2.5話「自己紹介」

  確かあの日は、1時間目に自己紹介コーナーがあったはず。それで、自分の番が回ってきたときだったかな?



「次はー...稲瀬 宙だな、よろしく!」

「はい!」 先生の呼びかけに応え、立ち上がった頃、周りから

「かわいい...女子みたい」

 や、

「女子の制服着ても違和感ないかも...」

 など、色々ツッコミどころのある言葉が聞こえつつ、前の方に出た瞬間、

「そらがんばれー!」

 と声が聞こえた。声の主は僕の小学校からの友達、慎太郎くんだった。僕はその声に

「そらじゃないから!  呼ぶんだったらそらって呼んでってば!」

 と言ったのだが...

「えー、別にいいじゃん、女子みたいで可愛いし!」

「えぇ...でも僕、男だから、ちゃんと呼ぶんだったらそらって呼んでくれないかな...」

 少し優しめに話しかけてみた。これで流石にわかってくれる–––

「うーん...嫌だ!」

 ––ことはなかった。うん、もう諦めよう、そうしよう。

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