・少女
彼女に何度救われただろう。
彼女に初めて会ったのは小学校低学年の時。給食の時間に配られていた私のプリンをクラスの男子が黙って持って行った。とても楽しみにしていたし、できることなら取り返したかったが幼心にそんな勇気は無く断念した。するとクラス委員長の一人である中川成美がその男子を睨みながら持っていたプリンを奪って私の机に置いたのだ。随分と前からクラスの嫌われ者になっていた私は嫌がらせには慣れてしまっていた。そんなことしてくれなくても別に良いのにと思っていたが、その後彼女が私の耳元で囁いた言葉は私の世界を激変させた。
「放課後、一緒に帰りましょ。」
当時の私ならただのお誘いにしか聞こえないだろうが、今思えばこれが私を底なしの沼から救い出してくれた手であり、そこからの私、今の私が形成される“始まり”だったような気がする。
それから成美と話すことも増え、日常的に二人でいることが当然になった。成美がクラスのリーダー的存在であったからか、男子たちの私への嫌がらせは無くなった。
一緒に上がった中学校でも二人でクラスをまとめる事が多くなった。私たちの学校行事への姿勢は教師はもちろん生徒からの評価は高かった。成美となら何をするのも楽しかったからだ。クラス旗の色ぬり、合唱コンクールでのピアノ、委員長の集まりでの学校清掃、一緒に受けた高校受験だってこれっぽっちも苦しくなかった。
私は高校に上がってもこのまま成美と一緒だと思っていた。
続く、、、、
各駅停車の貨物列車 福田けんま @kenma_fukuda1020
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