(5)つかのまの休暇
それなりに小遣いも稼ぎ、暫くは生活できそうになった。
ゴーレム云々の話で疲れているし、どうせだから暫く休暇にしてみようと思う。
という話をアカリにした。どうやら、反対ではないらしい。これといって賛成というわけでもなさそうだが。
何にしても、あのゴーレム的な奴を倒すためには、もっと万全を期さねばならぬ。そのための休みでもある。
というわけで、街屈指の温泉街に来ている。温泉もあるという大変便利な街、俺は引退してからはここに定住するんだ…。
とそんな個人的願望はさておき、俺たちはとある温泉旅館に入る。
この温泉旅館は俺の知り合いが運営していて、かなりまけてくれる上、それなりに一部屋一部屋が広い。これならば、ずっとこっちに住めばいいだろう、などと思うかもしれないが、さすがにこの旅館にずっと居座るのは気がひける。元から安い宿とまけてもらった旅館だと、元から安い宿に止まったほうがいい気がしてならない。
とまあ、二人で適当に宛がってもらった部屋をのぞいてみる。
それなりに広く、かつ、あまり豪華すぎない。丁度いい部屋だ。
そしてなんとこの旅館、部屋ごとに露天風呂が付いている。
本当に設備が例の宿と被っているが、こっちは温泉である。ワングレード上だ。贅沢したいときにはこっちを利用する。
「よーし、せっかくだし、風呂に入ろう! どうだ、たまには一緒に入るか?」
俺がそう言ったのに、相変わらずアカリは
「結構! 一人で入る!」
との一点張りである。
「ちぇっ、連れねぇな。友達少ないんじゃねぇの?」
「悪いかよ!!」
どうやら、図星だったようである。なんか、ごめんな。
その夜。夜空には星が煌いている。市街地ではこんな夜景は絶対に見れないだろう。目を凝らすと、蛍も居たりする。
こんな具合でかなり自然が豊かな土地にある温泉宿、今借りているこの部屋の、俺が今外を見ている窓の方向には、林がある。そこまで密集しているわけではないので、なんとなく奥のほうまで見渡せるが、なんとなく、不安になるような景色だ。
「あれ、どこ見てるの?」
丁度良く風呂から上がってきたアカリが隣に座り、俺と同じように外を見ながら声をかけてきた。
「いやよぉ、暗闇って怖くねぇか?」
「えっっっ……。」
「なんだよ、その反応は。別にいいじゃねぇか。怖いもんは人それぞれだぜ。」
「いやあ、意外だったもんで。」
怖いといっても、あのゴーレム的な奴よりはマシだがな、なんて考えながら林を見ていると、ふと何か遺跡のようなものがあることに気付いた。
「おい、アカリ。あそこになんか建物ねぇか?」
アカリが俺が指を指したほうを見やった。
「どれだよ…………あっ、あれか!」
どうやら俺の幻覚ではなかったらしい。
「アカリ、ちょっと、明日の朝イチであれを探りに行くぞ。いいな?」
「勿の論。」
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