表裏比興のフリーター

記)エッフさんは、世渡り上手説もあれば、世渡り下手説もあります。私は、世渡りが下手な人だと認識しているんですけれど。


エ)一応、「好かれておいた方がいい人」に好かれて、「そうではない人」との距離感はどうでもいいとする、みたいなところはありましたね。小学生の頃から。例えば、怒りっぽい先生の宿題から優先的にやって、怒らない先生の宿題はあえてやらないとか。


記)なるほど。でもそれは、単純に小賢しいだけというか、頭のいい人間のやることっていう感じですね。したたかだけど、世渡り上手って感じではないです。


エ)まあそのなんというか、媚びるのって疲れるじゃないですか。学生の頃は媚びることも少しだけあったですけど、基本言いたいことを言ってやりたいことをやって、それが大体正論みたいな感じの人でしたね。


記)うわぁ、嫌われるタイプの人だ。今じゃなくても嫌われそう。


エ)諸葛亮とかほざいてますけど、実際は韓信とか呉起とかと同系統、本朝でいうと黒田官兵衛みたいな感じでしょうね。や、彼らほど戦争ができたり築城に長けたりしているというわけではないですが、才能と処世術のアンバランスさという意味で共通する部分があるかなと。


記)それはあるでしょうね。エッフさんが戦乱時代に天下統一事業に携わったとして、天下平定後に生き延びている姿がなかなか想像できないです。


エ)さっと引退できないかもしれないですね。


記)しかし、「ストレート」な生き方っていう意味では唐代の魏徴なんかは、割とずけずけものを言う人間だったのに生き延びていますよね。


エ)そうですね。まあなんにせよ言えることなんですけど、「邂逅」っていうものが歴史を作るんだと私は勝手に思ってるんですけど。


記)邂逅というと、めぐりあい、とか思いがけない出会い、と出てきますが。


エ)そう。歴史にも、現代にもIFはないんですけど、世渡り上手として名前を残した人、そうじゃない人が、どうしてそうなったのかっていうのは、「たまたまそうなった」で片づけることもできないことはないと思ってるんですよ。


記)ほう。


エ)「たまたまいい主君に巡り合えた」「たまたまクソみたいな主君しかその当時いなかった」っていうので、生き残れた活躍できた、或いは殺された活躍できなかった、という繰り返しが歴史なんだと思います。個人的な意見ですけど。例になるかわかりませんけど、幕末に前原巧山っていう職人がいて。嘉蔵っていう名前の方が有名かもしれないんですが、いわゆる在野の人で職人なんですけど、すごく器用で細かいことができる人なんです。それが、当時の「西欧列強とどう渡り合うか」っていう時代背景のもと、「蒸気船を作る」っていうとんでもなく大きなプロジェクトにあの大村益次郎とかと携わることになるってこともありまして。でもその嘉蔵が、幕末という時代に出会わずに「平成」という時代に生まれてたら、天才的な職人!ってなってるだけで終わってたかもしれない。わからないですけどね。でも全く違った展開にはなってたと思います。


記)要はエッフさんも時代が違えば・・・みたいな。


エ)そりゃそうですね。自分だって、李世民や劉秀のような人物のもとでは活躍できたかもしれないし、逆に嫌われて殺されてたかもしれない。そんな可能性もあれば、案外クソみたいな国家のお偉いさんと相性がよくて好かれて重用されて、「世渡り上手の名将」みたいな名前を残してたかもしれない。可能性は色々ありますよ。


記)歴史って案外そういう「たまたま」で成り立っているっていうのがエッフさんのかんがえなんですね。


エ)そうです。変わらないことは、どの時代に行っても私は言いたいことをいい、やりたいことをやるだろうなってことです。後悔しないように。是非を決めるのは結局後世ですからね。


記)「自分」が強いので、やっぱりエッフさんは煮ても焼いても食えないような感じですね。嫌われると思いますけど頑張ってください。


エ)アハハ!


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