ツヤマの話
俺の故郷はな、郊外にあるJRを駆使すれば都心と通勤圏内の都市でな、三つ年の離れた兄さんと一緒に住んでいた。
両親は多忙で、海外出張が多く、滅多に顔を見られなかった。
仕送りはしてもらっていたが、それだけで生活していたわけじゃぁない。
兄さんは教師で、自分の分の生活費は、そこから出していた。
できる限り貯金して、俺に望み進路を取って欲しいって、口には出さないけどさ。
俺は子供の頃はジャーナリストになりたかった。真実を追う、正義の味方。カッコいいじゃん?
でもな、子供は成長する。
名も知られない奴が話す話なんて、誰も信じない。
みんなが驚くような真実なんて、もうないんだって。
だから、報道関係の仕事に就けた日も、特に心は踊らなかった。実際、意欲もあまり湧かず、評価も低かった。
その日は、町にあるファストフード店で、飯食ってたんだ。就職したのはある新聞社。地元紙だ。
就職してから一年が経つ頃だったけど、まだスーツは着慣れていなかったよ。
そこで事件が起きたのさ。
客の一人の中学生ぐらいの男の子が、ガラの悪そうな連中に絡まれたんだよ。
まあ、そいつの対応も悪かったが、殴られる寸前までいったんだ。
でもな、そいつの友達なのか、一人の女の子が席を立って、毅然とガラ悪い奴を止めようとするんだ。
でもな、それだけで止まるわけがない。それだけじゃ、な。
それに呼応するかのように、店の客にいた、親子、その子が言ったんだ。でてけ!って。
そこからはみんなして、ガラ悪い奴らを追い出したよ。
そこで俺は知ったんだ。
事実はただの事実でしかない。問題は媒体だって。
だから俺は、俺という媒体が力を持てるように努力をした。結果、今では本社勤務だ。
でもな、まだ自分のやりたいことはできない。
力があるのは俺じゃない。会社だ。
俺は、俺個人の力が欲しい。
だからお前を拾ったんだ。
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