるのを祈るか――)
そして、タチバナは再び受付の方へと戻る。ボウリングの受付待ちが増えてきたのかもあるのかもしれないが。
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