よふかしのうた 1話
チームで一番キルレシオが高かった。リザルト画面に輝く1位のトロフィーが、私を何者かにしてくれた気がした。
「そーいや《ゆーさく》はそろそろ受験なん? 高3っしょ?」
次ゲームまでのインターバルタイムに、チームメイトの《Okonogi》がボイチャ越しに告げてきた。
プレイヤーネーム《ゆーさく》。それは3名1組になって戦うサバイバルゲームの世界での私のこと。
反乱軍の一員として戦う兵士の目に映るのは敵の姿だけで、クラスメイトの寄せ書きも、教師からのお説教も届かない。閉ざされた部屋の扉の前に積み上がった授業プリントや小テストの束で、一日が過ぎ去ったことを知るだけ。
『みんな仲間だ、蓮華ヶ丘中学』
——なんて、フリー素材のにこやかな中学生が笑っている《学校新聞》を足で踏みつけて、トイレと部屋の往復をするだけ。
「わかんない」
「自分探し的な?」
自分なんて探したって見つかりっこない。他人に誇れるようなものなんて、私立の中高一貫校に通う中2の佐久間
ただ学校に行きたくない。そんな何者でもない無価値なクズ。
「そうかも。モラトリアムって言うんだよね。こういうの」
だから佐久間由依でいるよりは、反乱軍の女子高生、《ゆーさく》でいる方がいい。勝利に貢献すればチームの役に立つから。
「わかるー。うちもギリギリになって大学決めたしー」
「《Okonogi》勉強できなさそう」
「それよ。親が行け行けうるさくてさー」
「大学行ってよかったことある?」
「えー、知らん。中退したし」
カウントダウンが終わるとゲームが始まり、雑談はゲーム内の情報戦に瞬時に切り変わった。
スタート地点の判断を《Okonogi》に譲渡して、マップ辺境から戦闘を始める。空き家を捜索して武器やアイテムを収集し、近場に降りてきた敵を掃討していく。
拳銃、ショットガン、マシンガン、アサルトライフル。手にした武器はなんでも使いこなせる。弾の収集状況や敵の所持武器に合わせて、有利になるよう立ち回る。
「《ゆーさく》、ナイスカバー!」
「ひとつ貸し?」
「貸し借りってどっちがどっちか分からんくない——ちょ待てよどっから出てくんだよテメー!」
反乱軍の一兵卒たる《ゆーさく》は、チームの中の誰よりも強かった。課金アイテムを駆使する2名と違い無課金。腕だけでチームを上位のランク帯へ手を引いて連れていく——オンラインゲーム用語で言うところの、キャリーする。現実ではどこへもキャリーされないどころか、社会のお荷物なのに。
「もっと強い人と組んだら?」と《Okonogi》には言われた。
「《Okonogi》の支援するから、《れーちょん》さん」
「倉庫影にひとり。追い込んで挟撃で」
もうひとりのチームメイト、《れーちょん》さんの声はいつだって落ち着いていた。普段からバカばかりしてる《Okonogi》と違って、彼女の声は安心できる。《れーちょん》さんが言うなら、その通りにやれる気がする。
「任せて」
《れーちょん》さんの期待に応えたい。小さなスマホの画面に目をこらす。倉庫影から出てきて合流した敵チーム3名の輪の中心に、グレネードを投げつけてトリプルキルを決めた。
「グレキルかっけー! 《ゆーさく》パイセン一生ついてくっす」
「ナイスオトリ、《Okonogi》。完璧な噛ませ犬っぷりだったよ」
「《れーちょん》さんそれウケる」
本名どころか、何をしているのかも分からない《Okonogi》と《れーちょん》さん。2人とも東京在住の成人女性だということくらいしか知らないのに、クラスメイトより先生より親よりも信頼できる。
この3名だから楽しい。
「ならまー、《ゆーさく》パイセンの壮行会やんなきゃだよね。受験でイン率落ちる前にさ」
《Okonogi》は続けた。
