今に繋がる昔話

 約束とも言えない約束をしたあと、女の子は家に戻った。


 翌朝、彼女は何事もなく引っ越していった、


 でも、話はそこで終わらない。


 僕は、約束とも言えない約束を、本物にするための努力を始めた。


 ある日のこと、少し羽を伸ばすかと、隣町に住んでいる友達に会いに行った帰りのこと。


 その町にある、大きな電光掲示板に、ある特集が映されていた。


 他がどうだか知らないが、一瞬見えた内容は、カラスの寿命について。


 イギリスのカラスが、六十まで生きたという話を皮切りに、身近な動物たちが、何才まで生きるのか、というような内容だった。


 僕は心底驚いていた。大抵のカラスは二十そこそこで死んでしまう。


 僕は今、七歳ほどのはずだ。


 その番組を見て、僕は決意したのだ。


 人に飼われよう。なんとしても生きるんだ、と。


 幸いにも、僕には、文字が書けるという特異性がある。


 だから、注目を集めるのは容易だろうと考えて、僕は少し離れたところにある町で、こんな紙をくわえた。


『ぼくはもじがかけるカラスです。ひきとってください』


 と、書かれた紙を。


 僕の町ならまだしも、他の町。カラスに対する嫌悪はないだろうと考えていたが……


 浅はかだった。


 一日目は、誰も相手にしなかった。


 二日目には、二人だけこちらを向いたが、すぐに立ち去る。


 もう帰るかと、考えていた三日目。


 僕はツヤマと出会った。

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