新年……(特別編②)
またしても……本編の間に番外編を挟んですみませんm(__)m
少ししたら、邪魔にならない所に置き直します(汗
※時間軸としては……『ライス島』の後、『神を起こす方法』の前になります。
シャルロッテは十六歳になっています!
(カクヨム限定)
*********
「皆様。新年、明けましておめでとうございます!」
私は、客間の床の上に敷いた赤い敷物の上で、三指をついて頭を下げた。
本当ならば、
代わりに、【エトワール】のマダムに我が儘を言って、私が桜の
「シャルロッテ。新年おめでとう。これは変わった趣向で面白いね」
「床に座るってなかなかないけど、意外と落ち着くものだね」
「はい。マダムには無理を言ってしまいましたが……お陰で、懐かしい気持ちで新年を迎えられました。……足、崩しても良いですよ?」
正座が初めてと言うリカルド様とお兄様。
足が痺れているのか、二人はなんとも言えない微妙な表情を浮かべているのだ。
「……えい」
試しにお兄様の足をつつくと……瞳を細めたニッコリ笑顔が返って来た。
「シャル……?」
あ、マズイ……。
私は咄嗟に視線を逸らした。……逸らしたのだが、威圧感のある笑顔がこちらを見ているのが分かる。目力ぇ……。
どうせ怒られるのなら、もう一度つついてやろうと手を伸ばすと……
「痛っ……!」
間髪入れずにペシッと手を叩き落とされた。
……えへへ。……テレペロ?
「覚えておいてよね」
はい……私の自業自得です。
「お言葉に甘えて……僕は足を崩させてもらうよ」
私とお兄様のやり取りを笑顔で見ていたリカルド様が、そう言って足を崩した。
「正座だっけ?……これはなかなかキツいね」
「何の苦行かと思うよ」
「確かに……」
苦笑いを浮かべるリカルド様に合わせる様に、お兄様もあぐらをかいた。
「気持ちは分かりますよ。正座は我慢が大切なのです!表情には出さずに、心で泣くのです!!」
「……それをする意味ある?」
「それが日本人の心なのです!!」
「僕は詳しく知らないけど、多分それ違うよね?」
珍しく真面目な顔をしているお兄様に突っ込まれた。
「僕も、『日本人の心』は分からないけど……シャルロッテが綺麗なのは分かるよ。その服には正座が凜として見える正座が似合うから」
リカルド様にジッと見つめられたら……照れてしまうじゃないか。
私は赤く染まった頬を両手で押さえた。
実は、私はもう一つマダムに我が儘を言っていたのだ。
それは【着物】の作製である。
仕事で浴衣の販売もしていた
その為に着物の知識も一緒に取り入れたので、パターンに起こすのもマダムの協力があってこそだが実現した。
因みに……着物から新しいドレスのヒントを得たマダムの新作ドレスが社交界で大流行するのはまた別の話である。
今年は彼方もいるし……という事で夏頃から試作を重ね、やっと完成した着物を私は着ているのだ!!
私は紫で、彼方はピンク。同じ花柄で色違いだ。
彼方も今頃はクリス様の前で着ているはずだ。
着物なので髪の毛は一つに纏めてアップにしてある。
「もっと近くで見たいな。僕の所においで?」
ポンポンと自分の膝を叩くリカルド様。
それは……『お膝に乗って?』という事でしょうか!?
そ、そんな事が許されるの!?良いの!?
「僕の前で許すわけないよね」
腰を浮かせかけた私の手をお兄様に掴まれた。
……ですよねぇ。
私は、シュンとしながらその場に座り直した。
「……ルーカス」
「何?文句ある?」
「そんな堂々と……」
苦笑いを浮かべるリカルド様と瞳を細めた
お願いだからリカルド様とラブラブさせて……!!
と、いう切実な私の想いは
酷い……!!
「ねえ、それよりもこのご馳走冷めちゃわない?」
お兄様が目の前に並べられているご馳走をジッと見た。
おっと……そうでした。
着物は元々着るつもりだったけど、『ライス島』である食材を見つけたからこそ、私はここまで日本人の心にこだわったのだ!!
それは…………【もち米】だ!!
きな粉ならぬ……カナ粉や、小豆ならぬ……オグラもあった!!
そしたらもう、作るしかないよね!? お餅を!!