「みんな東京住みっしょ? うち
「
「うわセレブかよー。なんなん《れーちょん》実はゲーノージンとかだったりすんの? カネ貸してー?」
《れーちょん》さんが黙った。本当に芸能人なのかも。自分で言っておいて「マ?」と聞き返した《Okonogi》に間を空けて、忍び笑いが聞こえてくる。
「信じた?」
「イヤな女だわー。見習うならうちみたいなオトナの女にしろよ、《ゆーさく》?」
「えー。《Okonogi》にはなりたくない」
「ひどくなーい?」と叫ぶ《Okonogi》に、《れーちょん》さんと2人して声を合わせて笑う。
居心地がよかった。世界中のどこよりも、こうして3名で喋っているだけの戦場が。敵の頭蓋をアサルトライフルで吹き飛ばしながら。拾った車両に乗って街道沿いの敵を掃討しながら。そして車ごと崖から落ちて3名同時に事故死しながら。
こんな楽しさが、永遠に続けばいい。
続けばいいのに。
インターバルでトイレに立つたびに、ドア前に積まれたプリントの束には分からない問題が増えるし、《クラスのしおり》に書かれた学年は1から2に増えている。
社会から取り残されていく。私は《Okonogi》と《れーちょん》さんをキャリーしてるのに、親も先生も私をキャリーはしてくれない。
「ならオフ会、今度の土曜日は? 《ゆーさく》は来れそう?」
明るいうちに出歩くのは嫌いだった。
日の光の下に出られるのは照らされても構わない者だけ。真面目に学校に通って、クラスに友達が居て、先生からも親からも信用されているような。社会から滑り落ちた不登校の中学2年生には、昼間の居場所なんてない。
「土曜バイトだから、夜がいーんよね。あーでも《ゆーさく》未成年か」
「いいよ、夜なら」
だけど、夜なら。夜なら私を知る誰かと鉢合わせする心配はない。それに、現実ではキャリーからこぼれ落ちた私を、《Okonogi》と《れーちょん》さんがオトナの世界へキャリーしてくれる。そんなの断る理由がない。ネットで知り合った人とは会っちゃいけない。学校も親もそんなことを教えてきたけど、私は会いたい。会って仲良くなって、ずっと一緒に遊んでいたい。
「へへへ、不良JKだなー?」
「不良じゃなくても深夜徘徊くらいするし」
「《ゆーさく》ちゃん。親とか大丈夫?」
「《Okonogi》と《れーちょん》さんの3人でしょ。だったら行きたい」
手元にあった鏡を見る。画面を見続けて充血した赤い瞳も、嫌になるくらいの童顔も、夜の闇の中なら分からない。それに背丈も平均はある。母さんの化粧と服を着ていけばごまかせる。
「私もうオトナだし」
そうして、銃撃戦で夜は更けていく。とうの昔に日付も変わって明後日に迫ったオフ会の日がただただ楽しみで、鼻唄を口ずさみながら心の中でオトナたちに中指を立てていた。
*
待ち合わせ場所の新宿駅東口は、マスク姿の人々で賑わっていた。改札を出て地上に出る階段前、ルミネの入口付近でスマホを覗き込む。時刻は18時過ぎ。待ち合わせの時間はとうに過ぎていた。
「じゃ、ピンク髪のクソかわいい女が《Okonogi》だから」
そう語っていた《Okonogi》の姿は、待ち合わせ場所には現れなかった。彼女とはゲームの中でしか繋がっていない。《れーちょん》さんも同じだ。電話番号もLINEもインスタすらも知らない。
裏切られたのかも、と思った。実は高校生なんて嘘をついていたことがバレたのかもしれないって。仲が良くても結局はオトナとコドモだから、社会からこぼれ落ちた不良学生なんてキャリーはしてもらえないのかもって。
「もしかして《ゆーさく》? 《れーちょん》って言えばわかるかな」
《れーちょん》さんの声がした。ボイチャ越しじゃない、久しぶりに聞くナマの声にビクついて、恐る恐る視線を上げる。
