お兄様と迂闊な妹②

ルーカス視点。

これで完結です。……完結?

こ、細かい事は気にしない!!


****


『赤い星の贈り人』という女神の加護を持つ僕の妹のシャルロッテは……色んな意味で、とても規格外な人物である。


幼い頃からお転婆で、令嬢なのにドレスのままで木には登るし、シュミーズとドロワーズ姿という淑女にあるまじき格好で水浴びしたり、家中を駆け回ってみたり……と、自由奔放だった。

普通ならば兄である僕からも妹のシャルロッテ――シャルに注意すべきなのかもしれないが……僕は元気で面白いシャルが可愛くて大好きだった。


そんなシャルが、クリスの婚約者候補に上がり、王太子妃教育が始まった途端に、深窓の令嬢ごとく、おしとやかで言われた通りの事しかしない――つまらない妹に成り果てた。型破りな妹が大好きだった僕は、一気にシャルから興味を失った。


僕にとってつまらない存在であったシャルがのは、このユナイツィア王国の国王である僕と妹の伯父上が引き起こした悪戯がきっかけだった。


エールと言うお酒を子供に勧める伯父上も伯父上だが……抵抗もなく口を付けた妹も大概だった。

久し振りの突拍子のないシャルの行動に、ただただ驚いていると――シャルはそのままひっくり返った。


……当たり前だ。

本来はまだ飲めないはずのアルコールを子供が摂取したのだから、身体が驚いて拒絶反応を起こしても仕方ない。


伯父上は不謹慎にも大爆笑だったが……昔の無鉄砲なシャルが戻ってきたみたいで、実は僕もちょっとだけ楽しかったのは内緒だ。


目覚めたシャルは、贈り人である『天羽和泉』という異世界の二十七歳の女性の記憶を持っていたが、和泉さんの記憶を持っていても僕にとってのシャルは妹である事に変わりない。


――変わらないんだ。

今のシャルを見ていると、僕よりも年上だなんて到底思えない。

寧ろ、三歳頃に戻った様な気さえする……。

和泉さんの記憶があるせいか……無鉄砲に拍車が掛かった気がしなくもない。


コッソリと魔術の訓練をするのは良いよ?

自分の魔力と向き合う事で見えてくる物があるし、訓練をすれば何よりもコントロールが上がるから。


だけど、巨大な炎の柱で『焼き芋パーティー』や、浮遊魔術と変化魔術を使って『お化け屋敷ごっこ』。その他にも、サンダーで『雷除けゲーム』……って、訓練なの?

僕の予想を遙かに超えてるんだけど?


『お話』という名の説教を毎回しているけど、シャルの心に全く響いていないと思うのは気のせいじゃないよね。


……まあ、この懲りない所と迂闊な所は間違いなく父様から遺伝だよ。

良かったね。僕等はちゃんと家族だったろう?


これから先の事を考えると、不安で仕方ないけど、同じ位……いや、それ以上にワクワクしている自分がいる。



「……ねえ。聞いてる?」

ボーッと考え事をしているシャルに向かって話し掛ける。


――僕は現在進行形でシャルに『お話』をしている真っ最中である。


「き、聞いてます!」

僕の呼び掛けで我に返ったシャルは、自分が置かれている今の状況をどうにか思い出した様だ。そんなシャルに向かって敢えて瞳を細めながら笑みを作る。


「……本当に?」

「はい!勿論です!」

僕の意図した事を的確に読み取ったシャルは正座のままで、僕に向かって深々と頭を下げてきた。


……シャルはこうして僕がちょっとをすると、すぐに土下座をしてくる。淑女が地面に這いつくばって許しを乞うって…………どうなの?


……本当に、規格外で突拍子もない。

僕は吹き出しそうになるのを必死で堪えた。


僕の『単純でお馬鹿な可愛いシャルロッテ』。


「じゃあ、話を続けようか」

「はいぃ……い!」

僕はニッコリ微笑んだ。


因みに……今日のは、『裏庭を落とし穴だらけにした件』だ。

大地の魔術の訓練にしたってやり過ぎだ。

落とし穴に落ちたという苦情が何件か発生しているのだ。


さて。時間はたっぷりあるから、たくさんお話しようね? 




                           ――Fin――



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