新天地~探険①

んーーー!良い朝だ!


朝日を浴びながら、私は大きく背伸びをした。


昨日の歓迎会はとても楽しくて……とても嬉しかった。

カル◯スサワーを沢山飲めたから!!

酔っ払ったままでお兄様と通信したけど、特にお咎めはなかった。

……ちょっと背筋がぞわっとしたけど、問題無しだよね?!

勿論、二日酔いにもなってはいないよ。

ビバ!若くて健康的な身体!!


おっと……朝からテンション高めですみません。


実は、これからカルピ◯サワーの湧き出る場所に案内して貰えるのです。

だから、こんなにもハイテンションなのです!!

という事で……ちょっとウザくても勘弁して下さい。


遊園地に連れて行ってもらえる子供の様にテンションMAXな私を案内してくれるのはレオだ。

黙っていればそれなりに大人びても見え、口を開けば幼児にも見える、私と同い年のレオ。


「今日はよろしくね?」

そうお願いすると……

「シャルロッテの望む場所にちゃんと連れて行ってあげるからね!楽しみにしてて」

レオはニッコリと微笑んだ。


いえーい!◯ルピスサワー飲み放題!!


だけど、仮にも留学中の身。

カルピスサワーをしっかりと味わった感想は報告書にまとめて提出します。

その甘く美味しい味わいから……どこでどんな風に湧き出ているのか。

そして、カルピスサワ◯の有効利用方法やその特性を生かしたアレンジ料理まで、丸っと極めてみせます!

私のお酒への愛と情熱は深いのだ!!


……なーんてね。

実際に、留学中の私に課された事はといえば……



つまりは、『ゆっくりと心行くままに本能のままに楽しんで来なさい』という事なのだ。

出ている課題も毎日の絵日記レベルである。

つくづく子女に甘い学校だ……。


だったら!こちらは楽しませてもらいます!

もう、隅から隅まで満喫して帰ります!!

次はいつ来れるか分からないのだから!!!


「シャルロッテは本当にお酒が好きなんだね」

「うん。だって、私はお酒のために頑張ってきたんだもん」

「お酒のために……?」

「そう」

大きく頷いた私は、デリケートな部分を除いた今までの経緯をレオに話した。


――私の話を聞き終えたレオは、ゆっくりと大きな溜め息を吐いた。


「どうしたの?」

「いやー……愛し子は色々と規格外だったなって」


『規格外』

――散々、言われてきた言葉だ。


「私は普通……」

「違うよ?!」

食い気味で速攻突っ込まれた。


何が違うというのか……。

チートさんか!チートさんのせいか!?

ま、まあ確かに色々あったなぁ……(遠い目)


私は眉間にシワを寄せながら首を傾げた。


「……いや、逆にどこが普通なのか聞きたい。愛し子を含めた周り全て!」

「……へっ?」

「こんなのお祖父様や母様でも無理だよ!」


……ルオイラー理事長やリラさんでも無理?

いやいやいやいや。

あの二人ならば、私なんかよりも容易く物事をこなせるはずだ。


「……レオは?」

「え?」

「そういうレオは、ルオイラー理事長の孫だし、リラさんの息子だよ? どうなの?」


……私は昨日のレオの呟きを忘れてはいない。敢えてこの質問をレオに向けたのだ。


「僕は……」

予想通りに言い淀むレオ。


「よし!話は目的地に着いてからにしようか!」

「……へ?」

動揺するレオを半ば引き摺る様に促しながら、私達はカルピスサワ〇の源泉へと向かった。


****


「うわぁーーー!!」

私は本日、一度目の悲鳴混じりの大声を上げた。


「落ち着きなさい」

はい!金糸雀さんのツッコミ入りましたー!


レオと私の二人だけでは何かと心配……という事で、金糸雀が急遽付き添う事になった。


今回、魔王のサイはリラさんの話し相手という事で留守番だ。

……いつも庇ってくれるサイがこの場にはいない。波乱万丈な展開にならなければ良いが……。なんて、伏線を張ってみたり。


ああ。金糸雀が居てくれて良かった。

心が凪いで行く様な気がする………。


……さて、私が何を言いたいのか?


私は今、メチャクチャ動揺しています。


それは――――

カルピスサワーの源泉がだったからだ。


え?訳が分からない?

安心して下さい。……私も同じです。


『この辺りに』って、リラさんが言うから、想像していたのはチョロチョロと出る湧水や……スケールが凄いバージョンでも滝レベルだ。


なのに……海。

海は広いなふんふーんふ、の海だ。


……これって『湧き出て』ないよね?!

流石は……竜族。スケールが桁違いにズレていた……。


目の前に広がる葛飾◯斎の『富嶽三十六◯』の海の状態である。

一面の真っ白な海は少しも生臭くなく……どこまでも甘い香りが漂っている。


「ええと……これが……源泉?」

「そうだよ」

「源泉っていうより……海じゃ?」

「そうだね?」

レオは私が何を言いたいのか分からないとでもいう様に首を傾げている。


うーん。規格外。

この世界は規格外ばっかりだな!!


思わず眉間を揉みほぐす様にすると……

「楽しくて良いじゃない」

金糸雀がカラカラと笑った。


そうなんだけどさ……。

辛い事や悲しい事も考えられない程に、楽しい方が幸せな気はする。


……だからまあ、良いか!

目の前のカルピスサ◯ーの海を楽しもうじゃないか!!


「これって飲んでも良いの?」

「良いけどちょっと味が濃いかもよ?」

「いつもはどうしてるの?」

「少しだけ水で薄めるんだ」

へー!なるほど!

薄める為の……割り材は色々と沢山ある!


「じゃあ、ここで飲みながら色々お話しようか!」

私はそう言って、いつもの異空間収納バッグの中にある大きめなシートを取り出し、砂浜に敷いた。

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