《れーちょん》さんは、想像以上にオトナの女性だった。淡い茶髪、マスクで覆われていない目元にはっきり引かれたアイライン。高そうなトレンチをこれでもかと着こなす様はまるでモデルか《Okonogi》いわくの芸能人のようで。
「あ、はい。《ゆーさく》です」
「よかった。間違えてたら恥ずかしいもんね、《れーちょん》なんて」
ショウウインドウのモニタが放つブルーライトに照らされた《れーちょん》に目を奪われる。こんな綺麗なオトナとチームを組んで、夜な夜な同じゲームをやっていたなんて。
「かわいいと思う、《れーちょん》」
「ありがと。そうだ、《Okonogi》の連絡見た?」
「え?」
「DM着てるよ。シフトが飛んだから、ヘルプ入ったって」
急いでアプリを立ち上げる。《れーちょん》さんの言う通り、絵文字満載のDMが届いていた。《Okonogi》のバイトのことも、シフトやヘルプなんて言葉も分からなかったけれど、来られないということは理解できた。
「あいつらしいって言えばらしいけど」
コドモみたいな《Okonogi》と違って、《れーちょん》さんはマッチ中と変わらず、落ち着いた声だった。ボイチャ越しじゃなく会うと緊張してしまって、うまくいつもみたいに話せない。
「DM着てた。残念だね、《Okonogi》」
「ね。じゃ、ふたりで行こっか」
「どこへ?」
「どこって」とおうむ返しして《れーちょん》さんの目元が綻んだ。聴き慣れた、オトナっぽい大好きな声。声だけだった《れーちょん》さんに姿形ができていく。
《れーちょん》さんは、綺麗なお姉さん。知っていることなんて中目黒在住の23歳ということだけなのに、どんな暮らしをしているのか知りたくなる。知って、近づきたくなる。
私の手を握って、《れーちょん》さんは告げてくる。
「今日はお姉さんがキャリーしてあげよう。着いておいで、《ゆーさく》ちゃん」
《れーちょん》さんに手を引かれて、私は夜の新宿へ踏み出した。
*
新宿は、夜空の星を拾い集めて、地上に並べ尽くしたような街だった。満天の空を思わせるネオンサインに、車列の作る天の河。その隙間をスマホが放つ青白い光が埋めている。
「どう? 夜の新宿は」
「初めてじゃないし」
「そうなんだ。不良JKだね」
ナメられたくなくて嘘をつく。《れーちょん》さんにコドモだと思われるのが嫌で、オトナのフリをする。JR新宿駅東口を出れば
「歌舞伎町行くの?」
「まずは服買いに行こっか。あと、メイク」
《れーちょん》さんは私の姿をじっと眺めて腕組みした。母さんのクローゼットから引っ張り出してきたコートとマフラーでも、オトナになりきれない体はごまかせないのかもしれない。
「《ゆーさく》ちゃんのコーデ、落ち着き過ぎててね。お母さんに借りた?」
中学生だとバレたら、キャリーしてもらえないかもしれない。どきりとして、急いで言い訳を探した。
「ファッションとか興味ないから……」
「なら、最初のキャリーはコーデから。お姉さんの着せ替え人形になってほしいな?」
「私、童顔だし」
「それがいいんだよ、可愛くて」
可愛いだなんて言われて胸が高鳴るのはいつぶりだろう。小学生のとき、褒め合いの輪の中で言わされたことくらいしかなかったし、実際まるで嬉しくなんてない。
童顔で嫌いだった。いつまでもコドモのままでオトナびてないから。だけど《れーちょん》さんは可愛いと言ってくれる。それは不思議と嫌じゃない。
「ね? 《れーちょん》好みの可愛いJKになってみない?」
何者でもない佐久間由依が、何者かになれるかもしれない。なりたかった何かになれるかもしれない。
なら、試してみたい。試したい気もするけれど。
「でもおカネないよ」
「そうだね、じゃあ出世払いで。《ゆーさく》がおカネ稼げるようになったら、《れーちょん》に返して? それで対等」
