学院に戻って…(続・知らない②)

「マリアンナ、ただいまー!!」

セイレーヌの力で寮の部屋まで一気に戻って来た。

私と一緒にいるのは金糸雀とサイで、彼方やお兄様達は、それぞれ寮や用事のある所に送ってもらっていた。

皆の出発の用意が出来次第、寮門前に集合して、学院の転移用のゲートを使わせてもらう。アヴィ家までひとっ飛びで帰れる予定だ。楽チンだね!


今日は、とても長い長い一日で…流石に疲れた。

アヴィ家に帰るのは明日の朝でも良いのかもしれないが…私は早く家に帰りたかった。

念願の16歳の自分の誕生日を復讐だけで終わらせたくはない。

そう!お酒を浴びる程、飲むのだ!!

ヒャッフー!!


さっさと荷物をまとめて、実家に帰りたいのだが……。

マリアンナからの返事が返ってこない。


あれー??

てっきり部屋の中にいると思っていたのに、マリアンナの姿はなかった。


「…マリアンナ?」

マリアンナの部屋を覗いても…いない。

…廊下を見ても、いない。

帰省用の荷物が纏められている様子からすると、先程までここに居たのではないかと思う。

一体、マリアンナはどこへ行ってしまったのだろうか。

次いで言えばロッテ(オーブン)の姿も見当たらない。



…これは?!

キョロキョロと辺りを見渡していると、ふと目に入った荷物達の中に…ぎゅうぎゅう詰めに押し込まれたロッテを発見した。


「ロッテー!?」

ガタガタとロッテを動かすが…返事はない。


「シャルロッテ。どうしたのー?」

私の異変を感じ取ったのか、パタパタと飛んできた金糸雀が肩に止まり、サイも足元へ寄って来た。


「主よ。これは……。」

「ロッテが苦しそうね…。」


…うん。これは異常事態だよね…。

マリアンナは一体どうしたんだろう…。


「ねえ。二人は何か心当たりない?」


私が学院に行っている間、サイと金糸雀の方がマリアンナと過ごす時間は長いのだ。


「我は心当たりはないな。」

「私もよ。何も悩んでいる様子は無かったと思うけど…。」

残念な事に二人とも心当たりはないらしい。


私はこれから…どうしたら…。

あ!

ハッと気付いた私は、ポケットの中から親指位の大きさの箱を取り出した。

ミラお手製のブラックボックス。決して開けてはならないアレだ。

これに呼び掛ければロッテと交信が出来るはずである。


「ロッテ。聞こえる?」

ブラックボックスのロッテに呼び掛ける振りをして…オーブンの方のロッテに呼び掛けた。


「ロッテ。聞こえているのは分かっているよ。」

微笑みながら呼び掛けると、オーブンのロッテがビクリとしたのが分かった。

…ロッテ…。


「……ハイ。ゴ主人様。」


「ねえ、どうしてロッテ(オーブン)が、ぎゅうぎゅうに詰められてるのかとか、マリアンナがどこに行ったかとか分からないかな?」


「イ、イエ…。ロ、ロッテハ、何モ…知リマセン。」


問い詰めれば問い詰める程に、ロッテがしどろもどろになっていく。

これは黒だろう。


「ロッテ。何か隠してるよね。」

断定だ。やんわり聞いてもはぐらかされそうなので、強めに聞いてみる。


「ナ、ナ、何モ隠シテマセンヨ?」

だったら何で動揺するので…。


「ロッテ?嘘を付くなら、もう学院には…」

「知ッテマス!!」

食い気味に返事が返って来た。

早っ…!!そんなに学院に居たいのか…。


「それで、マリアンナはどこ?」

「エ、エエト…、裏庭デス…。」

ロッテの答えを聞いた私は裏庭に向かって駆け出した。



******


……これは一体どんな状況?


ロッテが言った通り、裏庭にはマリアンナがいた。

但し、寮の壁に追い詰められた状態で、だ。

では…何に追い詰められているか。


ル○バだ。


マリアンナの足元には十台は軽く越える数のル○バが集結していた。


「お嬢様!!逃げて下さい!」

ハッと私に気付いたマリアンナが叫び声を上げた。


え?逃げる?

プチパニック状態の私の身体は、直ぐに反応する事が出来なかった。

私の存在に気付いたル○バ達が、続々と近付いて来て…。

あっという間に周囲を固められてしまった。


「ゴ主人様ダ!」

「ゴ主人様!」

「ゴ主人様々!」


ル○バがしゃべった!?

…『ゴ主人様』って私の事だよね?

この話し方からして十中八九、ロッテが関係している事は間違いない。


「…ええと、説明してくれるかな?ロッテ」

私は繋がっている筈の、親指大のブラックボックスに話し掛けた。



ここで初めて知った驚愕の事実…。


全ての原因は、ル○バなロッテの反乱だった。

ル○バ達はロッテが回路を統治して管理や制御をしていたが…何故か最近、命令を聞かずに行動する個体が現れたらしい。

すると、統治が出来ない個体が続々と増え、あっという間にル○バ達は個別に行動する様になったそうだ。

つまりは、それぞれの個体がロッテの様に意思を持つ様になってしまったのだ。


最近、ル○バが付いてくるなーとか、ル○バに見られてる?!とか…思ってはいたけどさ。

まさかこのル○バ達をロッテが管理していたとまでは想像すらすらしていなかった。

…あの視線は全てロッテの仕業だったのだ。


「ゴメンナサイ。ゴ主人様…。」

シュンとしたロッテの声が聞こえる。


こんなに好かれているのは嬉しいが…ちょっとだけ愛が重い。

全く…。

「次からは私に報告する事!分かった?」

私は苦笑いを浮かべた。

暴走するロッテも可愛いと思えるのだから私も大概だ。

「ハイ!ゴ主人様!」

嬉しそうなロッテの声に顔が緩んだ。


「それでこれはどうするの?」

金糸雀が私の肩口からちょこんと顔を覗かせた。

「…どうしようね。」

ル○バ達は私に群がったままだ。


「お嬢様…すみません。」

「マリアンナのせいじゃないでしょう?」


何故、マリアンナが追い詰められていたか…。

『ゴ主人様ガ居ナイト寂シイ。』と、アヴィ家に連れて行ってもらう為にマリアンナを呼び出したらしい。


うん…。それでも全部は無理だよ!?


「主よ。あの便利なバッグに入れたら良いのではないか?」 

サイが首を傾げる。


便利なバッグ?

……あっ!異空間収納バッグか!


って…え?連れて帰るの?……こんなに?

ル○バ達を見下ろすと…小刻みに震えていた。

「ゴ主人様…。」

「ゴ主人様…寂シイヨ…。」


……負けた。完敗だ。

こんなに可愛い子達を置いて行けない。


「…冬休みの間だけだよ?」

「ワーイ」「ワーイ」「ワーイ」

ル○バ達はその場でクルクルと回り出した。


…結局。冬休みは皆でアヴィ家でお掃除をし、休みが終わってからは一台ずつの日替わり交代で、私の寮の部屋のお掃除をしてくれる事に決まったのだった。



因みに、ロッテ(オーブン)のぎゅうぎゅう事件だが…。

こっそりアヴィ家に連れて帰ってもらう為に、ロッテがマリアンナにお願いした為だと分かった。詳しくはまた後日談となるが…。

マリアンナがバッグにロッテを詰めている所をル○バに見つかり、裏庭まで拉致されたらしい…。



んー…。取り敢えず、一件落着!!

家に帰るよ!!

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