クリスマス(特別編)
今日、12月25日は私とお兄様の誕生日である。
誕生日の朝。
いつもの様に目覚め、ベットの上で身体を起こした私は…………
「どうしてこうなった!?」
自分の置かれている状況に気付き、呆然とした。
……寝起きで頭が働かないので、何一つ状況が把握出来ない。
恐らく……いや、間違いなく……この状況を理解するには、昨日に遡る必要があるだろう。
私はまたベットに転がり、心を落ち着けるように瞳を閉じた。
****
誕生日の前日の24日。冬休み期間をアヴィ領で過ごす為に帰省したお兄様は、九月の学院入学以来二回目の帰省となるのだが……先月会った時よりもまた少し大人っぽくなった気がする。現に身長もまだ伸びているらしいよ。
お兄様がいない日々はとても寂しいが、新たにアヴィ家の住人となった魔王サイオンやその娘の金糸雀、息子のクラウンらと共に私はのびのびと……あっ……。
コホン。…………賑やかな生活を送っている。
今回、お兄様一人だけの帰省ではなく、何故かクリス様も一緒に連れての帰省となった事に私はとても驚いた。
翌日の25日はユナイツィア王国の建国記念日なのに王太子が王都に居なくても平気なのだろうか?と、首を捻ったのだが……。クリス様は訳ありだった。
なんでも学院でストーカー被害にあっていたそうで、天然キラキラ王子の美貌はやつれ、酷く疲れた様な顔になってしまっていた。
王都にいると色々と受けた被害を思い出してしまうらしく、療養を兼ねてアヴィ家に緊急避難をしたのだと。
……モテる王太子は大変だ。
因みに、
……そんなに被害が酷かったの?お兄様は側で何してたの!?
そう憤りかけた私だが…………『クリス様は囮にされたのだ』と、状況を悟った。
……主犯の妹の私は、クリス様を癒やす為の手助けをしようと心に誓った。
簡易結界の効果は、単純に『関係者以外立ち入り禁止』である。万能チートさんが顔認証や精神鑑定をしてくれ、やばい人は、勝手に排除か、もしくは浄化をしてくれる仕様になっている。一度張ってしまえば冬休み中は保つ、優れものの結界である。
流石はチートさん。良い仕事をしてくれる!ありがとう!!
さて。以前にも話した事があるが……この世界での12月25日は、某有名人の誕生日などではなく、ユナイツィア王国の建国記念の日である。
建国の王は、シャルロッテの先祖にも当たるユナイツィア王国のアルフレッド一世だ。アルフレッド一世は、荒れていたこの国を武と知によって一つに統合し、この国の名を【ユナイツィア王国】と定めた。
国内各地に自分の信頼のおける部下を配置し、それぞれの部下に領地を治めさせたのだ。
アーカー公爵家やアヴィ公爵家もこの時から存在する古い家の一つである。その配下に、ミューヘン辺境伯爵家やオデット侯爵家が連なって行くのだが……その辺りは説明すると長くなるので、割愛する。
ミラの生家である没ボランジェール伯爵家は、新興貴族なので歴史は浅い一族だった。お家取り潰しになっているのでもう大丈夫だが……排他的で人種差別の強いボランジェール家のせいで、新興貴族が今まで散々悪く言われてきた。
新興貴族にも素晴らしい家が沢山あるというのに、だ。本当に最悪な家だった。
っと……話がズレた。
では、『建国記念日は何をするのか?』
その答えは、『家族や愛しい相手とお祝いする』である。
つまり、一般的には私の馴染みのあるクリスマスと過ごし方がほとんど変わらないのだ。
サンタさんはいないし、良い子へのプレゼントもない。王族は神殿へ行って、神に祈りを捧げたりするが……違いはこれ位だ。
「へえ……。サンタが良い子にプレゼントねー……」
和泉の世界のクリスマスについて、お兄様から尋ねられた私は簡単に説明をした。
「面白い事を考えるね」
お兄様は瞳を細めながら微笑んだ。
「はい。大人は大変ですが、一年で一番楽しみにしている子供がたくさんいたはずですよ」
「結局のところ、悪い子は何も貰えないの?」
「いえ、それはそれです。『良い子にしていないとサンタさんが来ないよ』っていう……この時期の大人と子供の駆け引きと言いますか……」
「ははっ。それはまた楽しそうだ」
一人暮らしをする前の……子供の頃は、家族みんなで三角帽子をかぶり、クラッカーを鳴らしたり……姉弟でケーキの上に乗っているチョコのプレートの取り合いをして、じゃんけんで負けた人がサンタクロースやトナカイの形をした砂糖菓子になって泣いたり……。
死ぬ前は、コンビニのチキンにショートケーキで簡単にでも気分だけでも豪華に装い、スパークリングワインを飲みながら乙女ゲームとかプレイしてたな……。
そんな他愛もない話をしている私を、お兄様はニコニコと笑いながら見ていた。
****
……のは、覚えているが。
まさか、こんな事になるとは。
一通り状況の確認を終えた私はゆっくりと起き上がり、そっとベットから
下りた。
そうしてから、今まで自分が置かれていた状況を思い浮かべて笑った。
……これは、みんなからのクリスマスプレゼントなんだろうな。
ベットの上には、寝ていた私の場所を中心に取り囲む様にして沢山ぬいぐるみ達が並べられていた。
ただし、それはどこにでもある様な、ただのぬいぐるみではない。
お兄様、リカルド様、ミラにサイラス、ハワード。サイに金糸雀、クラウンにとても良く似た……
その中に何故かアイスクリームを形取った物までが含まれているが……これは間違いなくお兄様の仕業だろう。しかもサイドテーブルにはカゴいっぱいに入った栗?の様な物まで置かれているではないか。何故だ。まあ……すっごく嬉しいが。
直接、手渡してくれたら良いのに……。
私は苦笑いを浮かべた。
サンタクロースの話を聞いたお兄様が私を驚かせる為に、マリアンナを始めとした侍女達とコッソリと用意してくれたのだろう。
全然気付かなかったよ!?そして、見事に驚いたよ!?
私はリカルド様とお兄様にそっくりな可愛いぬいぐるみをゆっくりと撫でた。
いつの間に用意してくれていたのだろう?
精巧な作りの一点物だ。嬉し過ぎる。
一部、微妙なキャラの物もあるが……それすらも愛おしく感じるから不思議だ。
さて……。
こんなに嬉しい贈り物をしてくれたみんなにも、私からのクリスマスプレゼントを贈らねば。
私に出来るのは、みんなが喜んでくれる様な美味しい物を作る事かな?
ロッテにも手伝ってもらって沢山用意しないとね!
私は動きやすい簡素なワンピースに着替え、カゴいっぱいの栗?を持って厨房に向かった。
*☆*☆*☆*☆*☆*☆*
本編が中途半端のままですが……(汗
12月25日はシャルロッテの誕生日!という事で……(ノ^^)ノ
平日ですが……皆様も良いクリスマスをお過ごし下さいませm(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。