《れーちょん》さんはそんなことを言う。いつ働けるかなんて分からないのに、おカネを支払ってくれる。それに——
「対等?」
「《ゆーさく》は一人前のオトナだからね」
——何者でもない私を、《れーちょん》さんは受け入れてくれる。コドモ扱いしないで、オトナとして見てくれている。それは親も教師もしてくれないこと。
JKだって嘘をついていることが痛かった。でも、黙ってないと相手にされない。嘘がバレたとき《れーちょん》さんが居なくなるのは。対応が変わってしまうかもしれないのが怖くて。
「なら……うん」
「さ、行こ行こ。夜は長いようで短いから」
《れーちょん》さんに手を引かれ、ネオンサインの銀河を歩く。
間を埋めるのはゲームの話だった。新しいマップだとか、
歌舞伎町のゲートそばを通り過ぎたときには、初めて訪れた夜の新宿にもやっと慣れた。話しかけてくる
《れーちょん》さんは頼りになる。すごくカッコいい女性。
「ここは?」
「オトナの世界。《ゆーさく》ちゃんにとっては世界の裏側」
「裏の世界」
「見たい? 世界の、奥の奥の奥」
歌舞伎町よりは少し狭く、店も少ない通りだった。ネオンサインも比較的落ち着いていて、街行く人の数もそこまで多くはない。なにより「オトナの世界」という言葉の意味を想像できなくて、知りたいけど、少しだけ怖い。立ち止まる。
「心配しなくても怖くないよ」
知らず知らずのうちに《れーちょん》さんの手を強く握っていた。
怖がっているとバレるのが嫌で手を離そうとしたけど、逆に強く握られる。真剣な目が、見据えていた。
「《ゆーさく》は私が守ってあげるから」
それだけでスッと恐怖が消える。手のひらから伝わる温もりが心を落ち着けてくれるのが不思議だった。怯えず、逃げず、通りに立つことができる。隣の《れーちょん》さんの顔を見つめた。
「せーので第一歩、踏み出しちゃおうか。新マップ、世界の裏側に」
「余裕だし」
「だよね。いくよ、せーのっ!」
震える背を《れーちょん》さんの言葉がキャリーしてくれて、私はひとつ上のランク帯へ足を踏み入れた。
*
閉店間際のアパレルショップで、私は《れーちょん》さんの着せ替え人形になった。着てきた母さんの服は——下着以外——紙袋に収まった。
姿見に映る私は、肌触りのよいニットのゆるいセーターと、短いボックススカート。足が冷えると言ったら買ってくれた160デニールの厚めのタイツ。おまけに「着なくてもいいから」とオトナびた下着まで。ブラのサイズを伝えるのが恥ずかしくて、少しだけ盛った。似合うサイズまで育ってほしい。
値段を気にしない上に、知らぬ間に会計を済ませてしまった《れーちょん》さんが、いくら着せ替え人形に使ったのかは分からない。やっぱり、オトナのおカネの使い方はひと味違う。
「可愛くなったから、次はメイクかな」
「そ、そんなに使って大丈夫?」
「心配しないで。って、そうだね。あとで払ってもらうこと考えたら怖いかな」
ちょいちょいと《れーちょん》さんに手招きされて、ふたりしてアパレルショップの試着室に入る。カーテンが引かれた瞬間、ふたりだけの密室になる。
なぜだか胸騒ぎがした。怖いとかじゃない。何かが起こって、自分が変わってしまいそうな。これまで味わったことのない不思議な気持ち。
「マスク取って、鏡見てて」
言われて、マスクを取る。初めて童顔をさらけ出す。《れーちょん》から「やっぱり可愛い」なんて言われて、鏡越しにあった目を逸らした。トータルコーデされた自分を見つめる。
切り飛ばしただけの黒髪のおかっぱボブが。そして白色光に照らされて露わになる童顔は、どれだけ褒められたって嫌だった。早く《れーちょん》みたいなオトナになりたいのに、時計の針はなかなか右に回らない。電池の切れた時計みたいに、14時付近を右往左往するだけ。
