目覚めて

スタンピードが起こった原因は、いつの間にか裏山に出来ていた未発掘のダンジョンのせいだ。

そこから、何かしらが原因で魔物達がスタンピードを起こした。


スタンピードが起こる前に原因を叩き潰す。



後一年。

両親達を殺させない事。

これが、シャルロッテやルーカスの大事な分岐点なのだ。それを越えなければ幸せにはなれない。


今日から、少しずつ裏山を探索してみる事にした。

ゲームをしてたから、どこにあったのか、何となく場所は覚えてるのだ。


確か、ちょっと遠いけど行ってみよう。




ベッドから起き上がり、朝の支度をしようとすると、トントンッと部屋の扉がノックされた。


「シャルロッテ様、失礼致します。」


一人の侍女が部屋の中に入って来る。


「おはようございます。」


そう言ってニッコリ微笑むのは、私の専属の侍女のマリアンナだ。


「今日は早起きされたのですね。」


「うん。というか、怖い夢を見て…ね。」

私は苦笑いを浮かべた。


マリアンナはドレッサーの前まで私を連れて行き、椅子を引いて座らせる。


「そうでしたか。どんな夢だったのですか?お話しされると少しは安心するかもしれませんよ?」


鏡越しに映っている、マリアンナは心配そうに私を見つめている。


マリアンナは男爵家から預かっている娘さんだ。

所謂、行儀見習いといったものだ。アヴィ家は公爵家なので他にも数名いる。


マリアンナの年は確か18歳。結婚適齢期だが、本人は侍女の仕事にやり甲斐を感じている為、今の所は結婚する気は無いらしい。


ストロベリーブラウンの髪を一つに纏め、お仕着せの帽子に隠している。瞳はブラウンで、睫毛の長い美人なお姉さんだ。


マリアンナには私が7歳の頃からお世話になっている。


「ありがとう。でも、口に出したら現実になりそうで怖いから言わないでおくわ。」


フルフルと首を横に振る。


「…そうですか。私で良ければ何時でもお話して下さいね?」


「うん。」


私が大きく頷くと、マリアンナはニコリと笑って、柔らかなブラシで私の髪を優しくとかし始めた。


「今日はどんな髪型にしましようか?」


んー、今日は裏山を探検する予定だから…


「動きやすい様に一つに纏めてくれる?服装も出来るだけシンプルで動きやすいのをお願い。」


「畏まりました。」


いつ見ても…アンナのブラシ捌きは凄い。

私の扱い難い縦ロールが、あっという間に綺麗に纏められていく。


真っ直ぐのストレートにしたいなぁ。


今度、お母様とマリアンナに相談してみようかな。

この二人が私の縦ロールの管理者なのだ。


悪役令嬢的の特徴みたいな縦ロールを何とかすれば、それだけでも未来を変えられそうな気がするのだ。


そんな事を考えている間に支度が終了した。


今日は若草色のワンピース。スカートのボリュームが少ないから、山歩きをしても大丈夫そうだ。

フリルのレースの付いたコットンの靴下を履き、ダークグリーンの靴を合わせる。


山ガールファッションの完成~!


「ありがとう!マリアンナ」


「さあ、シャルロッテ様。今日はお天気なので、テラスで朝食にするそうです。」


マリアンナと一緒にテラスを目指した。






「おはよう。シャルロッテ」


「おはよう。昨日は良く眠れたかしら?」


明るいテラスにはお父様、お母様、お兄様が揃っていた。


「おはようございます。お父様、お母様。はい。良く眠れたと思います。」


嘘だけど。

本当は凄く後味の悪い夢を見てました。


「おはよう。シャル。今日は何処かに出掛けるの?」


私を目線で隣に座らせたお兄様が、ジーっと私の瞳を覗き込む。


「おはようございます。お兄様。」


見慣れている筈のお兄様だけど、ルーカスだと思うとちょっとドキドキする。


「はい。ちょっと裏山の探検に行ってきます。」


瞳を覗き込む様な仕草をする時のお兄様に嘘を吐いてはいけないのだ。


後が怖いので、私は素直に答えた。


「へえー?珍しいね。」


「邸の中に籠っていてばかりでは運動不足になるから。」


これも嘘ではない。

ついでに…という意味で。


「ふーん。そっか。」


お兄様はアッサリ頷いて、運ばれて来た朝食を綺麗に食べ進めていく。


良かった…。

納得してくれたらしい。


と、思いきや…


「僕も一緒に行くから。」


ニッコリ微笑んで、私に爆弾を投げ付けて来た。

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