第19話

開始から15分経過。


「他愛無いわね。六人まとめて相手してこの程度」


 僕の視界に、戦闘型の妖精がいた。

 ここでいう『妖精』というのはもちろん、納戸牡丹である。

 

納戸さんの本体(?)はいつものように、銀色の髪のベールに包まれている。だが、両側に流した銀髪の一部がまるでそれ単独で意志を持っているかのごとく動いている。それぞれの毛先に、針に短刀、医療用のメスがつながっている。


「そろそろ、本人が戦ってもいいんじゃないかな、雑魚場妃美さん」


 納戸さんの周りには、既にぼろ雑巾と化した雑魚場軍団が転がっている。残るは、妃美さんとその側近一人のみ。側近の頭部をよく見ると『一』と書かれている。彼がいつも妃美さんの隣にいる雑魚場一君だろう。

ついでに転がっている連中の頭部を確認すると、それぞれ『三』『四』『九』『五』『七』『十一』と書かれている。なるほど、これが見分けがつくというわけか。


「何を言うか。貴様ごとき、雑魚場様のお手を煩わすには及ばない」


 一君はそう言って納戸さんに相対する。すると、妃美さんが何か言いたげに、一君の肩を叩く。ごにょごにょと何かを言っている。一君は頷くと、いつものように『傾聴!』と叫んだ。


「雑魚場妃美様はこうおっしゃっている! 『私に戦う意志はない。袋が欲しいならくれてやる』と」


 意外に平和主義者だった。妃美さんは、一君に自身の袋を手渡すと、それを納戸さんに渡すように指示した。


「なんだ、つまんないの。噂のお嬢様の実力がどの程度か見たかったのにな」


 残念そうに言うと、納戸さんは自身の銀髪をしゅるしゅると元に戻した。毛先にくくりつられていた武器も最初から存在しなかったのごとく綺麗に収納された。


「さぁ、受け取るがいい。雑魚場妃美様の尊い御袋だぞ」


 薄笑いを浮かべながら、一君は納戸さんに袋を渡そうとする。

 何か、嫌な予感がするっ


 僕は、その動物的感に従い、一君の手を狙撃した。


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