《れーちょん》さんは自分のバッグから、化粧ポーチを取り出した。カラフルなえぐれたタイル——アイシャドウの赤を私の目尻と頬に走らせて、滑らかな指先で伸ばしていく。
気持ちよくて、気恥ずかしかった。鏡に映った自分の顔を直視できない。こんな顔、誰にも見られたくない。
「完成。ほんのり病みメイク。見て?」
「う……」
《れーちょん》さんに肩を抱かれて、逸らしていた視線をどうにか前に向けた。コドモっぽいだけだと思ってた童顔も、いっさい弄っていない無難なだけのおかっぱボブも、赤が刺さった途端にオトナびる。何者かになれた気がする。
「可愛いよ、《ゆーさく》」
嬉しかった。だけど顔から火が出るほど恥ずかしい。見られたくないのに、もっと見てほしい。触れてほしくないのに、褒めてほしい。
耳たぶみたいに垂れたニットの裾を握ったまま、その場を動けない。どうしてこんなに、ドキドキしているんだろう。見つめられると急に言葉が出なくなってしまう。
「《ゆーさく》だと、なんか男の子みたいだね」
そう言って《れーちょん》さんは笑っていた。たしかに、と思い直す。プレイヤーネームは適当に、佐久間由依だから《ゆいさく》。すぐ身バレしそうだから、ちょっと弄って変えただけ。
「本名から取ったから」
「やりがちだよね。私もだけど」
《れーちょん》さんの本名は、きっと《れ》から始まるのだろう。れい、れいか、れいな、れんげ。《れーちょん》に似合いそうな名前は。
「《れいな》さんとか?」
「《ゆーさく》は?」
ネットで会った人には、本名を教えちゃいけない。なぜなら信用ならないから。教師の方が信用ならないオトナのくせに、そんなことを道徳の授業で押し付けてくる。学校こそ《ゆーさく》で通したいくらいなのに。
「……由依」
「うん。似合ってるよ。由依」
耳元で名前を囁かれた瞬間、頭がぼうっとした。《れーちょん》さんに名前を呼ばれたこと、名前を知られたことが、よく分からない感情の洪水になって、全身を巡りめぐる。
「好き?」
《れーちょん》さんの言葉が理解できなかった。時間がかかってから、何を言われたのかようやく理解できる。
好き。
体験したことのないこの感情に、そんな名前がつくのだとしたら——
「由依は、生まれ変わった由依は好き? 嫌い?」
——それが早とちりだと知って、安心と焦りが同時にやってくる。《れーちょん》さんは人をからかう悪いオトナなのかもしれない。
「……そういうこと言うのは嫌い」
「ごめんね。由依がすごく可愛かったから」
背中を抱きしめられて、呼吸ができなくなった。心臓の音が聞こえてしまいそうになる。バレたくない。いつもの《ゆーさく》じゃない私を、単なる中2の佐久間由依を《れーちょん》さんには見せたくない。
「……《れーちょん》さんの本名も知りたい。私だけとかズルいよ」
「んー」
《れーちょん》さんはヘタな芝居で悩んだフリをしている。コドモだからと私をからかっている。悪いオトナだ。癖でつい膨らませてしまった頬から空気を抜いたところで、またも手を引かれた。
キャリーされる。今度はどこへ?
「じゃあ、ちょっと
通りでタクシーを拾って、《れーちょん》さんは運転手に場所だけを告げた。
「大丈夫。由依には私がついてるから」
後部座席で、黙って《れーちょん》さんの手を握りしめた。
不安はあった。からかわれてるだけかもしれないとも思った。だけど《れーちょん》さんは信頼できるオトナだから、きっと大丈夫。キャリーしてくれる。怖くない。
新宿から向かうは六本木。
私でも名前くらいは知っている、そこもまたオトナの世界だ。
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