新天地~歓迎②
「うわぁーー!……って、痛っ!」
本日、何度目になるか分からない歓喜の声を上げた私の頬を金糸雀が
「叫んでばかりいないで、いい加減に落ち着きなさい。あなた一応、公爵令嬢でしょう?」
「……あっ」
一応も何も……私は立派な(?)公爵令嬢なんですよ。……実は。忘れがちだけどね!
興奮しすぎて何もかもが抜け落ちてしまっていた。
「まあ、まあ。貴族なのに気取らないのが主の良い所だろう?娘よ」
「お父様は甘いですわ!」
「アイシャは相変わらず優しい子だ。主が不利にならないように気にしてくれているのだものな」
「そ、そんな事……!」
私の肩で大きく羽を広げた金糸雀の頭をポンポンとサイが優しく叩いた。
ツンデレな金糸雀が可愛い……。
……じゃなかった。迂闊な私の事をしっかり見ていてくれる金糸雀達には頭が上がりません。毎回、フォローしてくれてありがとう。
そして、一日に何度も迷惑掛けてごめんなさい……。
「ふふっ。私達の事ならば気にしないで良いのよ。自由にして?」
「そうだよ!シャルロッテはそのままの方が面白いし!」
リラさんとレオもフォローしてくれたが…………『面白い』?
……それって公爵令嬢としてはアウトだよね?
お兄様にバレたりしたら、何を言われる事か……
ブルブルブル……
『通信デスヨ!通信デスヨ!』
お兄様の事を考えた途端、スカートのポケットに入れていたスマホ(ブラックボックス)がブルブルと震え出した。
きたーーーー!! 魔王だ! 魔王が降臨なすった……!!!
タイミングを見計らったかの様に通信には、全身鳥肌が立った。
ゾワゾワでガクブルですよ? まさか盗聴されてたり……?
いや、そんな馬鹿な……ね?
通信の呼び出し音声は、シャーリー(旧ロッテ2号)だった。
「ありがとう!シャーリー」
『イエイエ!ゴ主人様ノ為ナラバ!』
良い子だと撫でてあげたいが、今のシャーリーはとても小さいので、感謝の気持ちを込めるだけに留めた。壊れてしまったら大変だ。
帰ったらシャーリーの本体をギュッと抱き締めようと思う。
それよりも今は早く、この通信に応えなければならない!!
「は、はい!シャルロッテです!」
背筋をピンと伸ばし緊張しながら恐る恐る応えると、同時にスマホからフワッ柔らかい光が出た。
「お兄様!?」
――――何と! その光の中にお兄様の姿が突如として浮かび上がったのだ。
こんな仕様だとは聞いていないので普通に驚いた……。
しかも……
『やあ、無事に着いたみたいだね』
お兄様からは私のいる所がちゃんと見えているらしい。
今の状況を簡単に説明すると
「はい。今はルオイラー理事長の娘さんのリラさんに邸に連れて来て頂いたところです」
『そうか。無事に着いて何よりだよ』
ニコニコと笑っていたお兄様は、そのままスッと瞳を細めた。
『絶対に危ない事には首を突っ込まないように』
「イエッサー!!」
ゾクリと背筋を這う何かに私は思わずピンと背筋を正して敬礼をした。
……このテレビ電話状態の仕様は間違いなく……ロッテとお兄様が結託した成果だろう。
お兄様の所にロッテを残して来て大丈夫だったろうか……?
いや……お兄様は私みたいに考え無しじゃないから大丈夫か。
……って、うっ……自分にブーメランが返って来た。くっ……し、心臓が痛い……!
私から視線を逸らしたお兄様の瞳が、私の横にいたリラさん達に移動した。
『初めましてルーカス・アヴィと申します。こんな形での挨拶で申し訳ありません』
スマホから浮かび上がったフォログラムの中で、手の平サイズに切り替わったお兄様が胸に手を当てながら挨拶をした。
「いえ、丁寧な挨拶をありがとう。私はルオイラーの娘のリラよ。こっちは息子のレオ」
お兄様の挨拶に応えたリラさんは鷹揚に微笑んだ。
「妹のシャルロッテが色々とご迷惑をお掛けすると思いますが、どうぞよろしくお願い致します」
私はそんなお兄様とリラさん達のやり取りを黙って見ていた。
なかなかこの通信は良いかもしれない……と思いながら。
これならば、愛しのリカルド様と顔を見ながらのやり取りが出来る……!
問題はその場合にロッテか、このスマホをリカルド様に渡さなければならない事だ。ロッテはまだしも……ブラックボックスをリカルド様に渡すのは危険だ。
何かあったら困るし、絶対に後悔する。
安全に幸せな通信をリカルド様とするのには、違う物を早急に作らねば……!
私はそう決めた。
「さて、そろそろ邪魔になるだろうから一旦切るよ」
リラさんとの会話をいつの間にか終えていたお兄様がこちらを見ながら言った。
珍しく簡単に終わったなーと思いきや……
『くれぐれも飲み過ぎない様にね?』
流石はお兄様。私にしっかりと釘を刺すのを忘れなかった。
「……はい」
「じゃあ、色々あるだろうから、次は二時間後ね。分かった?くれぐれも……」
「分かりました!!ではまた後で!シャーリーまたね!」
これ以上続けると他にも出て来かねないのだ。
後で何か言われるかもしれないが…………。
折角リラさん達が歓迎会をしてくれると言うのに、どんよりと暗いまま参加をしたくはない!!
「すみません! お待たせしました!」
気持ちを切り替えてリラさん達を見ると、始めは驚いた様に瞳を丸くしたリラさんだが……すぐに柔和な笑顔に変わった。
「ふふふっ。では、あなた方の歓迎会を始めましょうか」
リラさんがパンと一度手を鳴らすと、室内にピンク色の花片が舞った――――。
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