(9)ゴーレムとの対決

 現在地は、例の森の前である。おそらく森に入らない限りは奴は攻撃してこないだろうと踏み、ここで軽食を取ってから対決しようということになり、アカリ特製サンドイッチを食べているところだ。美味い。

 食事もそこそこに、俺たちは武器を手に取りゆっくりと森の中に歩みを進める。

 暫く進むと、地響きがし始める。おそらく足音なのだろう。

 また進むとその巨大な身体の一端が見えてくる。

「あれだな。とりあえず、俺が後ろから回りこんで背中を攻撃する。そうしたら、お前は奴が俺の方向を向いたタイミングで爆発系の魔法かなんかで俺が攻撃したときにできた傷を狙って攻撃しろ。とりあえず、作戦はそれだけでいいよな。」

「うん。分かった。」

俺はじゃあ、と目線を送ってから走り出す。奴の目からは見えないであろうルートを経由し後ろへ回る。視線以外にも何かしらの機能で俺を確認できるかもしれないが、この巨体である。おそらくそう速くは動けないだろう。

「喰らえッ!」

俺は剣を振り上げると飛び上がり、背中を三度みたびほど切りつけた。

『ウガッ……』

ゴーレムはゆっくりとこちらを向く。

「いまだッ!」

空気がピリピリと震え、ゴーレムの背中で爆発が起きる。俺はその爆風に吹き飛ばされそうになりながらもなんとか耐え切り、ゴーレムの内股に入り込み往復しながら切りつける。その間にアカリは頭を重点的に狙い氷系の魔法を打ち続ける。

 足を崩したところで攻撃を取りやめ、頭に剣を突き刺す。

 とそこで、ゴーレムの身体が異様な熱を帯びていることに気付いた。これは、爆発するヤツだ。アカン。

 剣を引き抜くと一目散に逃げる。今度はアカリを脇に抱えて走る。

 後ろから轟音が聞こえる。コンマ数秒遅れて爆風が後ろから襲ってくる。さっきのアカリの魔法の非ではない。二人の体重を合わせても数メートル吹き飛ばされた。

「痛ってぇ……。」

「大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ。お前は?」

「特に問題はない、かな。」

 少し戻ってゴーレムの居た場所を確認すると、ゴーレムは跡形もなく吹き飛んでいたが、同じ場所に見覚えのある男が立っていた。なんとも言えない美形、にくったらしい目付き。確か、アカリの屋敷でアカリを襲った奴だったはずだ。

「ふふふ。実に愉快だ。」

 男はそうつぶやくと、一瞬のうちに消え去った。

「なんだったんだ……。」

「あれが、魔王、だったはず……。」

「はー、通りで。憎たらしい顔してやがる。」

「そういえば、あのゴーレムの中身? たしか、倒したら来いって言ってたよね。」

そういえば、そんなことも言っていたような気がする。

「今度は、屋敷の隠し部屋のほうから行こう。」

 例の屋敷に正面から突入し、前に出てきたところの隠し扉を難なく開ける。

 本の山の間を通り、また地下へもぐる階段を降りてゆく。

 中に入るとやはり勝手に蠟燭に灯がともる。

 漸く広場にたどり着くと、相変わらずわけのわからない、なんともいえない声が聞こえてくる。

『どうやら、我が身体を倒したようだな。』

「ああ。」

『それでは褒美を授けよう。』

そうすると、目の前の床がせり上がり、一冊の本が姿を現した。

『その本には、魔王の弱点から何から、すべてが書かれている。奴らは、それを目当てに私を狙った。だが、お前たちにやれば、すべては解決するだろう。あとは、頼んだぞ。』

 声はそう言った後、一切聞こえなくなった。

 静寂の中、アカリが本を手にとり、開く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る