(4)気絶したアカリとゴーレムの説明

「アカリィ! 後ろ! 後ろ!!」

俺がそう叫ぶのと同時に、アカリは後ろを振り返った。

「あっ、あっ、あっ。」

アカリはよくわからない呻き声を上げたあと、ぐったりと倒れてしまった。

「おーい! しっかりしれくれよ!」

仕方ない、あまり気は進まないが、ゴーレム的なそいつの近くに寄り、そーっとアカリを引っ張ってこちらに寄せる。そーっと背中に乗せて、全力ダッシュ!!!


 なんとか街の門にたどり着いたものの、もうヘトヘトで、宿に戻ったときの記憶は一切ない。

 朝起きると、見慣れた宿の一室でアカリを背中に乗せたまま倒れていた。

 アカリをそーっとどけて、自分自身、そしてアカリを観察する。

 目立つ外傷はない。強いて言うならアカリが汗を大量にかいている程度だ。

 あまり汗をかきすぎて風邪をひいてもよくないだろう。

 俺は風呂場に備え付けてあるタオルの中の一枚を手に取り、アカリのボタンをはずし始めた。

 何故かとてもすんなりとはずすことができたボタンに、少し驚きつつも、タオルを手に持ち――

 ん? こいつ、包帯だかさらしだかわからねぇが、何か胸のあたりに巻いてやがる。

 なんて考えていると、突然アカリがガバッと体を起こした。自分の体を見てから、とても驚いたような表情をしてから、冷静にボタンをしめ始めた。

「なんだ? 怪我でもしてるのか?」

「怪我は、してないね。」

「じゃあ、なんだよ。」

「なんでもない。」

おそらくなんでもないことはないのだろうが、あまり深く追求するような俺ではない。

 そこらへんのことは一切忘れて、例の森のゴーレム的な奴についての報告をするとしよう。


 その道中、どうもアカリの奴がチラチラとこちらを見ている。それも、軽く頬を染めながら。

「なんだ、俺に惚れたか。」

「ちっ、ちがッ! 馬鹿なこといってねぇで早くいくぞ。」

 何故だかキレ気味なアカリはさておき、酒場に入ると、受付の巨乳が寄ってきた。

「ヴァルターさん! よかった! 無事だったんですね!」

いつもは全く心配してくれないこのお姉さんも、ゴーレム的な奴の出現となればどうやら心配してくれるらしい。

「早速で申し訳ないんですが、例の巨大なモンスターについてのご説明をお願いできますか?」

「そうだな。たぶん、身長が6mくらい、煉瓦みたいなのでできてたと思う。あとは、何かあったかな…。」

そういい終えると今度はアカリが、

「額に、何か、円い、宝石? みたいなのがあった。青かったような気がする。」

「そうですか。ありがとうございます。」

そういうと巨乳お姉さんは奥へ引っ込んでいった。

 とりあえず俺たちは、空いていた椅子に座って、適当な食事を頼んで暫く待つことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る