……という事で、カナ粉餅やオグラ餅、お雑煮にかまぼこ。栗きんとんや角煮、伊達巻き等々。
ロッテ達やスケさんカクさん、ノブさんにも手伝ってもらって、この世界の食材を使って【おせち】作っちゃいました!
いやあ……再現するのは大変だった。
だけど、私のチートさんのお陰で無事に作り終える事が出来た。
私の過去の記憶からロッテ経由で、アドバイスしてくれるだなんて素敵すぎる。
「お餅が堅くならない内に頂きましょう!」
私は、二人にお猪口を持ってもらい、そこにお酒を注いだ。
新年バージョンのラベルのお酒だ。
いつもよりも花片を多く使用し、濃厚な梅酒のようにトロリと仕上げてあるので、お猪口を使用し、舐めるように少しずつ飲むのが良い。
金箔を混ぜ込んでいるので、視覚的にも綺麗だったりする。
勿論、タンサン水で割るのも有りだ。
「では!」
お猪口を掲げ……
「「「乾杯!!」」」
……少しずつ飲むのが良いって自分で言ったのに、ついつい飲み干してしまった。
「シャル。ペース早いと潰れるよ?」
「……気を付けます」
私は苦笑いを浮かべながら取り皿に手を伸ばした。
「お兄様、リカルド様。何をお取りしましょうか?」
「お餅が良いな。オグラの方」
「分かりました。リカルド様は?」
「僕はカナ粉餅を貰おうかな」
……むっ。食べ物の名前なのに、他の女性の名前を呼ばれているみたいで面白くないぞ? カナ粉餅め……。
お餅相手にヤキモチを妬いている私……。って、ラッパーか!
こんな馬鹿な事を考えていないで私も食べよう……。
私が手を出したのは雑煮である。
魚と昆布の出汁がよく出ていて美味しい。これがまたお餅とも合うんだな。
少し焼いたお餅の香ばしさが良いアクセントになっている。
はあ……染み入る……。
「ねえ、オグラ餅にアイスクリームを足しても合うんじゃない!?」
オグラ餅を食べながら瞳を輝かせているお兄様が、いきなりそんな事を言い出した。
流石はアイスクリームの教祖……。使い所を間違えないな。
「合いますけど、カロリーがとんでもない事になりますよ……?」
お餅一つでご飯一杯分。それにオグラとアイスクリームのカロリー……恐ろしい。
「大丈夫!」
……そうでしたね。お兄様はどんなに食べても太らない。
私はそのまま反映されるというのに……!!
くっ……!これが攻略対象者と悪役令嬢とのの違いか!!(違う)
「シャルロッテならコロコロになっても可愛いと思うよ」
そんな、いつかどこかでお兄様から聞いた
「リカルド様は……太らない体質ですよね?」
「うん。狼系獣人は筋肉質だからね」
……ですよねぇ。
私は遠い目をしながら天井を見た。
「あ!こんな所にいたのね!!」
「探したぞ。主よ」
黄色の小鳥の金糸雀を頭の上に乗せた黒猫姿のサイが客間に入ってきた。
「あれ?金糸雀とサイ。……それにクラウン?」
「何だよ!いたら悪いのか!」
少年に変身したクラウンが扉の隙間から除いていた。
客間の扉を開けたのはクラウンだったらしい。
「悪いよ」
「悪いのかよ!?」
「……あ、本音がつい」
「本音なのかよ!?」
「金糸雀にサイ。どうしたの?お父様やリアのメンバー達と食事するんじゃなかったの?」
「そうなんだけど、シャルロッテ達との方が楽しいから」
「うむ。主と飲んでる方が刺激があるからな」
「そっか……」
……褒められている様な、けなされている様な……。
「無視か!?」
クラウンが吠えているが、勿論、『無視』の一択しかないだろうが。
「あなたも早く座りなさい」
涙目のクラウンが金糸雀達の横にちょこんと座った。
イジられるのが分かって来るんだもんなー。馬鹿だな……。
私は苦笑いしながらチラリとクラウンを見た。
クラウンともまたこんな風に新しい一年を過ごすのだろう。
「……新しいメンバーが加わったので……改めまして」
私はコホンと一回小さく咳払いをした。
「昨年は色んな事があった一年で……皆さんには色々と大変世話になりました。今年もまたよろしくお付き合い下さい。では、良い一年になります様に……乾杯!!」
「「「「「乾杯ー!!」」」」」
今年もまたみんなが幸せな一年になりますように……!!
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